プレイバック・和佳音 18
2014・9・28~愛媛・松山市~
全行程終了後、席に座って思った。いつもの定期公演とは違って、生誕祭っていいなあって。主役を思いっ切り祝福しようとするメンバーの思いがダンスと歌に乗せられて、ストレートに伝わってきたからだ。本当にうれしそうな笑顔、驚き、そして涙。すべてが、りっちゃんの表情に表れていた。そして、ファンも同様だった。いつも以上の歓声、りっちゃんコールを投げかける。この日が15回目の誕生日当日ということも大きかったのかもしれない。場内に響き渡る声が、すべてを凝縮していた。
だからこそ、後悔した。なぜ、和佳音の生誕祭に行かなかったんだろう…。開催された8月10日は、松山まつりに繰り出していた。大街道商店街と千舟町通りを、多くの団体が野球拳など、さまざまな踊りでわき上がっていたのだ。無類のお祭り好き。写真を撮る身としては、年に1回の楽しみなのだ。当時はAiCune、そして和佳音に、いまほどの関心がなかった。生誕祭と聞いても、ピンと来なかった。アイドルよりもお祭り。当時の優先順位は松山まつりだった。だけど、和佳音に興味を抱き始めたからいまでは、後悔の念が募るばかり。当日の写真や映像を見るたびに、ため息をつくのだった。
まあ、終わったことは考えてもしょうがない。サイン握手会が始まった。ステージには、長机の横に白いソファが運ばれていた。ほかの8人とは違う、りっちゃん専用の特別シートというわけだ。りっちゃんの前には、長い行列ができていた。そして、ほとんどの人がプレゼントを持って並んでいた。そうか、生誕祭だからか…。和佳音のことばかり気になっていた自分は持ってくるのを忘れた。というより、元々並ぶつもりはなかった。並んでいる人たちはりっちゃん推しの人がほとんどだと思えた。だから、何も考えることなく、和佳音の列に並んだ。
「横チンさ~ん!」。前回と同じように、和佳音は笑顔で名前を呼んでくれた。まあ、当たり前のことなのかもしれないが、推しの子に言われると、気持ちがいい。「来てくれて、ありがとうございます」。バカ丁寧にお礼を言われた。生誕祭って初めてだったんだけど、いいもんだね」。感想を言うと「梨紗が喜んでくれて、和佳音もうれしかったです」と笑った。手紙で言っていたけど、りっちゃんって変人なの?「梨紗ってヘンじゃないですか?でも、本当に楽しい子ですよね」。そう話す和佳音を見ながら「和佳音ちゃんの生誕祭に行けばよかった…」とボヤいた。そんな自分を見ながら「今度は来てくださいね」と言ってくれた。
この日は2回並んだ。ブログの話をした。昔の和佳音を知りたいと思って、和佳音の過去に書いたものを読んできた。和佳音ちゃんって、nanoCUNEにいたんだね。ブログを読んで初めて知ったよ。「そうなんですよ~」。AiCuneとは全然、歌もダンスも違うよね。「nanoCUNE時代も楽しかったけど、AiCuneも楽しいですよ」。そして、一番言いたかったことを告げた。和佳音ちゃん、ショートカットだったんだね。オレ、ショート好きなんだよね。「そうなんですか?和佳音って、ショート似合います?」。似合うと思う。だから、ショートの和佳音ちゃんを見たいな。「どうしようかな。考えておきますね」。ぜひ、お願いしますね。そう思った。
「横チンさん、梨紗の列には並ばないんですか?」。なんだか不思議そうな顔で、和佳音が聞いてきた。並ばないよ。「なんでですか?」。そう尋ねられたので即答した。
和佳音推しだから。
初めて本人に言った。その言葉に「うれしい!ありがとうございます!」と、本当にうれしそうな顔をしてくれた。写真を撮らせてもらった。その時、魚眼レンズをつけていた。顔が大きな、おもしろい写真を撮れる。レンズに顔を近づけて、笑って。そうリクエストすると、レンズから5センチもない超至近距離に顔を近づけてきた。ちょっと、近づけすぎ!ピントが合わないよ!そう思ったが、楽しそうだから、いいかな。書いてもらったサインの下には「ずっと和佳音推し~!」と書かれてあった。「横チン、またね!」。満面の笑みで握手してくれた。
和佳音推しを告げた時、和佳音の表情が明らかに変わった。いままで見たことがない、いい笑顔だった。ちょっぴり恥ずかしかったけど、あんなに素直に喜んでくれたし、言ってよかったなって思った。和佳音ファンは多いから、言われ慣れているはずだけど、やっぱりうれしいものなのかな。帰り道で、この日の公演を思い返していた時、気づいた。サイン握手会での別れ際に初めて「横チン」と言われたことを。確か、それまでは「横チンさん」と、ずっと敬語で言われていた。和佳音推しの1人として認められた証拠なのかな?まあ、勘違いかもしれないが、友達のように呼ばれたことが素直にうれしかった。