4/20からの2ヶ月問、魔の期間だった。
全財産1,800万円を失い、更に800万円もの借金を抱え、
途方に暮れる日々だった。
眠れないため、漢方薬による治療と食養生を始めた。
睡眠薬も飲むようになった。
 
出張先で久々に会う人、会う人、皆にやせましたねと言われた。
食べたいけど食べる気になれない。たくさん食べれない。
食養生で夜は腹六分目にするよう指導されている。
 
会議後の懇親会は最も悲しく辛い場だ。
酒は飲まないと、妻と約束したからだ。
 
缶ビールをグィッと飲みたい、何本も飲みたい。
半年前のように、以前のように飲みたい、以前の自分に戻りたい。
 
懇親会は、飲んで話すだけの場ではない。
滅多に会わない人、いろんな人と話し、いろいろ情報収集することが
大切な仕事の一つだからだ。
 
お金を失った身として、懇親会の夕食は貴重だ。
少しでも食事代を浮かすためにも食べないといけない。
情けない、本当に情けない、貧乏マインド満載だ。
 
辛い、本当に辛い、前に戻りたい。
半年前の懇親会は楽しかった。以前の自分に戻りたい。
そんな気持ちが怒涛のように押し寄せてくる。
 
何度も死のうと思った。どこで、どうやって死ぬ?
何度も考えた。
死んでも、家のローンが無くなるだけ。
カードローンで借りた大金の借金は残る。
死んだら、家族にも、会社にも、世間様にも迷惑をかけてしまう。
 
考えても、悔やんでも、奪われたお金は返ってこない。
残された道は前に進むしかない。しかし、どうすればいいのか?
 
明るく話せない、笑えない自分がいる。
暗い、暗くてしょうがない。
努めて、明るくしなければならないのに。
こんな話、妻以外の誰にも話せない。
 
数年前の京都のアニメ会社放火殺人事件のニュースを聞いた。
たくさんの将来を嘱望された若いアニメーターが亡くなった
とても悲惨な事件だった。
犯人の父親は自殺した家庭で育ったそうだ。
それを聞いてゾッとした。
 
私が死んだら、息子はどんなに悲しむだろう。
あいつの親父は、詐欺に会って自殺したんだと言われ続けるだろう。
そんな思いをさせる訳にはいかない。
絶対にダメだ。そんなことは決してあってはならない。
どんなに貧乏になっても、踏ん張らないといけない。
 
会社に行くと、不安感、喪失感、絶望感を押し隠しながら
仕事しないといけない。
周囲の人や部下達が楽しそうに雑談している姿を見ると
胸が、胃が若しくなってくる。
 
これは、自分の悪い種まき「因』が、悪い「縁」と結びついて
悪い結果「果」を導いたことによるものだ。
 
仏教では三世の因果と呼ばれているが、
過去世に行ったものが現れたことかもしれないが、
現在世に行った悪い種まきの芽生えたものかもしれない。
思い当ることもある。罰が当ったのだと思っている。
そう考えるしかない。100倍~200倍になって帰ってきた。
本当に、本当に、ゾっとする。
 
 
こんな気持ちでも、こんな気持ちを押し隠しながらでも
しっかり給料もらってこないといけない。
そうしなければ、学費もアパート代も払ってやれない。
息子が学校に行けなくなってしまう。
 
私の息子は、世界中の誰よりも「ありがとう」と言うのが上手い。
妻や、妻のお父さんやお母さんによく電話かける。
とても可愛いがられている。とっても素晴らしい息子だ。
そんな息子がグレさせる訳にはいかない。
 
親父は何てバカなことをしたんだと
どんなに悲しむだろう、考えるだけでゾッとする。
 
母はどんなに悲しむだろう。
母は近所の人や親戚達に私のことを自慢の息子だと言ってくれてた。
85才の母はどんなに悲しむだろう。
 
妻はどんなに悲しむだろう、どんなに怒るだろう。
私のことをどんなにバカにするだろう。
何て情けない、ダラしない奴だと思うだろう。
 
 
妻は子供の頃から、死後の世界が怖くてたまらなかったそうだ。
19才で家出して7年間、出家して修行していた。
死後の世界は真っ暗闇だということを知っていた。
死んだら仏様になるという一般的な仏教、法事のための仏教、
言わゆる葬式仏教は、真の仏教でないことを知っている。
 
修行しながら、小料理屋で働いていた妻と出会った。
妻を好きになり、店に通い詰め、付き合っていく内に、
先輩の助言もあり、妻は修行を諦め、7年振りに実家に帰った。
修行のことは一切聞かなかったので知らない。
 
今回の事件が起きて初めて聞いたが、修行を止めたので、
地獄行き確定の人生だということを覚悟していたらしい。
 
そんな妻は去年、考えに考えたあげく、親鸞聖人の教えを伝える
浄土真宗を学びだした。その教えでは、阿弥陀如来に救われない限り、
どんな人も、死んだら地獄に落ちることを知っている。
 
私が死んだら、最も深い地獄に落ちることを知っている。
妻は生きてる内に阿弥陀様に救われ、死んだら極楽浄土に行けるよう
日々、お勤め、仏教の聴聞を続けている。
本当に本当に頑張ってる妻に、とんでもない迷惑をかけてしまう。
 
私は試されている。
事件を起こしたことも、仏教の力で救われるかどうかも。
どうやって生きていくかを、なぜ生きるかを。
 
事件が起こって、妻が私に要求したのは、
酒を止めること、妻と一緒に仏教を学ぶこと、この2つだけ
毎日、朝と夜のお勤めをする。
妻の仏教の先生の仏法讃歎を聞く。
月1回の聴聞、年3回の富山での聴聞、これだけだ。
 
妻は言ってくれた。
あなたと同じ年代で、仕事や出世、お金のことで悩んでいる
そんな人はたくさんいるはずだよ
あなたみたいなことにならないように
日々、仏教を学び、アウトプットしなよ
人のお役に立ちなよ、いい種蒔きをしなよ
 
今日は富山、親鸞聖人の浄土真宗を信仰する人が多い土地だ。
妻と一緒に二度、仏教を学ぶために訪れた場所だ。
南無阿弥陀仏を唱える
助けてください、救ってください、阿弥陀さま
私を助けてください、私を救ってください、阿弥陀さま
 
今は、南無阿弥陀仏を唱えることしかできない。
歩いている時はずっと、南無阿弥陀仏と言い続けている。
念仏を唱えるだけでも、仏縁が深まると聞いたからだ。
 
妻は、阿弥陀さまがいつも傍で見守ってくれていると言っている。
とにかく唱えよう、できる限り唱えよう、南無阿弥陀仏を
妻のため、息子のため、母のため、妻の両親のために