以下は、平成24年6月1日に開催された「東京連続集会66」の概要です。
今回のテーマは、「米人拉致問題と米国の対北政策」でしたが、たまたま当日、
衆議院の拉致問題特別委員会で報告者4名が参考人として招かれましたので、そ
の報告も行いました。また、増元事務局長は、EU(欧州連合)議会で拉致問題に
ついて証言を行いましたので、そのことも報告させていただきます。
報告者は、訪米した飯塚繁雄家族会代表と増元照明事務局長、救う会の西岡力
会長と島田洋一副会長です。
◆署名873万に、「1000万署名」まで、あと127万
平田隆太郎事務局長
家族会・救う会は今年2月に「1000万署名運動の実施」を決定し、3月半
ばから皆様のご協力を得て、全国的に運動を行ってきましたが、現時点で約18
万5千筆増え、約855万筆から約873万5千筆になっていますので報告いた
します。署名運動は継続中ですので、今後とも宜しくお願いいたします。
◆北朝鮮への厳しい姿勢での対応を要請したが
飯塚 みなさんこんばんは。いつもありがとうございます。
5月の6日から12日まで約1週間、ワシントンに行ってきました。目的の一
つは、北朝鮮によるアメリカ人拉致被害者がいるという情報を米国の上院、下院
の議員や政府関係者などに提供することです。
これまで、北朝鮮はアメリカ人を拉致しないと思われていましたが、そうでは
なかったことがはっきりしそうです。日本とアメリカが共闘して北朝鮮に当たる
こと、アメリカの世論を巻き起こすことが狙いです。
もう一つは、以前アメリカが北朝鮮に対して、テロ支援国としての指定を解除
してしまった経過がありますので、再指定するよう働きかけることです。
さらに、北朝鮮のミサイル発射という蛮行に対し、より強い制裁を、日本もや
るのでアメリカもやってほしいという要請です。
家族会、救う会と拉致議連の先生方で行きましたが、紹介しますと、平沼赳夫
・拉致議連会長、山谷えり子・副会長、古屋圭司幹事長、竹本直一衆議院議員、
金子洋一参議院議員、塚田一郎参議院議員、市村浩一郎衆議院議員です。
我々の目的である、アメリカ人の拉致問題、テロ支援国の再指定、追加制裁問
題では、国務省は腰が引けている感じです。アメリカ人の拉致問題では、個人情
報を公表できないという変な理由を述べていました。
他方、被害者の地元ユタ州の議員3名に面会し、この事実を告げたところ、早
速色々動いたようです。
アメリカでは大統領選挙を控えており、民主党のオバマ大統領と、共和党のロ
ムニーさんの戦いになるわけですが、それぞれ北朝鮮に対する対応が違うという
予測もされています。
共和党の議員たちは、やはりオバマさんではだめ、北朝鮮への対応が生ぬるい
という感じを持っているようです。ということは、ロムニー氏が大統領になれば、
また北朝鮮に強硬な姿勢をとるだろうという予測もあります。そういう予測はあ
りますが、我々は当然それを待っているわけにはいかないわけで、今の体制の下
で、なんとか北朝鮮に圧力を加えながら、この問題を早期に解決すべくあらゆる
ことをやっていこうという考えで行ってきました。
アメリカは何かにつけて自国の国益が中心で、その判断で何事も通すという傾
向があるわけです。国益というのは本当は何なんだということもありますが、日
本は日本の国益があるでしょうし、それがこれからどのように絡んでくるのか。
その後、デービース北朝鮮担当特別代表が来日した時会いましたが、北朝鮮に
対する制裁や再指定について、再指定してもたいしたことはないという判断をし
ているようです。
我々はその意義が大きいと思っていますが、既に相当強い制裁を課している、
そういう実質的な制裁の方が効くというような話もしています。われわれはすべ
ての方に、厳しい姿勢で対応してほしいと要請しましたが、なかなか我々の思う
ようにはいかないという感じがしています。
上院、下院の先生方も、それぞれ考え方がありますから、それについては今後
どのような展開になっていくのか。一つは、ロス・レイティネン下院外交委員長
は今、北朝鮮人権法の法案を出しています。その中に、日本人拉致というはっき
りした項目が入っています。それが通れば、法律に従って、制裁や他の手が出て
くるのではないかという期待はしていますが、まだ確定はしていません。
私たちとしては、この問題に関する取り巻く状況もしっかりととらえて、でき
る限りのことをやっていこうという覚悟で行ってきました。今年は、拉致問題家
を解決する「勝負の歳」と位置づけていますので、すべての活動を精力的にやっ
