いくえみ稜さんの作品は昔から好きで
いくつも読んできました。
その中でも一番好きになった作品です。
登場人物の想いが痛すぎて、せつなすぎて・・・。
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潔く柔く 1 (マーガレットコミックス)
いくえみ 綾 集英社 2004-11-25 by G-Tools |
◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆ あらすじ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カンナとハルタは幼馴染。
高校でマヤとアサミと友達になり、4人はいつも一緒にいた。
カンナとハルタは恋人同士ではなかったけれど、
ハルタがカンナの事を好きだということは、みんなが知ってた。
だけどある日、
カンナはマヤに誘われ、二人きりで花火大会に出かける。
その日、ハルタに不幸な出来事が襲いかかる。
そしてそれ以来、仲の良かったカンナたちは
それぞれが行き場のない思いを抱えたまま
バラバラになってしまう・・・。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
オムニバス形式で進められていく作品で、
作者の方が"バラ色の明日"から
よく使われている形式のように思います。
この形式の方が普通の連作より得意なのではないでしょうか。
私が好きな作品にはオムニバス形式のものが多いです。
オムニバスとはいっても
各章の登場人物が他の章でも度々登場します。
重複する登場人物の年齢で時系列が分かるのですが、
時代はバラバラに進行していきます。
たくさんのキャラクターが出てくる中で、
私が一番好きなキャラクターは"瀬戸カンナ"という女の子。
すごく可愛いくてモテるんだけど、それを自覚できていなくて
ぼんやり・のんびりした感じの子。
そのカンナに、抱えるには重過ぎる出来事が襲いかかる。
カンナが登場する度、
彼女がその出来事に囚われて苦しんでいることがわかり、
今にも壊れてしまいそうで、気になって仕方がなかった。
カンナが傷を癒しきれないまま、物語が進んでいきます。
そうして進んでいくと「あれ?」とあることに気づく。
"もしかして、あの人とあの人が出会うのかな?"と。
そのうち"いつ出会うんだろう?"とワクワクして。
二人が出会った時には"やっときた!"と思って。
そして"きっとこれでやっとカンナが救われるんだ!"って
すごく嬉しかった記憶があります。
読んでいない方には意味が分からないですよね・・・(;´▽`A``
でも読んでいただければこの喜びが分かります!
主軸が二つあり、
どちらも心にぽっかりと穴を開けてしまった人々がでてきて
その心を癒し、癒されていきます。
この人の作品はどれもそうなのですが、
物語り全体に、一貫してずっと、優しい時間が流れています。
だから"癒し系"って呼びたいんだけど、
そう呼ぶにはあまりにも胸がぎゅうぅっとつかまれるような
切ない場面が多くて、なんとも表現しづらいです。
まさしくこれが"いくえみワールド"って
呼ばれるものなんだろうなと思います。
切ないけど癒される、そんな作品なんです。
実はコレ、かなりお気に入りでコミックスを持っているので
ネタバレ感想をすごく長々と書いてしまいました・・・。
長いネタバレ感想を読むぞ!と言う方は
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疑問だけ投げかけられて
最後までハッキリと語られなかった部分があります。
結局、カンナは誰が好きだったのか?
私は最初、カンナはハルタを好きだったんだろうと
漠然と考えて読んでいました。
ハルタが好きだったけどマヤに揺れてしまって
ふらふらしている間にハルタが死んでしまって
揺れてた自分を責めて、後悔しているんだと思っていました。
だから禄がカンナに
「ハルタのことを好きじゃなかった」
と言う場面では衝撃を受けました。
マジで!?そうだったの?と。
カンナは
ハルタの気持ちを受け止めることが出来なかったから、
だから苦しんでいたんですね。
受け止めてあげられなかったことで、自分を責めていた。
突然未来を奪われてしまったハルタに、
もっと優しくしてあげればよかったと、そんな風に思っていた。
だけど"決して違う未来には行けなかったと知っている"と
カンナが言っています。
あの頃に戻ったとしても、ハルタを好きにはならないことを
カンナは自分で分かっている。
つまりは
カンナはマヤのことが好きだった
という事なんだと思う。
ハルタじゃない人に惹かれてた決定的な気持ちがあったから
違う未来にはならなかったってっていうことを
確信できてしまったんだと思う。
カンナは長い間、罪悪感から逃れるために
ずっと自分の気持ちから目を背けてきた。
マヤのことを好きになったんじゃない。
ハルタが「バイクの後ろに一番好きな女乗せよう」って言ったら
私は「どこまでも一緒に行こう」って言うんだ。
そうやって思い込もうとしているうちに苦しくなって、
いつしか"ハルタ"を思い出すこと自体が苦しくなっていって
しこりにしてしまったんだと思う。
だけど禄に
「罪悪感はなくならない」
「ハルタをちゃんと思い出してやろう」
そう言われてカンナはやっと
しこりにしてしまった"ハルタ"と向き合う。
ハルタの「いくよ」という最後のメッセージ。
カンナは禄に会いに走っていく時に、
"好きな人に会いたい"というハルタのあの時の気持ちを
初めて知ることが出来たんじゃないかな。
"会いたい"というのは、純粋で優しい気持ちであること。
ハルタがカンナに持っていたのは
そういう優しい気持ちだったということ。
ハルタの自分への想いに向き合うカンナ。
本人からは語られることのなかったハルタの想いを
キヨから受け取るカンナ。
そうしてカンナには、温かいハルタの想いが残ったわけです。
カンナのキャラが好きだけど、
この物語のキングオブキャラクターはハルタだったと思う。
明るくてやんちゃでちょっと意地悪で、
モテるのに自分はカンナしか見てなくて
その子を凄く大事にしている。
カッコよすぎる!
ハルタは思い出の中にしか生きていないのに、
どのキャラクターの中にもハルタは強烈な印象で生きている。
またそれが不自然じゃないんですよね。
それくらい魅力のある人だって読者もちゃんと分かる。
無邪気なハルタが登場するたびに
ハルタの未来に起こることが残念で、胸が締め付けられました。
ラストはみんなが幸せに向かうことができて良かったなと思う。
いつもぼんやりしていたカンナが
走るように、自分の気持ちに必死になって
そんな風に禄のことを好きになれてよかった。
マヤにも元気なカンナを見てもらいたかったなと、少し残念。
でも百加が「カンナ元気だよ」って伝えていたから
それでいいのかな?
読後はじ~んとしばらく余韻に浸りたくなる
素敵な"いくえみワールド"でした。
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