かなり前の事になるが、念願の世田谷のぼろ市に行ったよ。

父が世田谷に居たので、以前から一度行ってみたいと思っていたのだが、とうとう父の生前には行けなかった。

少し後悔しとる。

この世田谷のボロ市の歴史は古く、1578年に北条氏政が出した楽市掟書により、小田原と江戸とを結ぶ宿場の一つであった世田谷の宿で始まったのが最初なのだそうだ。

先日、小田原城に行って、親しく北条一族と会ってきたが、あの時に会った氏政が、このボロ市の元祖だとは知らなかったね。
1590年に北条が豊臣軍によって滅ぼされた後は、世田谷城も廃止され、ボロ市も廃れていたが、近隣の農民たちによる歳末の市として存続した。

広辞苑によれば、【「襤褸（ぼろ）」

①使い古して破れなどした、役に立たない布、または着物。ぼろきれ、つづれ。

②隠している欠点・短所。また、失敗。】とある。

当時は農機具や衣料などの交換会で、古着などが主体だったため、ボロ市の名がついたらしい。

最盛期には2000店も集まったとのことだが、今回は750店ほどだそうな。

いや、わしが数えた訳ではなく、そう書いてあった。

玉川電車の世田谷駅で降りると、もう駅の近くから露店が並んでいる。

本来のボロ市通りは、世田谷通りの一本南の、代官屋敷のある通りなのだが、その通りを挟んでまわりの道は全て露店で埋め尽くされている。

この日は天気もよかったので大変な人ごみだった。

「人ごみ」と言っても「人」が「ゴミ」になっているわけじゃないよ。

通りは一方通行になっていないので、人類と人類との衝突が随所で起こっている。

こういう場合、不思議に左側通行をする人が多いね。やはり「人は右」というのは、人間の本性を無視した、進駐軍の強制規格なのかもね。

ここで、古書を二冊求めた。

一冊は昭和26年新興楽譜出版社が出した「日本名歌百曲集」、もう一冊は昭和21年東西出版社刊行の「アメリカ歌謡集」だ。

因みに前者は当時300円、後者は8円だ。

今回はどちらも一冊500円で売られていたよ。

「日本名歌百曲集」には、知っている曲が多いが、知っていても楽譜を持っていなかったり、歌詞がうろ覚えだったりのものもあったので懐かしかった。

中には初めての歌も結構あったよ。

「関の夕ざれ」という日本古謡の歌詞は

「鐘が鳴るかよ　撞木が鳴るか　鐘と撞木の　あいが鳴る」

といった、禅問答のようなものだ。

最近はコロナのせいで、開催も見合わされたと聞いたが、再開したら、また見に行きたいね。