て、結果を早く出したいと思っています。
◆親権の問題をなぜ拉致にリンクするのか
増元 20回の会合で40人の方と面会しました。報道にもありましたが、5月
7日の初日に、国務省のキャンベル次官補、キング北朝鮮人権担当特使、デービー
ス北朝鮮担当特別代表に会いました。部屋に入るとキング特使や日本・朝鮮関係
の国務省の方々がいらして、キャンベルさんはおられませんでした。
当初はキャンベルさんが13時30分、デービースさんは14時15分の予定でしたが、
キャンベルさんはおられず、デービースさん、キング特使がおられました。キャ
ンベルさんは少し遅れるということでした。
デービースさんはご存知のように、2月29日に北朝鮮と(非核化と食糧支援)
合意をし、アメリカ国内で大分批判を受けたということです。これはアメリカと
しては戦略的にやったつもりだったようです。
「圧力と関与」、これはやっていかなければならないし、今はその状況にはない
が、今後考えていかなければならない。そして北朝鮮との交渉は、すべての会談
において我々は拉致問題を北朝鮮に提起している、と言っていました。これはキ
ング特使もそうです。
デービースさんが言うには、北朝鮮の人民が北朝鮮政府から何ら恩恵を受けて
いない。そこにアメリカとして人民に食糧支援をすることで人民の心をやわらげ
る方向にもって行くんだとおっしゃっていました。だからこそ食糧支援をする、
と。
食糧支援のモニタリングには100人の米国人を送ってやる予定だった。しか
し、北朝鮮がミサイルを発射して今ご破算になっているとおっしゃっていました。
日本側は人数が多く、そのことを言う方もおられたので、私はここのところでは
何も言いませんでした。
そしてキャンベルさんが入ってこられまして、座るや否や色々話されたのです
が、その話は最初から最後まで、(拉致問題に、アメリカ人と離婚した日本人妻
が子どもを連れ去る)親権の問題をリンクするかのような話しぶりでした。
とにかくアメリカには親権の問題があり、これに対するすごい反発があるんだ
というのです。ルース駐日米大使が拉致現場を視察したことに対して、ルース大
使を罷免しろという声があるということを我々に言うわけです。
何の関係があるんだと思うぐらいのことですが、キャンベルさんは親権の問題
を(拉致問題と)リンクして並行的に解決しなければならない、と言ってしまっ
たのです。一方的にしゃべって出て行かれたので、私はすぐ言ったのです。
親権の問題と日本人拉致問題をリンクするような発言があったけれど、これは
許されない。基本的に親権の問題は夫婦間の問題だと私は思うが、拉致は北朝鮮
の国家による犯罪であり、これを同一視することは許されないし、このような考
えを持っている人たちとは戦わなければならない。私は今後戦います、と言いま
した。
そしたら、ズムワルトさん(国務次官補代理)が、子の連れ去りも拉致も「
アブダクション」という言葉を使うことから混同が生じることがあるので、キャ
ンベルさんもあのような発言をしたが、私たちは決して軽視しているわけではな
いと、言い訳をされました。
恐らく私の反論が効いたんだと思いますが、その日のうちにキング特使が、翌
々日我々が会う予定のロス・テイティネンさん(下院外交委員長)の部屋に行き、
外交問題の首席補佐官に、「拉致被害者家族や議員たちが来て、キャンベルと会っ
たのだが、キャンベルがこんなことを言ってしまった」と言い訳をしに行きまし
た。
ロス・テイティネンさんに会ったら、「(キャンベルは)とんでもないことを
言った。言い訳ができる問題ではない」と言っておられました。
我々は2001年からずっとアメリカに行って協力要請をしてきましたし、ブッ
シュ政権の当初は、あの姿勢があったからこそ2002年の(小泉・金正日)平
壌サミットが実現したと私たちは感じています。アメリカのブッシュ政権初期の
圧力がなければ、北朝鮮は日本との対話をしようとは思っていなかったでしょう。
北朝鮮政権への武力制裁も含めた感じで政策を行ってきたことが、金正日を非
常にびびらせた。そして日本との友好関係をどうしても結ばなければならないと
いう思いにさせたという点では評価をしていましたが、ブッシュ政権の第2期に
は、クリストファー・ヒルさん(国務次官補)という方が出てきて、ライス大統
領補佐官が国務長官になったあたりから路線変更し、北朝鮮との宥和、対話を優
先する雰囲気があって、テロ支援国指定を解除する動きが2007年頃から出て
いました。
