お笑いって何だろう。
お笑いとは、観客を笑わせることである。
身体や言語を道具として、観客を笑わせることである。
こう書いてしまうと、お笑いとは、
「芸人がネタという情報を一方的に観客に伝えること」
と単に捉えてしまうかもしれない。
しかし実際は、お笑いとはもっと複雑なものである。
私はお笑いを
「芸人と観客とのダイアログ」
と考えている。
芸人はネタを通して観客と対話しているのである。
対話とは、ある状況の意味を互いに共有していることを指す。
まずはこのネタを観ていただきたい。
開始~0:40のみで十分である。
伊達「え、あの11時には行けると思います。今乗ればすぐ乗れば11時くらいに行けると思うんですけど。」
から始まるこのコント。
「みどりな窓口」の前で上司に電話している伊達。窓口の職員である富澤。
伊達は窓口でチケットを買おうとするものの、富澤に「隣の列にお並びください」というスタンドを置かれさえぎられ、最終的には2人で反復横跳びをしてしまう。(詳しくは見てください。)
この最初の時点で観客から笑いが起こっている。
この状況を「少し急いでいる伊達を富澤がスタンドによって遮っている」という意味として両者が認識しているのである。つまり、この状況の意味を共有しているのだ。
この瞬間、芸人と観客で対話が行われたといえる。
また、その状況に対して伊達は、
「フレンドパークか」
とツッコむ。
これは、TBSの番組である東京フレンドパークのアトラクションの1つであるネヴァーワイプアウトのことを指す。
さっきの状況を「フレンドパーク」と芸人が指摘したことにより、観客も言われてみればそうだと思い、その状況の意味が言葉によって分かりやすく共有されたため笑いが起こったのである。
この瞬間も、芸人と観客間には対話が生まれている。
しかしここで問題なのは東京フレンドパークを知らない人にとってはこのツッコミは笑えないということである。東京フレンドパークの意味を事前に芸人と観客が共有していなければならないのである。
しかしサンドウィッチマンがこのツッコミを取り入れた理由は、観客にとって東京フレンドパークの認知度は高いと考えたためだろう。
ここから分かるのはお笑いとは自己表現の場ではなく、観客にとっておもしろいものは何かを考え続ける試みであるということだ。
芸人が観客のことを理解し、ネタとしてアウトプットし、その意味が観客に共有されたときはじめてそれがお笑いのネタとして成立するのである。
お笑いとは、身体、言語という道具によって作られたネタを通して芸人と観客が対話する「芸人と観客のダイアログ」といえる。