その方は とてもお上品な方です。
糖尿病と貧血で毎月1回の血液検査と
鉄剤を処方してもらいに 来院する患者様。
貧血のほうは軽かったのですが
糖尿病はインシュリン管理一歩手前。
保険証は芸術家国保。
ご主人が 染色関係のデザインをしておられるそう。
有名な織物の専属らしく
奥様であるUさんは さすがの リッチぶり。
ナ~~~イスなバディを包む
ワンピースは キミジマかセリーヌ。
お靴はもちろん、フェラガモ。
一世を風靡した ディオールのチャーム付きレザーキルトバッグ。
手元は ピアジェの時計
ネックレスとイヤリングはもちろんおそろいで
アクセサリーが引き立つように 爪はベージュ。
お財布は エルメスで
お化粧も濃すぎず、50歳にしてはすばらしく美しい肌。
シワなんて どこにあるのかな。
「 いつも、お綺麗で Uさんはわたしの憧れなんです
(おっぱいもおっきいし) 」
そういうわたしに 「 ふふっ 」とはにかみながら
さっと額の汗を拭く レースのハンカチにはイニシャル入り。
そんな Uさんがいらっしゃると
百貨店の化粧品売り場に早代わりの
受付ロビー。
香水は、ちょっと キツイです・・・・Uさん。
その日は 午後の診察担当でした。
休んだ後輩の替わりに 小児科の外来クラークをしていると
受付からコールが。
ぱたぱたと 向かうと
受付カウンタ前で 猫背になって しなだれている女性が。
Uさんだ!
服装や髪型、持ち物はUさんだけど
か、かおが 見たこともない オバサン!!!!!
「 yong-yuanさんを、Uさんが呼んで欲しいっておっしゃって 」
「 Uさん、どうされたんですか?
いつもと お顔が お顔の色が違いますよ。 ( ; ゚Д゚) 」
「 ちょっと、調子が悪くて・・・。つらいの・・・・・。 」
「 貧血ですか?すぐ看護師に連絡を・・・・ 」
ぐわし、っとUさん、わたしの前腕を掴む。
「 い、いいの、あなたでいいの、お願いだからちょっとこっちへ・・・ 」
ほぼ90度に腰を丸めてUさん、ロビーの椅子にどさっと座った。
「 どこか痛むんですか?とてもお辛そうです 」
「 ・・・・・む、胸が・・・・・・昨日からうずいて・・・・ 」
かすれかすれに ヒーヒーいいながら Uさんが答えた。
胸??
胸 → 胸部 → 痛い + 苦しがっている + 脂汗 + ヒーヒー言っている
= ってことは
① 肺気胸
② 肋骨損傷
③ 胃潰瘍急性増悪
④ 心筋梗塞
「 看護士さん呼びますね、Uさん みぞおちですか?苦しいのは 」
受付に目配せして 看護師さんに連絡を取ってもらう。
「 み・・・ぞおち ・・・でなくて・・・・ む、むね・・・・・ 」
③、消えた。残るは① ② ④ どれもえらいことだ。
でも、先日の検診では 心疾患異常なしだったよね。
高脂血症と糖尿病予備軍で要指導だったよな。
てことは ①か②か?
車椅子を転がしながら 看護士さん到着。
「 よ、yong-yuanちゃん、ついて・・・・・きてぇぇぇ 」
Uさん、やばそう。
看護師さんがドクターに連絡して
すぐに 胸部レントゲン。
ところが Uさん、断固拒否!
あげく 痛み止めの注射を打ってくれといってきかない。
よくあることだから何時も痛み止め飲んでちらしていたから、と。
大丈夫、心配ない、ただ胸が痛いだけ、の一点張り。
Uさんは 検診のときも 「 被爆したくないから レントゲンはいいわ 」
なんておっしゃっていたし、そのせい?
先生、Uさんを診察台に寝かせる。
すると、 「 ぎゃ~~~~~~! 」
いつものUさんとは思えない 強烈な断末魔!
「 痛いイタイイタイ、背中のばすといたい!!いたいのよ!! 」
さ、さっきまでのか弱いUさんはどこへ????
「 ち、ちょっと、yong-yuanあんたUさんの脚をおさえて! 」
言われるままに抑える私。
その間、
「 ぎゃ~~~~~ 」
「 やめて~~~~~ 」
叫びっぱなし。
先生が胸を広げるように看護士さんに指示すると
「 いや~~~~、脱がない~~~~~!! 」
廊下挟んだ向かいは小児科。
小児科が シーンとなってる。
いつもなら 子供たちの声や泣き声で騒がしい外来が
Uさんの声で 膠着状態・・・・・なのか。
Uさんを無理やり脱がせて 先生が触診をはじめた。
ちらり、とみたUさんの豊満な胸は
真赤に そして ところどころ青紫になっている。
「 熱もってるな。これ。Uさん、レントゲン撮りますよ。 」
Uさん かすれた声ながらも、最後まで拒否だったけれど・・・・・。
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Uさんの に付いた 病名。
1.「 胸部内異物 」
2.「 二次感染 」
3.「 パニック障害 」
1.の病名なんじゃこれ、へんな病名。みたことないわ。
レセ的にかっこわるいな~と思い、先生に聞いてみた。
「 付けようがないんだよ、付けようがさぁ 」
聞くと Uさん、なんと 豊胸手術を半年前に受けていたとか。
片方500ccの 生食パックを左右に ドカン。
某美容外科で。
しかし、オペ後の経過は良好だったものの
年齢的・身体的に500ccは Uさんにとって負担が大きく
主治医の先生にストップをかけられたものの
本人曰く、どうしてもコレじゃなきゃ嫌だと 強行した模様。
だって、左右で1kgでっせ??・・・・・・。
お、おそろちい・・・・・・・。
パックの重さを支えきれなかった
デコルテ、
大胸筋、
要は 支えていた 肉がちぎれて
パックを挿入したわきの下の傷からも
化膿が広がり
糖尿病も進行していたので
キズの治りも悪し、
そのうえ ケアが悪かったのもあり
そんなこんなのたくさんのマイナス要因が重なって
中で 恐ろしいことになっていたんだとか・・・・。
緊急でパックを取り出すオペが行われ
その後も なんと4週間も入院することになったのです。
Uさんは 2ヶ月ほど前から 痛みを感じていたものの
鎮痛剤でなんとか凌げるほどの 状態を繰り返し
こんなになるまで ほっといちゃって・・・と
特室Aの1泊3万5千円のお部屋で おっしゃっていました。
あんなに見たかった Uさんの 実物のお胸は
ニセモノでしかも 皮一枚下は ぐちゅぐちゅだったなんて・・・・。
おお・・・・・・
こわ・・・・・・。
打ち出しされた Uさんの入院レセ。
毎日の点滴、処置で続紙が4枚。
ぺらぺらめくりながら
ああ、あんなにおっぱいの中はぐちょんぐちょんだったのに
「 異物除去 」 だなんて
生食たんまり使って 胸腔内 綺麗に洗浄して・・・・・
あああ、先生お疲れ様でした・・・・。
Uさんは 退院後 豊胸手術を受けたクリニックで
伸びた胸の皮を切除して 美しく胸を新たに形成しないと
いけないそうです。
こりてない、Uさん、
「 次は 300ccくらいに しとくわ~ 」
↑ これでも かなり 大きいそうですけど・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・だそうです。