2008年に議連の皆さんと一緒に国務省を訪れて、ヒルさんに、「絶対にそ
れはやってはいけない」、「もしやったら日本人のアメリカに対する信頼を損な
いますよ」と言っておいたのですが、それにもかかわらずアメリカは、北朝鮮を
テロ支援国指定から解除しました。
私は、最終的にアメリカは日本を守らないんだという意識を日本人に植え付け
たと感じています。
9日に国務省のキング特使や国防省の方々と会合を持ったのですが、その時に
は、「アメリカは日本の拉致問題に対する関心や思いというものにもう少し理解
をしなければならないのではないですか」と申し上げました。
「日本人拉致被害者を救出するという日本人の思いと北朝鮮に対する怒りは本当
に大きなものがあるんです。あなたたちはそれを理解していないからこのような
状況になるのではないですか。テロ支援国指定を解除した時も、日本の国民はア
メリカが最終的には日本を守らないという意識を植え付けたんです」とも申し上
げました。
それはアメリカ政府が今後拉致問題をどのように取り扱うのかということにも
関係していくと思うので、もっと日本の現状を知ってもらわなければならない、
意識してもらわなければならないと思ったから申し上げたのです。
私たちの抗議が効いたのか、デービースさんが5月24日に、韓国、中国の後
に訪日され、その時に私にまで、アメリカ大使館から「会ってほしい」という連
絡が来ました。シーファー大使の最後の頃から、アメリカ大使館に呼ばれるのは
飯塚代表と横田ご夫妻の3人だけでした。
私は、シーファー大使に対しても、テロ支援国指定を解除するなと強い口調で
言っていましたので、呼ばないほうがいいと思われたのかもしれません。内閣府
の人は、アメリカははっきり言う人の方がいいのではないですかと言っていまし
たが、それ以来本当に呼ばれなくなりました。
ところが今回、私を呼んだということで、アメリカもそれだけ気を使ってはい
たんじゃないでしょうか。でもアメリカ大使館に行った時も、日本の国民感情を
よく理解してほしいと再度申し上げておきました。
◆キャンベルさんは「女性差別だ」との声も
西岡 国務省の対応についてもう少しご説明します。子の親権問題というのは、
主として日本の女性とアメリカの男性が結婚してアメリカに住んでいる。結婚が
破綻して、子どもをどちらが育てるのかというのが親権です。アメリカでは裁判
をしなさいということになっています。しかし、日本の女性は英語があまりでき
ない。生活基盤がないので現金もない。そういう中でいい弁護士を雇えなかった
りして、裁判をすると男性の方に親権がとられてしまうということがたくさんあっ
て、裁判を避けて、子どもを連れてそのまま日本に戻ってきてしますというケー
スがあるわけです。
それについてハーグ条約があり、日本がその条約にはいると、親権問題では当
該国で裁判をするわけですが、日本の女性についてもアメリカの裁判所の決定に
日本も従わなければならないことになります。しかし、日本はまだその条約に入っ
ていないという問題です。
拉致も子の連れ去りも「アブダクション」という同じことばを使いますが、人
さらいとか誘拐という意味の単語です。母親が父親から子どもをさらっていると
いうのは、言葉遣いからしても、夫婦の間のことを「アブダクション」というこ
と自体、あるアメリカ人の女性に言わせると女性差別だ、と。
子どもが母親の方にいるのか、父親の方にいるのかという問題に、「人さらい」
という言葉を使うことが、アメリカの男性社会で「人さらい」という言葉を使う
ことが、拉致問題に対する不理解だけでなく、キャンベルさんは女性差別をして
いるという女性もいました。そういう問題です。
しかし、なぜそういうことをキャンベルさんがあの場で言ったのかについては
島田さんから背景説明を。
◆アメリカの中も常にせめぎ合い
島田 国務省=アメリカではないという点が重要だと思いますが、それは田中均
=日本でないのと同じです。初日に国務省に行って、その印象が鮮明だった点も
あって、飯塚さんも増元さんもアメリカに対する失望を記者会見で語られました。
だからこそ、2日目以降の、主に保守系の議員や有識者との面談の意義が増した
と言えると思います。
例えば、サマンサ・ラビッチというチェイニー副大統領の元補佐官で北朝鮮問
題を担当した女性に会いましたが、彼女は最後までブッシュ政権の中で、北朝鮮
をテロ支援国指定から外すことに反対しました。最終的にはライス、ヒルのコン
ビに押し切られて、彼女は怒り心頭で辞任したと言っていました。
