こんにちは。
金田音楽教室のピアノ講師・金田陽子です。
前回途中になってしまった、大人のためのドビュッシーについて書きたいと思います。
大人の生徒さんは弾きたい曲がたくさんあり、お仕事や家事などで忙しくても練習をしてきてくれるので、すごいな〜と感心するとともに尊敬しています。
弾きたい曲はさまざまですが、ドビュッシーの曲を弾きたいと言う方も多いです。
特に、アラベスクやベルガマスク組曲などが人気です。
ドビュッシーの楽譜と言えば、著作権(50〜60年間)の問題があり、ドビュッシー = デュラン社(フランス)でした。
ドビュッシーは1980年代後半に著作権が切れ、ラヴェルも数年前に著作権が切れたと思います。

↑ デュラン社の楽譜
(写真が斜めなのは、黒い表紙は正面から写真を撮ると自分の顔が写り込んでしまうからです、笑)

↑ 全音の楽譜。
私は初めてのドビュッシーの楽譜は、この全音のアラベスクでした。
大昔(笑)、何も知らずに全音の楽譜を持っていったら、「次からは、白い表紙の安川加寿子さんの楽譜にしたほうが良いですよ。」と言われました。

『ドビュッシーピアノ曲集 』安川加寿子 校註(音楽之友社)
Ⅰ〜Ⅸ巻まであります。
デュランや全音はペダルの指示が書いてありません。
(最近の全音の楽譜はどうなのでしょうか。私のはかなり古い楽譜ですので、最近の楽譜と違っているかもしれません。)
ドビュッシー自身が、あまりペダル表記しなかったので、数曲しかペダル表記がありません。
だからといってペダルなし…という意味ではないので、安川加寿子さんの楽譜のペダル表記は大変参考になります。
ピアニストの故・安川加寿子さんは、フランス生まれでフランスで音楽教育を受けたかたです。
バイエルが主流だったピアノ教育界に、メトードローズなどの教本を紹介してくたさったかたでもあります。

↑ 『翼のはえた指』 青柳いずみこ 著(白水社)
安川加寿子さんの伝記です。
だいぶ前の本なので、もう絶版になっているかもしれません。
ご興味のある方は、古本か図書館で読んでみて下さい。
ドビュッシーから話がそれてしまいましたね。
大人の生徒さんが、ドビュッシーの曲を弾いてきてくれると、とても良く弾けているのですが、ペダル表記のない楽譜で弾いてくると、音が必要以上に濁っていたり、細かくペダルを踏み変え過ぎて色彩感が感じられなかったり…と残念なことがあります。
ドビュッシーは和声の融合、というか、霧のかかったような幻想的な響きが欲しいのですが、それは耳で聴いて感じて表現しないといけないかもしれません。
そこで、指導者の出番なのですが、ペダルは「何拍目でふんで、何拍目で離して」と言いきれない微妙なものがあります。
「ペダルは耳でふむ。」と、以前言われた記憶がありますが、言葉や、楽譜のペダル表記だけでは解決出来ないのかもしれません。
でも、大人の生徒さんは幼少期からピアノに親しみ、バロック、古典、ロマンと、曲を弾いてきた方が多いですので、ペダル表記の楽譜は大いに参考になると思います。
ピアノの種類によっても踏みかたは変わりますが、大人の生徒さんは聴く耳を持っている方が多いです。
きっかけを与えてあげれば、より素晴らしい演奏に変わります。
私が、こんな感じはどう?…と弾いたのを聴くだけでも参考になるようで、すぐに生徒さんの演奏も変わります。
できれば、最初の譜読みの段階から、自分の音を聴き、ペダリングを考え、印象派の美術などからイメージをもらい、工夫して演奏して欲しいと思います。
ドビュッシー自身は、印象派と言われるのを嫌っていたようですが、私はモネやルノワールなどの絵画と似た雰囲気を感じます。(例外もありますが。)
幻想的で色彩感あふれる音の世界を感じてもらいたいです。
その当時の時代背景を勉強したり、絵画をみたりすると曲に対するイメージが変わります。
大人の生徒さんには、それを享受する能力が充分にあると思います。
ペダリングに、打鍵前にふむペダルがあるのはご存じですか?
(たぶん、ご存じのかたが多いと思いますが。)
よく知られているのは、打鍵後のペダル(あとふみペダル)だと思います。
打鍵前にペダルをふむと、実際に弾かなくても弦がわずかに振動し始めるので、音色に明らかな違いが出ます。
打鍵前にふむペダル(先取りペダル)は、音に豊かな陰影を持たせたり、丸みのあって、良く響きわたる音になったりします。
倍音の響きが効果的に共鳴してくれるので、曲の始めや、主題の初め、ブレスのあとの間(ま)にも、試してみることをおすすめします。
ドビュッシーの全ての曲に効果的とは限りません。
実際に自分で試して、聴いて、イメージした音が出るようになったら素晴らしいと思います。
私は、打鍵前のペダルを知らなかった時に、表現したい音が出なくて、打鍵前にペダルをふんでみたら、結構いい音が出て、「音を弾く前にペダルをふんでおいてもいいのですか?」と、当時の師匠に聞いた記憶があります。
曲はドビュッシーではなかったですが、師匠からそういうペダルの踏みかたがある…と教えられ、もっと早くに教えてよ〜と思ったものです(笑)
まだ、とても若かったので、自分で気づかせるようにしてくたさったのかもしれませんが、大人の生徒さんは、是非とも知っていて欲しいペダリングです。

