令和6年度西之島総合学術調査結果概要について
<関東地方環境事務所同時発表>
令和6年9月2日~同年9月11日に「令和6年度西之島総合学術調査」を実施しました。
今般、その調査概要を取りまとめましたので、お知らせいたします。
<主な概要>
・ 火山活動に伴う大きな地形変化は見られず、また、火山ガスの直接観測を初めて実施。
・ 昨年は急激に減少していた鳥類が、今年度は生息数、繁殖数ともに回復していることを確認。ハサミムシが広域に生息することを確認。
・ 過年度に引き続きコケムシやゴカイ、八放サンゴのほか、新たにカイメン等の底生生物の生息を確認。変色水域の水質情報を連続観測。
・ 火山活動からの安全確保や環境攪乱の回避のため、無人航空機、陸上探査機、無人艇等を活用して調査を実施。
撮影した映像の一部を報道用に共通利用できるものとして提供しますので、提供を希望される場合は担当者まで御連絡ください。
背景・目的
西之島は、小笠原諸島に位置する孤立性の高い海洋島であり、火山活動により極めて人為的影響の少ない自然環境が存在します。環境省では、平成25年以降の火山活動の影響を受けた西之島の状況を把握するため、令和元年9月に上陸し、鳥類、昆虫、植物等に関する調査を実施しました。
しかし、令和元年12月以降の火山活動により、生態系が維持されていた旧西之島の全てが溶岩若しくは火山灰に覆われ、新たな大地が形成されました。
生物相がリセットされた状態となったことで、西之島は、原生状態の生態系がどのように遷移していくのかを確認できる世界に類のない科学的価値を有しています。
そこで、環境省としては、人為的な影響を可能な限り与えないように配慮しつつ、西之島における生態系の変化や噴火の過程等自然の遷移をモニタリングすることで、海洋島における原生状態の生態系の成り立ち(一次遷移)を解明することを目的として、総合学術調査を毎年実施しています。
なお、本調査によって得られた知見は、西之島における自然のモニタリングや保全に役立てていくことを想定しています。また、新たに開発された調査技術は、西之島に限らず様々な地域の自然のモニタリングや生物資源の保全等に寄与していくことを期待しています。
調査内容及び結果
西之島は山頂火口から概ね1.5kmの範囲に噴火警報(火口周辺)が発令されており、上陸して調査することが困難であることから、無人航空機(UAV)や陸上探査機、無人艇 等を活用した遠隔調査を実施しました。
内容としては、(1)陸域生態系調査、(2)地質調査、(3)海域調査を実施しました。
現地調査には以下の専門家が参加しました。
・ 川上 和人(森林総合研究所 鳥類調査担当)
・ 広瀬 雅人(北里大学海洋生命科学部 浮遊生物・底生動物調査担当)
・ 黒田 洋司(明治大学理工学部 探査機担当)
・ 加藤 恵輔(明治大学理工学部 探査機担当)
・ 川口 允孝(東京大学地震研究所 地質担当)
・ 森 英章(自然環境研究センター 陸上節足動物調査担当)