第1 設問1
1 「訴因」(刑事訴訟法(以下略)256条3項前段)とは、訴訟の一方当事者たる検察官が主張する具体的犯罪事実をいう。「訴因」は、「予備的に…記載すること」が認められている(同条5項)。では、予備的訴因として追加することが認められるか。
(1) 訴因は、「公訴事実の同一性を害しない限度において」(312条1項)「追加」することができる。したがって、本件において、「公訴事実の同一性」が認められるかを検討する。
ア 訴因の機能は、他の犯罪との識別と、被告人の防御にあり、同項が訴因の追加に「公訴事実の同一性」を求める趣旨は、社会的事実関係を一にする事案において、被告人の二重処罰を防止する点にある。そうだとすると、「公訴事実の同一性」とは、両訴因間で、その基礎となる社会的事実関係が同一であることをいう。また、補完的に、両訴因間の非両立性を考慮する。
イ 本件において、検察官は、保護責任者遺棄罪及び死体遺棄罪の両訴因を主張している。両訴因で被害者となるのは、共にVである。また、両訴因間で、Vを遺棄した場所は共に自宅から山林、遺棄した日時は令和6年8月5日午後6時から7時頃で共通している。Vは0歳であり、午後6時から7時頃の間に山林から一人で自宅に戻ってくることは不可能であるので、Vを短時間で二度遺棄することは不可能である。また、保護責任者遺棄罪と死体遺棄罪は、同時に行うことができず、両訴因は共に非両立であるといえる。
ウ 以上からすると、両訴因間で、その基礎となる社会的事実関係が同一であるといえ、「公訴事実の同一性」が認められる。
(2) したがって、本件において、予備的訴因の追加は認められる。
第2 設問2
1(1)ア 訴因の機能は、他の犯罪との識別と、被告人の防御にある。そして、被告人の防御は、訴因が他の犯罪と識別されていれば満たされる。そこで、訴因が「特定」(256条3項後段)されているとは、被告人の行為が、特定の構成要件に該当すると判断するに足る事実が具体的に明らかにされていることをいう。
イ 本件において、検察官の主張する予備的訴因は、死体遺棄罪であり、その具体的事実として、甲は令和6年8月5日午後6時頃から同日7時頃までの間に、Vの死体を山林まで自動車で運び、遺棄したと主張され、日時、場所、被害者、行為態様などが明らかにされている。よって、被告人の行為が、特定の構成要件に該当すると判断するに足る事実が具体的に明らかにされており、訴因が「特定」されているといえる。
(2) では、かかる訴因に基づき、裁判所は認定することができるか。
ア 訴因として検察官が明示した以上、被告人の防御は訴因に集中する。そこで、予備的訴因が明示する罪の成立を認定できる場合とは、被告人の防御が害されていないといえる場合をいうと考える。
イ 本件において、公訴事実である保護責任者遺棄罪と、予備的訴因である死体遺棄罪とは、その行為態様が共に「遺棄」で共通している。このほか、日時、場所、被害者も共通しているから、被告人の防御は両訴因間を通じて十分に尽くされているといえる。
ウ そうだとすると、本件では被告人の防御が害されていないといえるから、予備的訴因が明示する罪の成立を認定できる。よって、裁判所は、認定できる。よって、裁判所は、甲に死体遺棄罪が成立すると認定して有罪の判決をすることは許される。
以 上
設問2は、「訴因として追加が適法に認められた以上、訴因に基づいて判断することは当
然可能じゃん…」とか思ってしまった自分がカスすぎる。題意を全然理解していない。