↑ 『実用版 ドビュッシー ピアノ作品全集』中井 正子 校訂(ショパン)
1〜12巻まであり、運指・ペダル記号付きです。
先ほどの白表紙の安川加寿子さんの楽譜と、それほど違いはないのですが、この楽譜の特徴は、ハーフペダル(1/2ペダル)の表記がされていることでしょうか。
ペダルの踏みかたは、独自の踏みかたで良いのですが、大人の生徒さんは、表記されているのを参考にしながら練習できるので効果的だと思います。
1番におすすめする楽譜は、この中井正子さん校訂の楽譜です。
ヘンレなどの原典版を持つのも良いですが、ドビュッシーは原典版だけでは練習の段階で悩んでしまうことが多いと思います。

↑ 『ペダルテクニック 基礎編』と『ペダルテクニック 応用編』 堀江真理子 著編(ヤマハ)
いろいろな曲とともに、ペダルの説明が載っています。

↑ 『知って得するエディション講座』吉成 順 著
(音楽之友社)
エディション(版)についてバッハからラヴェルまで
、それぞれ比較したものが載っています。
原典版、解釈版、実用版、全集版などの説明や、違いについてもわかります。

↑ 『パリの香り、夢みるピアノ』中井正子 著 (ショパン)
先ほどご紹介した、中井正子さんの本です。
東京芸大附属高校在学中にパリに留学して12年間学んだことを中心に書かれています。
中井正子先生は、まだ第一線で活躍中で、ピアノリサイタルや、コンクールの審査員、後進の指導にもあたっています。
印象派の画集なども紹介したいのですが、絵画は特に、画集を見るのと、実物を見るのでは全く違いますので、機会があったら是非ご自身の目で、実物をご覧になってみてください。
なんだか、楽譜や本の紹介になった感じもしますが、大人のかたがドビュッシーを弾く時は、ただ楽譜を見て弾くだけでなく、曲の背景にあるものや、参考になる文献などにも目を通して、演奏できる力があると思っています。
私達指導者は、その先のお手伝い…さらにより良く演奏できるようなアドバイスをしていきます。
CDなどもたくさんありますので、好きな演奏を探したりしながら、どんどんイメージをふくらませて自分だけのドビュッシーを演奏して欲しいです。
大人にしか出せない素敵な音があります。
ドビュッシーに限らず、そんな音・演奏を目指して楽しく演奏して欲しいと思いながら日々、指導しています。

