「海軍首脳部は皆、日独伊三国同盟に反対した」
「その三国同盟を結んだからアメリカと戦争した」
いずれも嘘です。
山本五十六は日独伊三国同盟を結ぶ半年前の1940年4月には、日露戦争以来の国家戦略を勝手に大転換する真珠湾攻撃を、連合艦隊参謀長の福留 繁に示唆しています。
また、日独伊三国同盟締結時の吉田 善吾 海軍大臣は三国同盟の賛成派でした。
「アメリカにはドイツ系が多いから即戦、にはならぬ」
という判断です。
それに、対米戦に結びつく大きな契機は、1940年9月の日独伊三国同盟締結ではなく、1941年7月の日本による南部仏印への進駐です。
ですから、「陸軍が日独伊三国同盟を推進した為にアメリカと戦争になった」という通説は、大間違いなのです。
戦略なき海軍
第一、海の向こうのアメリカには、日本侵略の意図はない。
しかし日本海軍は日本海海戦の山本権兵衛以来、アメリカを仮想敵国として「アメリカの脅威」を喧伝して来ました。
これは「国家の為」と言うより、ほとんど予算獲得の為の口実です。
どうして戦前の日本人が、働いても働いても貧しかったのか。
それは軍備、特に海軍力に異常なお金を注いでいたからです。
「軍艦で国が沈む」と言われるほど国家予算を占有したのが、日本海軍です。
それ以来、海軍上層部はアメリカやイギリスを実際に敵視し続けてきたのです。
だから、長年に亘って(勝手に宿敵視してきた)アメリカに一発ガツンとやりたかった。
この辺りが本音だと思います。
イギリスが日本海軍の育ての親ですから、「英米に愛憎入り混じる感情」とでも言えばいいのでしょうか。
そして戦後は「敗戦責任」を全て陸軍に押し付けて、自分達の責任についてほっかむりしたのです。
何より、海軍省も連合艦隊司令部も、官僚機構。
そこでは、武士道精神や特攻精神は邪魔なんです。
官僚機構で生き残って出世する為に必要なのは、武士道精神ではなく、自己保身、隠蔽体質、責任回避、自分達の利益優先…。
日本海軍も御多分に漏れなかった、という事です。