ねぇ、どうして会ってくれないの??



あれから2週間、


それは、のらりくらりと玲子からの誘いを断り続けていた僕に向けられた

初めての怒りのメールだった。



思えば亜希子が長期海外出張を断ったことを知ったあの夜から、僕は

玲子との関係を断ち切ろうと、忙しい振りをしていた。



いや、忙しかったのは事実だが、それを口実に会うことを控えていた。



始めは朝から晩まで慌しく働く僕に気を遣い、玲子も大人しくしてくれて

いたのだが...



ゴメン。とにかく仕事がたまってどうにもならないよ。

それにお腹も痛むし、体調もおかしいんだ。



とにかく時間が解決してくれる。

会わない時間が、少しは玲子の熱を冷ましてくれる。



そう思い、僕はひたすら仕事に打ち込んでいた。



次に玲子が打ってくる手も、気付かないまま...

何時間か寝られただろうか?



半ば朦朧としながら、僕は朝の満員の通勤電車に身をゆだねて

いた。



昨日の出来事、一昨日の出来事。


言い換えれば、玲子との出来事、そして亜希子との出来事。


あまりにも盛りだくさんで消化しきれていいまま、僕の頭は混乱を

していた。



少しずつ整理する中で、一つだけ気になっていたことがあった。



何故亜希子は海外転勤を断ったのだろうか?



結婚する前から、海外で仕事がしたいと言っていた彼女が、

なぜ簡単にそのチャンスを見送ってしまったのか?


その答え。


実はすごい簡単なものではないかと、ふと気付いた。




そう、


亜希子は僕のために、海外転勤の夢を諦め、日本に残る決断を

してくれた。


あまりにも頼りなく、一人では生活が出来ない僕のために。



そうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。



でも亜希子のことを理解している僕だからこそ、確信のの持てる

答えだった。


2日前に、そんな亜希子のことを裏切る行為をしてしまったことに、

僕は深く後悔の念を抱いた。




電車の窓には、情けない顔をした自分が映っていた。



僕はあえて眼をそむけ、



車窓に流れていく住宅街に目を向けていた。

この日の夜、


亜希子の長期出張に関する話題は、これ以上話されなかった。




僕が潜在的に描いていたシナリオ。


それまではぼんやりとしたものでしかなかった。


布団に入ってしばらく、僕はそのぼんやりとしたものを、頭の中で

少しずつカタチに変えてみた。



もし...


もし、亜希子が長期間僕の元から離れていたら...



僕は絶対、寂しいと感じるはず。


寂しいと感じた僕は、きっと玲子との時間を作り、その隙間を埋める

ことになる。



そして玲子と二人、奈落の底に落ちていく...



亜希子への変わらぬ気持ちを背後に隠しながら、自分自身を

最低の人間へと変えていく...




きっと今日の亜希子の決断が僕を救うことになるだろう。



反面、それは同時に、かすかに感じた玲子へのトキメキを失う

ことを意味していた。



僕は何を考えているんだろう?


僕は何をしたいんだろう?




自問自答を繰り返しながら、少しずつ明るくなっていく外の変化を


僕は瞼で感じ取っていた。