いつもながら、まとまりのないブログになってしまいましたが、少しでもみなさんの参考になれば幸いです。
では、また明日[E:paper]
金田音楽教室のピアノ講師・金田陽子です。
前回途中になってしまった、大人のためのドビュッシーについて書きたいと思います。
大人の生徒さんは弾きたい曲がたくさんあり、お仕事や家事などで忙しくても練習をしてきてくれるので、すごいな〜と感心するとともに尊敬しています。
弾きたい曲はさまざまですが、ドビュッシーの曲を弾きたいと言う方も多いです。
特に、アラベスクやベルガマスク組曲などが人気です。
ドビュッシーの楽譜と言えば、著作権(50〜60年間)の問題があり、ドビュッシー = デュラン社(フランス)でした。
ドビュッシーは1980年代後半に著作権が切れ、ラヴェルも数年前に著作権が切れたと思います。
↑ デュラン社の楽譜
(写真が斜めなのは、黒い表紙は正面から写真を撮ると自分の顔が写り込んでしまうからです、笑)
↑ 全音の楽譜。
私は初めてのドビュッシーの楽譜は、この全音のアラベスクでした。
大昔(笑)、何も知らずに全音の楽譜を持っていったら、「次からは、白い表紙の安川加寿子さんの楽譜にしたほうが良いですよ。」と言われました。
『ドビュッシーピアノ曲集 』安川加寿子 校註(音楽之友社)
Ⅰ〜Ⅸ巻まであります。
デュランや全音はペダルの指示が書いてありません。
(最近の全音の楽譜はどうなのでしょうか。私のはかなり古い楽譜ですので、最近の楽譜と違っているかもしれません。)
ドビュッシー自身が、あまりペダル表記しなかったので、数曲しかペダル表記がありません。
だからといってペダルなし…という意味ではないので、安川加寿子さんの楽譜のペダル表記は大変参考になります。
ピアニストの故・安川加寿子さんは、フランス生まれでフランスで音楽教育を受けたかたです。
バイエルが主流だったピアノ教育界に、メトードローズなどの教本を紹介してくたさったかたでもあります。
↑ 『翼のはえた指』 青柳いずみこ 著(白水社)
安川加寿子さんの伝記です。
だいぶ前の本なので、もう絶版になっているかもしれません。
ご興味のある方は、古本か図書館で読んでみて下さい。
ドビュッシーから話がそれてしまいましたね。
大人の生徒さんが、ドビュッシーの曲を弾いてきてくれると、とても良く弾けているのですが、ペダル表記のない楽譜で弾いてくると、音が必要以上に濁っていたり、細かくペダルを踏み変え過ぎて色彩感が感じられなかったり…と残念なことがあります。
ドビュッシーは和声の融合、というか、霧のかかったような幻想的な響きが欲しいのですが、それは耳で聴いて感じて表現しないといけないかもしれません。
そこで、指導者の出番なのですが、ペダルは「何拍目でふんで、何拍目で離して」と言いきれない微妙なものがあります。
「ペダルは耳でふむ。」と、以前言われた記憶がありますが、言葉や、楽譜のペダル表記だけでは解決出来ないのかもしれません。
でも、大人の生徒さんは幼少期からピアノに親しみ、バロック、古典、ロマンと、曲を弾いてきた方が多いですので、ペダル表記の楽譜は大いに参考になると思います。
ピアノの種類によっても踏みかたは変わりますが、大人の生徒さんは聴く耳を持っている方が多いです。
きっかけを与えてあげれば、より素晴らしい演奏に変わります。
私が、こんな感じはどう?…と弾いたのを聴くだけでも参考になるようで、すぐに生徒さんの演奏も変わります。
できれば、最初の譜読みの段階から、自分の音を聴き、ペダリングを考え、印象派の美術などからイメージをもらい、工夫して演奏して欲しいと思います。
ドビュッシー自身は、印象派と言われるのを嫌っていたようですが、私はモネやルノワールなどの絵画と似た雰囲気を感じます。(例外もありますが。)
幻想的で色彩感あふれる音の世界を感じてもらいたいです。
その当時の時代背景を勉強したり、絵画をみたりすると曲に対するイメージが変わります。
