海軍上層部の敗戦責任。
これに向き合わない限り、大東亜戦争は終わらない。
いわゆる「A級戦犯」の処刑と引き換えに、罪を問われなかった真の敗戦責任達…。
山本五十六達を無条件に礼賛する事は、大東亜戦争の真犯人の隠蔽になる。
敗戦責任がある指導者と、一般の兵士と、一緒でいいハズが無い。
日本国家に絶大な損害を与え、国家戦略を取り返しがつかないほど破壊したミッドウェー海戦。
「過去の出来事を後知恵で批判するな」という人は、ミッドウェーの3000名の戦没者に、何と申し開きするのか。
「怠慢」「情実人事」という観念が物象化したこの海戦での油断に基づく大敗なんて、敗将は極刑にすべき。
海軍は、この期に及んでまだ、試験の成績と役所の序列だけで、能力と関係ない人事が行われていた。そんな山本五十六に、「陛下の名代」の自覚はなかったのだろうか。
彼も南雲も「責任を回避した」というより、責任という観念をそもそも欠いているように見える。
また、ミッドウェー海戦後のウソ戦果発表は、国家の大義の為でも何でもなく、己のやましさをとりつくろう為であり、隠蔽する為。
そして隠蔽は隠蔽を呼び、次の隠蔽と結びつき、そうして隠蔽体質は自己増殖する。
まさに、官僚組織の裏側に常に立ち現れてくる黒い魔性…。
海軍上層部もそうだし、日本の指導者層というのは上に行けば行くほど、精神面において西洋的な合理主義の影響を受けやすくなっている。
こうした秀才エリートは、科学技術に精通しているが、人間心理や精神に対する深淵な洞察に乏しい。
そして日本海軍の場合は、秋山真之がマハンに騙された頃から、決定的に道が歪み始める。
「戦術・戦技のみ」で「戦略が皆無」の日本海軍マインドは、マハンによって育まれた。
とにかく、日本海軍の間接協力のお陰で、具体的には山本五十六や南雲のお陰で、アメリカが大勝利出来たミッドウェー海戦。
アメリカ海軍は、彼らに感謝状を出すべき。
だから、この山本五十六を称賛する書物というのは、その国家棄損度において、反日的なメディアと甲乙つけがたい。
「山本五十六は英雄」という思考の枠内で考える事を刷り込まれているこの山本五十六英雄論は、日本の歴史を大きくゆがめている。