
青木淳氏と言えば、青森県立美術館やルイ・ヴィトン表参道の設計を手がけているが、
住宅においても興味深い作品が多い。
今回は、住宅《M》のためにつくった100個を超えるスタディ模型を元に
その思考の過程が表されている。
青木氏は「建築はルール」と言っているように
周辺状況や施主の要望等のルール設定により、様々なカタチを生み出す。
しかしそれらの総体が、そのまま建築になるのではない。
その生み出されたカタチそのものが、ある表現になっていなければ、
容赦なく、ルール自体を疑い、つぶしてゆく。
結局は、当初考えていた案に立ち返っていくのだが、
その過程は、信念に結びつく。
「捨てる」ことができるか?
住宅でも、何でも、「ルール」と同様に、周辺環境、要望をもとに
「こうあったらいいだろう」という設定をまず行う。
それを元に、スタディを繰り返すのだが、
大抵、途中で行き詰まるもの。
そこで、設定の真偽をもう一度見直す。
あたかも自分が設計しているような錯覚を想起させる展示で
非常に興味深い。
展示は、模型が載せられた雲形の不定形の板が天井から吊られ、
展示室を浮遊する構成。骨格の固まらない設計の過程の浮遊感を醸し出しているようで面白い。
ただ、テキストを読む見学者が人の流れを留めるところがあり、
テキストの位置とそれぞれの島との距離感、動線があまりマッチしていないところは
ちょっと気になります