星祭り。
なんだかロマンチックな響きですね。
7月7日の夜、天の川に橋が架かって、牽牛と織姫は年に一度だけ会うことができる。
誰もが知っている七夕の物語です。
津村節子さん
『星祭りの町』
は、そんな七夕祭りのある町の物語です。
戦時中、主人公の藤岡育子は祖母と姉、妹と4人で母方の伯父のいる入間川町に疎開してきます。
戦争から逃れてきたはずなのに、敗戦によって入間川は基地の町となって米兵が闊歩する町となります。
敗戦の困惑、見たこともない外国人。
育子の両親は既にありませんが、戦後の混乱の中で、三姉妹はそれぞれ一生懸命に自分の人生を探して生きていこうとしています。
この本、実は知り合いから借りたものです。
借りるまで、この本の存在は全然知りませんでした。
入間川というのは、実はぱんだの住んでいる最寄り駅の隣の駅。
(現在は『狭山市駅』という駅名に変わっています)
学生の頃などは自転車で通り過ぎていた商店街が舞台になっているのですね。
入間川の七夕祭りも以前はよく出かけていました。
一月遅れの8月が入間川の七夕祭りです。
今ではその米軍基地だったあたりは自衛隊の入間基地になっています。
作者の津村さんはあとがきで、「今では蜃気楼ででもあったかのように基地の面影はない」と言っておられますが・・・
自分の生活圏である町に、かつてそんな過去があったということがすごく不思議な気がします。
ぱんだにとって、それはまるきり無関係なことでもなく・・・
ぱんだぱぱはまだ10代であった頃、そのジョンソン基地で働いていたこともあったそうなんです。
戦後62年余。
ほんの短い時間に、世の中はものすごい勢いで変わってきたのですね。
今では、想像することもできない時代が、ほんのちょっと前にはあったのですから。
今、入間川の町はまた変わろうとしています。
駅前開発で、 『星祭りの町』の舞台になっているあたりは、再開発されるようなのです。
現在の狭山市駅西口にあたるのですが、このあいだ偶然用事があって降りたところ、お店は再開発のためほぼ全て閉店中でした。
これからどんなふうに変わっていくのか・・・
変わることに対して抵抗はありません。
世の中も人も変わっていくのが当たり前、むしろ変わることが生きていくということなのではないかとぱんだは思っているからです。
むしろ人生が停滞しているような今日この頃のぱんだ・・・
同じ場所にとどまって、変わらないまま干からびていっているような虚しさ・・・というか、焦り・・・
それに比べれば、いいにしろ悪いにしろ、変化というのは風通しのいいもののような気もします。
まぁ、ぱんだの繰言はさておき・・・
主人公は昭和3年生まれ。
ちょうど戦時中に学生時代を過ごし、勉強すべきときに挺身隊として工場労働に駆り出され、繰上げ卒業をさせられた世代だそうです。
最初は手に職をつけて、生活を支えようと洋裁を習いお店も構えますが、勉強への憧れを捨てきれず、学習院に短大ができたのを知って、そこを受験しようと試みます。
当時としては、恵まれた経済環境であったことも確かでしょう。
主人公、育子が自分の人生を選び取っていく生き様はとてもさわやかです。