櫻もバラ科ですが、バラの花は強烈な色彩で自己主張をしている。まさに西洋人。

片や、櫻の淡さと言ったら…。
櫻は色彩が明瞭ではなく、自他を隔てる輪郭が淡い。その淡さが、日本人の奥ゆかしい戀心に近似している。

※「戀」は「恋」の旧漢字。

言葉に出すと、軽くなる。「好きです」なんて軽々しく言えない。言えるわけがない。

しかし、何とか「あうんの呼吸」で、自分の気持ちをわかって欲しい。

だからオブラートに包んで伝えたり、好きだからこそわざと嫌いなフリをしたり、自分の戀心を何か自然の事物に託したり…。

これが古今和歌集の戀心。

愛を直接的に表現しない奥ゆかしさ、ですね。

戀に限らず、日本人の会話は1から10まで具体的に言わなくても「あうんの呼吸」で深読みして会話をする。

そしてとにかく「切なさ」や「儚さ」が、古今和歌集の骨子。   

人生も青春も人の命も、儚いからこそ今の目の前の一期一会に全てを賭ける。

日本人のこのDNAは、今日まで生きていると思います。