行政書士の実務Q&A
登記申請手続は最高裁の判決により、行政書士は登記申請代理を業とすることはできないことが確認されています(平成12年2月8日 最高裁第三小法廷)。
しかしながら登記申請の際に必要な添付書類の作成権限は、行政書士と司法書士の双方で見解に相違があって、まだ確定した司法判断は出ていません。
事実上、競合状態になっているわけです。
先例として、平成18年1月20日民事局商事課長回答 登研696号があります。
この通達には、法務局は形式審査 しか行なわないことから、司法書士が代理作成した定款は受理して差し支えない旨が書いてあります。
これについて、『登記研究』の解説によると、
- 昭和29年1月13日民事甲法務事務次官回答を変更するものではない。
- 定款の作成は司法書士の業務範囲に含まれない(弁護士法72条ただし書きにも該当しない)。
- しかし、弁護士法72条(一般の法律事件に関して代理その他の法律事務を取り扱うこと)に該当する場合と該当しない場合とが考えられる。
とされていて、実務上、司法書士が作成した定款認証や定款を添付した登記申請は認められています。
この通達では、行政書士法 との関係には、いっさい触れていません。
この通達に基づいて、平成18年1月24日、公証人連合会は当初、各公証人あてに「司法書士が、商業・法人登記の申請のために定款の作成代理をすることが、司法書士の業務範囲に含まれることが明らかにされました」と通知しました。
ところが一転して、平成18年3月1日、公証人連合会は、「司法書士が、商業・法人登記の申請のため に定款の作成代理をすることが、司法書士の業務範囲に含まれることが明らかにされました旨お伝えしたところは、上記回答の趣旨と異なるものと考えられますので、この部分は撤回させていただきます。なお、司法書士から、商業・法人登記の申請に当たり、司法書士が作成代理人として記名押印又は署名している定款の認証を求められた場合、他に法令違反等の事由がないときは、認証して差し支えないと考えられます」と通知しました。
定款等添付書類の作成権限について行政書士側の見解の根拠となっている代表的な先例には、「会社設立に必要な書類のうち登記所に提出するものの作成は、司法書士の業務範囲に属するが、しからざるもの(定款、株式申込証等)の作成はそれに属しない」とする回答(昭和29年1月13日民事甲法 務事務次官回答・先例集下2145頁、月報9巻3号61頁)があります。
平成13年法律第77号による改正後の行政書士法1条の3第2号(平成14年7月1日施行)で「行政書士が作成する契約その他に関する書類を代理人として作成すること」と規定されたので、行政書士はその資格において、発起人または社員から委任を受けて定款を代理作成できるものと考えられる」としたもの(平成15年7月15日 日行連宛 日本公証人連合会法規部発事務連絡)も行政書士側の見解の根拠です。
司法書士側の見解の根拠となっている代表的な先例には、「司法書士法第1条、第19条第1項本文の規定により、法務局もしくは地方法務局に提出す る『登記申請書類』の作成は、『すべて』司法書士の業務範囲に属する」(昭和33年9月25日民事甲第2020号民事局長通達・先例集追II 329頁、登研132号38頁、月報13巻11号77頁)、「司法書士は、法の示すとおり他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁、法務局及び地方法 務局に提出する書類を代わって作成することを業とする者であって、これらの官庁に提出する訴状、告訴状、登記申請書等の作成は勿論これらに添付を必要とす る書類(例えば売買契約書、各種契約書、証拠写の作成、住所、氏名、租税、公課の証明願、戸籍謄本交付請求書等)の作成は司法書士の業務範囲に属す る」(昭和39年9月15日法務省民事局長回答)、「不動産売渡証書、不動産抵当権設定証書は、行政書士法第1条の権利義務に関する書類であるから、その 作成義務は当然行政書士の業務であると主張するものと、司法書士法第1条による法務局、若しくは地方法務局に提出する書類に該当するから行政書士法第1条 第2項の他の法律において制限されている旨の規定が適用され、行政書士は作成することができないと主張するものがいるが、いずれが正しいか」との問いに対 し、「設問の書類が登記を申請するために作成するものである場合には後段のお見込みのとおり」とした回答(昭和37年9月29日自治丁行第67号 日行連会長宛 行政課長回答)があります。
このほか、たとえば法務局に提出する書類の作成のうち国際帰化申請 は、提出先が法務大臣であり、法務局は単なる提出窓口でしかないため、行政書士と司法書士の競合業務になっています。
