食用菊「もってのほか」と「はらこ飯」 | 半蔵門で働く元証券マン社長のブログ                       ~フードアナリスト協会日誌~

食用菊「もってのほか」と「はらこ飯」

地方に行くと、いつも新鮮な発見があります。
金曜日、土曜日に行った仙台では、まずは「食用菊」
金曜日は、早朝の新幹線に乗って朝9時過ぎには仙台駅に到着、そのままテレビ局や出版社などに営業をかけていました。
某出版社に行くために、こもちゃんと2人で迷い込んだ地元の市場でひときわ目を引いたのが黄色の「食用菊」でした。
刺身などの飾りに使うのかな、と最初は思っていたんですが、地元のフードアナリストの方にいただいたお弁当に入っていてびっくり。独特の風味がある食材だったんですね。

歯ごたえはしゃきさしゃきです。ほのかな青い香り、ふっと甘くてほろ苦い味覚。優雅なきくの花びらを食用にすることは、江戸時代から始まったとされます。日本の伝統的なエディブルフラワー(食用花)の一つです。
 東北地方では普通に食されていますが、産地はなんといっても山形県だそうです。

 山形県は食用ぎくの生産量で全国1位。東京都中央卸売市場で扱う6割以上は山形産が占めます。
 数ある品種の中でも、独特の香りと風味、味の良さで『食用ぎくの横綱』と評価されるのが、淡い紫色の「もってのほか」です。
 実際、私がいただいた食用菊も「もってのほか」という品種。
 他県では「延命楽」という名前ですが、東北地方では「もってのほか」という愛称の方が広く知られているそうです。名前の由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」とか、「もってのほかおいしい」といったことから転化したとか…。
近年テレビのクイズ番組で、ユニークな名前をもつ食用ぎくとして出題されてから、知名度は一気に広がりました。テレビのチカラは大きいですね。

 「もってのほか」は、食用ぎくの中では晩生で、収穫は10月下旬頃から。花びらが筒状に丸まった管弁なので、しゃきしゃきとした歯ざわりに特徴があります。
 一方、黄ぎくは比較的柔らかく、色の華やかさで安定した人気。山形県では、「寿」「岩風」などの品種を作付けしているそうです。電照での抑制栽培、ハウス栽培などを導入、いくつもの品種を組み合わせて周年出荷を行っています。

 ところで食用ぎくは、植物分類では観賞用の花と全く同じ。生け花に使われている大輪の菊も食べられないことはないが、苦味が強いものもあるらしい。苦味が少なく、香りが良く、ほのかな甘さのあるものをと選抜されてきたのが、山形県の食用ぎくです。
 もともとは京都辺りで食用が始まったとされるのだが、東北が主産地となり、今では地方食的な色合いが濃くなりました。
 
 和え物、おひたし、天ぷら、酢の物、吸い物など、食べ方は色々。ゆでる際に酢をたらすと色良くゆで上がるとされています。また歯ざわりを楽しむので、ゆですぎないことが肝心だ、とも。
 地元ではなすやきゅうりと一緒に漬け物にしたり、甘酢漬け、塩漬けなどの素材としても大変好まれているそう。
 たしかに、私には好きな味でした。

 ここで笑い話を1つ。
ある旅行者が山形の料理屋で、「あの有名な『言語道断』というものを食べたい」と注文する。…ドウダンツツジでもないし、何だろうとしばらくやりとりが続いて、やっと判明した。
『もってのほか』だ!ああ勘違い…。