『アルプススタンドのはしの方』

監督:城定秀夫

原作:籔博晶(兵庫県立東播磨高校演劇部)

脚本:奥村徹也

企画:直井卓俊

プロデューサー:久保和明

撮影:村橋佳伸

録音:飴田秀彦

ヘアメイク:田中梨沙

サウンドデザイン:山本タカアキ

編集:城定秀夫

主題歌:the peggies「青すぎる空」

演奏協力:シエロウインドシンフォニー

応援曲編曲:田尻政義

助監督:小南敏也

ラインプロデューサー:浅木大

スチール:柴崎まどか

出演:小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、平井珠生、山川琉華、目次立樹

2020年製作/75分/日本

配給:SPOTTED PRODUCTIONS

 

何年も前から気にはなってたんだけどエロというものに手を出せない自分がいて(←)遅くなってしまいましたが、念願の城定監督作品!!イオンシネマ新百合ヶ丘にて観てまいりました。いやぁ、とっても素敵な作品でございました。好きです。“はしっこにいた自分”に何かしら思い当たることがある人であれば、きっととっても楽しめる作品だと思います。正に今“自分ははしっこにいる”と思っているそこのあなたの背中もきっと押してくれる作品ですよ!!←誰

またいつものことながらダラダラ書いちゃってるんですみません。。

※ネタバレも含みますのでお気をつけください!!

 

 

◆あらすじと予告編

夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のため、演劇部員の安田と田宮は野球のルールも知らずにスタンドにやって来た。そこに遅れて、元野球部員の藤野がやって来る。訳あって互いに妙に気を遣う安田と田宮。応援スタンドには帰宅部の宮下の姿もあった。成績優秀な宮下は吹奏楽部部長の久住に成績で学年1位の座を明け渡してしまったばかりだった。それぞれが思いを抱えながら、試合は1点を争う展開へと突入していく。(映画.comより引用)

 

 

 

◆自分を正当化することは正しくて、間違ってる。

夏の甲子園。スタンドのはしの方に集まったのは演劇部のあすは(小野莉奈)・ひかる(西本マリン)、元野球部の藤野(平井亜門)、そして人付き合いが苦手な優等生の宮下(中村守里)。あすはとひかるが全く野球のルールを分かっていないのが見ていておかしかったな〜。何が起こっているのか分からなくて最終的に「迷宮入りだね」で終わらせるのとかもなんか高校生らしいというか、良いよね(笑)。そこに元野球部員の藤野がやってきて、2人のちょっと後ろで会話を聞きながら苦笑いしている感じも良かった。自分から「いやいやいや」って入っていくわけでもなく苦笑いしてるの、分かる(←)。そして座らずにポツンと1人ずっと立ちながら試合を眺める宮下さん。この4人がフレーム内に収まって、タイトルが乗ってくるカットがめちゃくちゃ好きでした!画面の中にちゃんといるけどそれぞれの距離感がなんとも絶妙で。「あ、これはきっと好きな映画だ」と思わせてくれるタイトルバックでしたね。

 

 

演劇にも甲子園があって、去年関東大会に出場できたはずだったけど当日部員がインフルエンザになってしまい出場することができなかったあすは。なんでもないように話すけど、悔しい気持ちが滲んでたな。そのインフルにかかってしまった張本人はひかるで、それを引きずってお互い気を遣い合ってる2人。

全然知らなかったんですけど、全国高等学校演劇大会というものは、7月から10月に地区大会が開かれ、次年度の8月から11月に全国大会が開かれるという流れらしくて、地区大会に出場した3年生は必然的に全国大会には出場できないことになるんだそうです。不思議な感じしますよねなんか。

そんな事情もあり、ラストチャンスだったはずの地区大会出場を果たせなかった2人にはやりきれない気持ちがグルグルしていて、あすははその気持ちを「しょうがない」という言葉でどうにかやり過ごそうと必死だった。(実際おそらく顧問の先生に大会当日の朝言われたのが「しょうがない」だったのだと思う)「しょうがないって思って、受け入れなきゃいけないことって、あるよね」「うん。あると思う」

 

 

