夏の朝が好きだ。


まだジリジリと地上を焼く太陽が勢いを増す前。


ラジオ体操の”新しい朝が来た"という歌詞がしっくりと来るような、新しい朝。


買ったばかりの本の表紙を開くような、ページを1枚捲ったような真新しい清々しい気分と似ている。

夏の朝のあの清らかな瑞々しい朝日に包まれた景色を見る度に、心の中の、頭の中の、余分なことを溶かして消してくれるような気がする。

目に、頭にしっかりとその穏やかさを焼き付けようとする。

とても高い空に、ゆっくりと浮かんだ雲の上で寝ているような、音も無く、ただ柔らかな光にだけ包まれているような心地良さと永遠を想わせるような安心。

この先の人生の中で、あと何回、この景色を感じるのだろう。

人生という時間は容赦なく、一方方向に進んで、巻き戻すことはできない。

儚い今を、決して取り戻せない今を、大切に生きようと思う。

夏の朝の柔らかな太陽の光の中で、切なさを少し感じながら自分用の幸せを取り零すことなく、両手の平にしっかりとつかまえて。