流出した文書で明らかになった、ロシアが“米国なしでは戦争を継続できない”切実な理由
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ロシアのドローンなどからは、米国製の半導体が多数見つかっている Photo: Sergo2 / Getty Images
現代の戦争に欠かせないのが、半導体だ。
スイスメディア「SRF」のインタビューで、オスロ大学の軍事専門家ファービアン・ホフマンは、「ライフルよりも大きな兵器システムには、ほぼすべてにデジタル部品が搭載されている。
どこかに必ず半導体が存在するということだ」と述べる。
【画像】ロシアが導入を躊躇う中国製の軍事装備 つまり、兵器の性能は半導体の性能に大きく影響され、充分な性能の半導体がなければ、ミサイルやドローンなどを用いた高度な戦術は不可能ということになる。
西側諸国と敵対し、ウクライナとの戦争を続行しようとしているロシアだが、この半導体に関しては、西側諸国に依存していることがわかった。
皮肉にも、ロシアの戦争は西側諸国なしでは継続できないのだ。
米国頼みのシステム
独紙「ビルト」が入手したロシアのIT企業「NPO VS」の内部文書によると、ロシアのミサイルやドローンの発射システムの大半には、インテル、AMD、エヌビディアといった米国の巨大IT企業製の半導体が搭載されている。
ロシア軍はこれに懸念を抱いているが、ロシアの技術はこの分野で少なくとも10年は遅れているため、すぐに打つ手はないという。
あるロシア軍高官の発言が文書には記されている。「ロシア製の半導体は、性能とエネルギー効率の点で競合製品に劣り、価格も大幅に高い」
制裁の効果と抜け道
西側諸国は現在、このような技術をロシアに販売しないという制裁をおこなっている。
内部文書でロシア軍高官も懸念する通り、この制裁は一定の効果を出してはいる。
しかし、抜け道は存在し、西側諸国からの半導体の供給が完全に途絶えたわけではない。
ホフマンは、「これらの製品はまずトルコ、マレーシア、タイ、中国といった第三国に送られ、そこからロシアへ流入している」と説明する。
また、家電製品用の半導体を兵器に転用した例も見られるという。
ただ、この抜け道には代償が伴う。
迂回をすれば必然的に納期の延長とコストの増大が起こる。
民間製品用の半導体が想定外の使われ方をした場合、その性能を充分に発揮できないこともある。
つまり、制裁には100%の効果はないものの、ロシアはじわじわと消耗しているのだ。
「グラスの水が半分なくなったと見るか、まだ半分も水が入っていると見るか、とらえ方によって制裁の評価は変わる」とホフマンは述べる。
COURRiER Japon