元野球部の藤野は、ピッチャーだったんだけど、チームのエースである園田にはどうしたって全く敵わない。練習しても試合にも出れない、褒められもしないんだったら、もっと別のことに時間を有意義に使った方が良いと考えて野球部を辞めたとあすはに話す。その話の中で、矢野ってやつはとにかく下手くそで試合になんか出れないんだけど、必死に練習してて、今も野球部にいる…ということも。「俺の方が正しいよな…?」「うん。正しいと思う」

 

しょうがないとか、自分が正しいとか、めちゃくちゃ分かるじゃないですかそういう思考って。本気で思いながらも、本気で思えてないんですよねそういう気持ちって。そうして自分を正当化することを間違いだとも思わない。全く思わない。必死なんだもん。そう思うくらい自由にさせてよって思うもん。って、こういうこと書くと本当に自分が弱くていろんなことから逃げてきた人間なんだなって改めて気づかされるな(苦笑)。それでも間違いだとは思わないよ。それも言い聞かせてるだけなのかな…

 

 

でも、ひかるはあすはの言う「しょうがない」って言葉がずっと引っ掛かっていて。しょうがないことなんて本当はないって、あすはも心の中ではきっと最初から分かっていただろうことをちゃんと言葉にしてくれる存在がひかるだから、ひかるの存在にみんなが救われていった感じがした。

 

 

叫んだってしょうがないと思っていた4人が、終盤とにかく叫ぶ姿がとっても素敵でした。「がんばれー!!」「なんのために野球やってんだよ!!」自分に言っているようにも聞こえたりして。個人的に、正しくて間違ってるっていう感覚が割と好きというか、なんというか、上手く言えないんですけど。どんな選択も正しいし間違いだと思う人間なので(面倒だな)、そういう部分を感じるお話だったのでより好きだなと思っちゃいました。否定じゃなく、気付きなんだよね。それが良いんだな。みんながみんなに優しくなることで、みんなが主役になっていくような。そんな感覚で。めちゃくちゃあったかかった。

 

 

 

◆努力は見えないけど、見える。

またなんか似たような見出し作ってんなって自分でも思ってしまいましたが(汗)、努力っていうものについても考えさせられまして。吹奏楽部部長の久住さんは、学年トップの成績になって、野球部エースの園田とも付き合って、順風満帆な感じにしか一見見えない。西本さんは、勉強しか取り柄がなくて勉強だけを必死に頑張ってきた。でも、そのトップの座すら奪われてしまって、憧れの園田くんも久住さんの彼氏で、「久住さんは私が欲しいものを全部持っている」なんて言っちゃうんですね。そんな久住さんも、努力の人でしかなくて。そしてその努力が一番報われるかわからない誰かへの想いの部分でみんなが思ってるほどちょっと上手くいってなかったりして。自分的に、「努力した」って言える人ってすごいなぁと思っていて。嫌味じゃなく。どこまで頑張ったら努力したことになるんだろうかって思っちゃうんですよね。もっとできたんじゃないか。できただろう。って。そう思うってことはやっぱり努力が足りてないんだと思う。だからこそ、努力して何かを掴み取ってきた人はカッコいいなと思う。久住さんは必死に努力していろんなことを掴んで、そしてそれを手放さないために更に必死になっていて。誰も単純に楽をしている人なんていないんだよねと改めて思った。

 

 

藤野が下手くそだ下手くそだという矢野も努力の人。どんなに下手くそだと言われようとも、試合に出してもらえなくても、必死に誰よりも練習してきた人。その矢野が代打で出てきたとき「うぉ〜!!」ってそりゃなるし、藤野が一番喜んでたんじゃないかとも思った。自分を正当化しつつも、自分にないものを持っている矢野に憧れているような感じもしてた。その矢野が、自分の立つことのできなかったフィールドに足を踏み入れた瞬間を目の当たりにして、嬉しかったと思う。同時に「俺の方が正しいよな…?」っていうその前にあった問いが胸をギュッと締め付けてくるけど、どっちが正しいとかじゃなく、矢野は自分の選択を信じて、結果を出すことができた。藤野が続けていたらどうなっていたかなんて、辞めてしまった後ではもうわからない。そんな“もしも”で世界は溢れているし、でも選択をしてきたのはみんな同じなのだよな、と。この、画面には一切映ることのない矢野という存在が、希望の光でもあり、一生叶わない相手だなという気もする。憧れってそんな感じ。何書いてんのかわかんなくなってきた←

 

 

 

◆人生は送りバントだ!