大人の生徒さんには、それを享受する能力が充分にあると思います。
ペダリングに、打鍵前にふむペダルがあるのはご存じですか?
(たぶん、ご存じのかたが多いと思いますが。)
よく知られているのは、打鍵後のペダル(あとふみペダル)だと思います。
打鍵前にペダルをふむと、実際に弾かなくても弦がわずかに振動し始めるので、音色に明らかな違いが出ます。
打鍵前にふむペダル(先取りペダル)は、音に豊かな陰影を持たせたり、丸みのあって、良く響きわたる音になったりします。
倍音の響きが効果的に共鳴してくれるので、曲の始めや、主題の初め、ブレスのあとの間(ま)にも、試してみることをおすすめします。
ドビュッシーの全ての曲に効果的とは限りません。
実際に自分で試して、聴いて、イメージした音が出るようになったら素晴らしいと思います。
私は、打鍵前のペダルを知らなかった時に、表現したい音が出なくて、打鍵前にペダルをふんでみたら、結構いい音が出て、「音を弾く前にペダルをふんでおいてもいいのですか?」と、当時の師匠に聞いた記憶があります。
曲はドビュッシーではなかったですが、師匠からそういうペダルの踏みかたがある…と教えられ、もっと早くに教えてよ〜と思ったものです(笑)
まだ、とても若かったので、自分で気づかせるようにしてくたさったのかもしれませんが、大人の生徒さんは、是非とも知っていて欲しいペダリングです。
↑ 『実用版 ドビュッシー ピアノ作品全集』中井 正子 校訂(ショパン)
1〜12巻まであり、運指・ペダル記号付きです。
先ほどの白表紙の安川加寿子さんの楽譜と、それほど違いはないのですが、この楽譜の特徴は、ハーフペダル(1/2ペダル)の表記がされていることでしょうか。
ペダルの踏みかたは、独自の踏みかたで良いのですが、大人の生徒さんは、表記されているのを参考にしながら練習できるので効果的だと思います。
1番におすすめする楽譜は、この中井正子さん校訂の楽譜です。
ヘンレなどの原典版を持つのも良いですが、ドビュッシーは原典版だけでは練習の段階で悩んでしまうことが多いと思います。
↑ 『ペダルテクニック 基礎編』と『ペダルテクニック 応用編』 堀江真理子 著編(ヤマハ)
いろいろな曲とともに、ペダルの説明が載っています。
↑ 『知って得するエディション講座』吉成 順 著
(音楽之友社)
エディション(版)についてバッハからラヴェルまで
、それぞれ比較したものが載っています。
原典版、解釈版、実用版、全集版などの説明や、違いについてもわかります。
↑ 『パリの香り、夢みるピアノ』中井正子 著 (ショパン)
先ほどご紹介した、中井正子さんの本です。
東京芸大附属高校在学中にパリに留学して12年間学んだことを中心に書かれています。
中井正子先生は、まだ第一線で活躍中で、ピアノリサイタルや、コンクールの審査員、後進の指導にもあたっています。
印象派の画集なども紹介したいのですが、絵画は特に、画集を見るのと、実物を見るのでは全く違いますので、機会があったら是非ご自身の目で、実物をご覧になってみてください。
なんだか、楽譜や本の紹介になった感じもしますが、大人のかたがドビュッシーを弾く時は、ただ楽譜を見て弾くだけでなく、曲の背景にあるものや、参考になる文献などにも目を通して、演奏できる力があると思っています。
私達指導者は、その先のお手伝い…さらにより良く演奏できるようなアドバイスをしていきます。
CDなどもたくさんありますので、好きな演奏を探したりしながら、どんどんイメージをふくらませて自分だけのドビュッシーを演奏して欲しいです。
大人にしか出せない素敵な音があります。
ドビュッシーに限らず、そんな音・演奏を目指して楽しく演奏して欲しいと思いながら日々、指導しています。
いつもながら、まとまりのないブログになってしまいましたが、少しでもみなさんの参考になれば幸いです。
では、また明日[E:paper]