身内が言うのもなんなのだが・・・・・

アレ(ヨン)は結構いい男でな・・・お前さんも勿論引けは取らぬ辺り、やはり血筋というか・・・・

容姿は勿論のこと、迂達赤隊長という地位、崔家という家柄・・・どれをとっても他の男に引けは取らなかった。

道を歩けば女たちの視線を引き、年頃になれば名家から山の様に縁談の申し込みが舞い降りた。

だが、アレは眉一つ動かすことなく他人ごとで、全くという程の無関心。

まあこちらとしても、婚姻を無理強いするつもりもなかったし、利害関係を気にすることもない。いい年をした甥を追いかけまわし席に座らせたところで結果は見えるという事で、縁談は片っ端から断りを入れていた。

それでも何を考えているのか分からぬあいつに一度だけ聞いたことがあった。

 

「ヨンや、自分で探せぬなら一つくらい縁談話に乗らないか?」

 

「何故?そんなことを聞く」

 

「いや・・・お前もいい歳だし。一度も浮いた話を噂にも聞かぬものだから、その辺りどうなのかと思ってな。確かにお前は愛想の一つ付けない奴だという事はわかっておるが・・・女子が嫌いなわけではないのだろう?無理に心通わぬ相手と縁を結べとは言わないが、誰か心に留め置く相手がもしいるのなら・・・・お前が声を掛けられぬのなら私が人肌脱ごうか?」

 

そういう私に目を大きく見開いた後、あいつは腹を抱えて大笑いしよった。

 

「あはははは。叔母上、そんな心配をされておったのですか?ご心配なく。女子が嫌いなわけではないですよ。それに、叔母上のお手を煩わせなくても。俺には既に、心に決めた番がいるのです」

 

降って湧いたような言葉に私は心が躍ったが、次の瞬間地に落とされた。

 

「何と!何故今まで黙ってた。どこのお嬢様だ?いつの間にお前は・・・・隠れて会っていたのか?私が反対するわけはなかろうに・・・恥ずかしかったのか?」

 

私の問いに、ヨンは少しだけ影を落とした笑みをして天を仰いだ。

 

「別に・・・隠していた訳ではありませぬ。ただ・・・会えないのですよ。今は・・・」

 

我らにとって、「番」とは生涯ただ一人の伴侶を示す。そんな相手が既にヨンの心の中に居たことに驚きを隠せなかったが、そこで聞かされたヨンの恋物語は、なんとも淡くも純潔な物語だった。

 

あの頃のヨンはいたずら盛り。狼の恰好をしては野山を駆けまわる日々で・・・・

そんなある日、神隠しに合ったように忽然と私らの前から姿を消したことがあった。

私らが探し回っている間、あいつは運命の出会いをしていたんだ。

 

相手は、遠い先の時を生きる女子で・・・・

 

「天門を潜ったのですか?」

 

「ああ、今考えればそうだったのだろう。あの頃、時々ヨンの様に忽然と姿を消してしまう事件が起きていた。神出鬼没の通り道に迷い込んだ者たちは大概戻って来る者はなく、村人たちは「神隠し」と言って畏れたいたものだ。だが、あいつは幸運にも戻ってこれたのだ」

 

偶然にも天門を潜ってしまったヨンは、吐き出された先で怪我を負ってしまった。その時に出会ったのが、その女の子だ。

親身になり家族ぐるみで面倒を見てくれたらしい。元気を取り戻す頃にはすっかりその子と意気投合して・・・・あいつの初恋だったのだろうな。しかし、その時のヨンの姿は狼だった。相手は多分、可愛がってはくれたのだろうが、同じような恋心はもっていたかは・・・まあ、どうかな。こればかりは本人でなければ分からん話じゃ。

 

幼い頃にその女子に出会い、雄としての本能が目覚めたヨンは、もっと強くなりたいと思ったそうだ。その子を守れるほどに。今よりも強く逞しく、そしてしなやかに・・・・

傷が癒え、ヨンを森に帰そうという話が持ち上がった時、ヨンは決心したそうだ。その子の側は、心地が良すぎて甘えてしまうと。別れる痛みを心に秘め、ヨンは再び天門を潜った・・・・・

 

「だがな、あいつは幼いながらも用意周到というか、抜け目がないというか・・・・・「約束の印」をその子に残したというんじゃよ。」

 

「その印とはいかなるもので?物を渡したところで、意味は伝わらないですよね?」

 

「くくく・・・そうだ。物ではない一族だけに通用する「印」。あいつはその子の耳を噛んだんだ」

 

「は?耳を噛むって・・・あっ、それってまさか・・・求愛行動!!」

 

「そうなんだよ。あいつはその子の耳を噛み、求愛を示した。唯一の番と決めた相手にする行為をな」

 

だから、既に許嫁がいる身で他の縁談は受けることはない。と豪語しおった。本人は、その時がくれば元の場所に戻れると安易に思っていたらしい。まあ、違和感なく往復しなのだから無理もないが・・・・しかし、結果はわかる通り。天門は、今回の出来事まで我らの前に出現することなく、ヨンはただただ、その日を待ち望みながら生きてきたんだ。

 

ここまで話したらわかったであろう?

事の始まりは「王命」であり、任務は「医仙を探し連れて来る事」であったが、ヨンの本命は「あの子を探すこと」だったという事だ。

医仙を連れて来ることなく、お前さんが時を渡って来た・・・という事は、あいつにその猶予が与えられたという事なのだろう。

そして、お前は立派にこちらで任務を果たし、再び元の時代に戻る為の兆しが出てきた・・・・

という事は、ヨンも多分、あちらでの成果を何かしら果たしたという事ではないのかな。と私は思っている。

 

だが、これを聞いてお前はどう思うかの?勝手な先祖の思惑に付き合わされた事になるのだろうか。その為に、幼き頃から多大な苦労と悲しみをご両親ともどもに味合わせてしまったと思うと・・・・申し訳なくて仕方がない。本当にすまなかった。

 

そう言って頭を下げるチェ尚宮に、ヨンは満面の笑みで肩を抱き顔を上げさせる。

 

「叔母上、謝らないでください。私はむしろ誇らしいです。だって、私がここに来たからこそ、ご先祖様は心に秘めたお相手を探しに行くことが出来たのでしょ?もし、そこであの「女の子」に再会出来なかったら、多分、ご先祖様は一生独身・・・・・そうなると、私の存在自体消えてしまうことになる。だって、私はチェ・ヨンの直系男子なのですから」

 

ああ、ヨン。お前のこれから作り上げていく家族の血統は誇らしい程に成長しているぞ。早く帰ってこい。それまでに、私はこの青年を無事あちらの場所に送り届けられるよう、尽力いたそう。

 

チェ尚宮は、ヨンをぐっと抱きしめた。

 

「ヨン。私の誇らしい子孫よ。そなたの存在が、我らの縁を末永く繋いでくれた。ありがとう」

 

 

 

長く、なが~~~く間が空いてしまって申し訳ありません。

桜ですね~春ですね。と言っていたのに、既に季節は一つ進んで、今や梅雨。

ジメジメ、ムシムシ・・・暑い夏の入り口を思わせる陽気に、大きなため息が(笑)

 

今週末には「夏至」がやってきます。

夏の始まり・・・・

少しでも快適に、少しでも楽しく。今年の夏も越したいものですね。