厚木先生(目次立樹)が序盤から迷言?を発してくんだけど、「人生は送りバントだ!」という最初聞いたら「え?」って思うような迷言が、終盤になると見事な名言に変わっていくのがとっても面白かった。送りバントという行為そのものをまずあすはは誤解していて、そんな悲観的に捉えないでよ〜〜って基本悲観的な自分も思ってしまうくらいだったんだけど(←)、終盤、送りバントというものの素晴らしさに気づくのが良いんですよね。これまた矢野のおかげでね。矢野が代打で初めて試合に出て、そこで送りバントするっていうのがなんとも最高なドラマ!!送りバントが全てじゃないけど、ヒットやホームランが全てでもない。いつの間にかはしっこにいた4人それぞれが主役になっていて。はしっこも大事な場所なんだよなと思える。本当に語彙力がなさすぎて嫌になる…この素晴らしさは是非映画館で…(逃)

 

 

キャスティング、2019年の舞台版からあすは・ひかる・宮下さんは引き続きだったとは見終わるまで知らなくて!!舞台版も観てる人はその点も熱いだろうなあ。いや本当に、映画でこれだけ感動して、舞台であの4人の声援を生で聴いたとき自分はどうなっていただろうと考えただけで悔しい。めちゃくちゃ生で感じたいと思ったあの熱量。今作に関しては脚本は奥村さんだということをまず一番最初に知った気がする。奥村徹也さん劇団献身主宰で、ゴジゲンでは役者としても活躍されています。舞台版の演出も手掛けていて、いや〜奥村さん演出の「アルプススタンドのはしの方」めっちゃ観たかったっす…(涙)。あぁ!舞台もっと観に行きたいよ!もう!(泣)

 

 

小野さん、西本さん、中村さんはお初だったのですが(色々観れていなくてすみません)、平井亜門くんは『左様なら』(石橋夕帆監督)で観ていて。その作品内でイケメン役だったのだけど、当時は言われないと「そうなの?」なんて思ってしまったりしていましてすみません…(汗)。今作では魅力をバッチリ感じ取ることができました!亜門くんも生でお芝居観てみたいなぁと思う人だなぁ。

 

 

主題歌でありますthe peggeisの「青すぎる空」もめちゃくちゃ良いので是非聴いてもらいたいです!!POPな曲に元気な女性ボーカルで青春!って感じはもちろんあるし、歌詞も映画の内容とリンクしたりするので、エンドロールでまたあたしはうるうるしてしまいました。この歌詞を読めばどんな映画なのか分かっちゃうよ!←

 

 

と、ブログサボりにサボっていてこれは感想書きたい!と思って勢いでダラダラとまた書いてしまいましたが、まとまらないし、自分の語彙力がひどすぎて言葉にすればするほど作品の魅力を削っているようにしか感じられなくて途中で辞めようか何度も迷ったけどとりあえず書きました…すみません…。。

 

今現在も中途半端な感じの自分には、後味スッキリ!ではなかったけど、その引っ掛かりも自分なわけだし、と、苦味もあるけど爽やかな気持ちにはなれました。もうまじで何言ってんのかわかんないね(反省)。

 

鑑賞迷われている方がいましたら是非是非観てもらいたい一本です!きっと何かに気づかせてくれる作品だと思います。オススメです。観に行ってよかった!!

 

 

 

 

平井亜門くん出演作品。こちらも中学生・高校生の頃の記憶を思い出してしまうようなちょっと苦しい映画でしたが、役者さんたちみんな素敵でした。

 

 

 

こちらは中村守里さん主演作!上村奈帆監督のこと気になっていて、こちらも観たいのにまだ見逃してます…観なきゃなぁ…