そういう人もたくさんいます。常にせめぎ合いがある状況です。だから我々の
同志と言える人と力を合わせ、1+1が3にも4にもなるように持って行くかが
大事だと思います。
西岡 アメリカ社会の中で、同じアブダクションということばを使っていますが、
日本人拉致問題と子の親権問題を同じレベルの問題だと思っている人がどのくら
いいるのか。つまりキャンベルさんは、駐日米大使が横田めぐみさんが拉致され
た現場に行ったことについて、日本が同じアブダクションの問題について真剣に
取組んでいないのに、駐日米大使だけがアブダクション問題にそんなに真剣に取
組むのはよくない、だから罷免せよという世論があると我々に説明したのですが、
その世論は一般的なものでしょうか。国務省がそういうことを言いましたが、そ
れはどうなのかということについて。
島田 それはロス・レイティネンの補佐官を初め向こうの人に聞きましたが、そ
ういうことは全然なく、ごく一部に、国際結婚が破綻した場合の子どもの扱いに
ついて、特に国務省が弱腰だという批判が一部にある。キャンベル氏は、お前は
弱腰じゃないかと言われている立場ですが、細かいことを言えば、彼は我々が会っ
た時、盲目の中国の人権活動家陳光誠氏の問題で、一旦中国のアメリカ大使館に
入れておきながら、また出したりとか、共和党の議員から厳しくその対応を非難
され、民主党からもお前のせいで大統領選挙が不利になるじゃないか、なんとか
しろという批判を受けています。
彼は中国から帰ってきたところだと言っていましたが、気もそぞろという感じ
で、私の隣の隣にいましたが、全然別の資料を読んでいました。西岡さんの質問
に一言で答えれば、彼はかなり誇張していて、ルース大使がめぐみさんの拉致現
場に行ったというような馬鹿なことを言う議員がいたとしても、ごく一部ですね。
西岡 アメリカのメディアでそういう議論があるんですか。
島田 それは聞いたことがないですね。
西岡 我々は拉致問題で訪米し、そのためにアポイントを取って会ってくれたに
も関わらず、そういうことを特に家族の前で言うというのは大変無神経なことで
す。外交官同士で色々な課題について話し合うのは当り前のことでしょう。
我々は物を頼みに言っている立場なので増元さんもかなり表現は抑えながら、
そして記者会見の時も増元さんは自分ではマイクを取らないで、反論はしたから
その場だけのことにしようと考えていたのかもしれませんが、団長の平沼先生が、
「増元さん一言しゃべりなさい」とマイクを向けたので、そこで初めて部屋の中
で言ったことを話したという経緯でした。
我々はことさらにアメリカを批判したりするつもりはないんですが、しかし、
はやり超えてはいけない線をキャンベルさんは超えたのではないかとは思ってい
ます。そういうキャンベルさんの発言についてアメリカの中でも大変批判がある
ことも事実です。
では増元さんの次の報告を。
◆アメリカはアメリカの国益が第一だ
増元 キャンベルさんは知日派で、昨年の東日本大震災の関連でアメリカの政府
と軍を動かす主要な役割をしています。昨年行った時は、私はまずお礼を申し上
げましたし、現政権の中の親日派である彼をある程度持ち上げなければと思って
いたので、記者会見ではそれ以上言わない方がいいだろうと思ったのですが、促
されてそういう報告をしたら、日本でもだいぶ問題視したということでした。
私がその時に感じたのは、やはりアメリカはアメリカの国益が第一だと。拉致
問題では国際連携で協力は求めるけれども、主体的にこの問題を解決するのは日
本でなければならないということです。それをもう一度日本に帰って、日本で発
信しなければならないと思っていました。
とにかく、10年間の私たちの努力が全く実を結んでいなかったということで
落胆しまして、翌日からの面談で落胆から気持ちを上げていくことが大変でした。
その後は保守系の議員やシンクタンクの人たちに会って、さらにスネドンさん
の地元のマイク・リー議員などに会いました。今後スネドンさんの問題がアメリ
カの世論を動かすようになれば、国務省も動かざるをえなくなるだろうと思いま
す。その分、帰る頃には、明るい日差しが少し見えたので行ってよかったという
思いをしています。
しかし、この問題は日本が主体的に解決しなければならないし、日本が責任を
持って被害者を取り戻さねばならないという思いを、国として強く持ってもらわ
なければならないと感じました。
(2につづく)
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