中3の娘は、いつも同じ服を着ている。
若い子は、とっかえひっかえ違う服を着たがりそうなものの、
うちの娘は、最近限られたTシャツしか着ない。
色も、黒と白とたまにグレーしか着ない。

見かねて、合いそうなものを勝手に買うと、
試してみるものの、
ちょっと丈が長いだの、お腹周りがもたついているだの、ロゴがカッコ悪いだの、
喜んだためしがない。
「なんか、ごめん」と、すまなそうにはしている。

一緒に買い物に行っても、そう簡単には買わない。
チャレンジしやすい安いお店だったとしても、何も買わないで出てくることはざら。
「あんまりいいのがない」、
「気に入らないと、絶対着ないからもったいない」と言う。

とにかく、好みの許容範囲が狭い。
自分が、本当にカッコいい(可愛い)と思うものしか着たくないらしい。
「いつも同じのを着てる」と思われることより、
「カッコ悪いの着てる」と思われる方がいやなんだそうだ。



そういえば私は大学生のとき、かたくなにズボンを履かなかった。
背があまり高くなく、下半身が太いほうだから、
パンツルックは、絶対に似合わないと思っていた。
「スカートばっかり履くのは、彼氏の趣味なの?」と友達から聞かれたこともある。
実際は、そんな微笑ましい理由ではなく、完全に自分の思い込みによるものだったのだが、
旅行のときも、海外短期留学のときも、決してズボンを履かないぐらい、
今思うと、かなり強固なこだわりだった。



40半ばを過ぎた今の私はと言えば、
逆に、新しい可能性を探したいと思うようになっている。
いつもパンツばかり履いてるから、ロングスカートを履いてみたい。
いつも同じショートカットの髪型だから、ちょっと伸ばして、違う髪型を楽しみたい。
いつもベージュのバッグだから、ちょっと色物も冒険してみたい。

そうは思いつつ、なかなかしっくりくるものを見つけられない。
結局、もとの自分の定番に戻ってしまう。
決して、なんでもいいわけではないのだ。

年取って、自分はこだわりがなくなってきたとか、許容範囲が広くなったと思っていたが、実は違うのかもしれない。
若い頃の自分探しが一通り済んで、
またニューバージョンの自分探しをしているに過ぎないのではないか。

そう思うと、
今まさに、自我を確立しようとしている娘と、
一周回って、新しい自分を見つけたいと思っている私。
やっていることは、同じかもしれない。
思い込みの強さも、親譲りだ。