オリンピックで日本人の華々しい活躍が伝えられる一方で、パキスタン・カラコルムの世界第二位の高峰K2(8611m)西壁に挑んでいた平出和也さん(45)と中島健郎さん(39)のパーティが7月27日に滑落したというニュースが伝えられ、救助のヘリが二人の姿を確認したものの標高と斜面の角度の関係で着陸できないと・・・
しかし、場所がわかってるならなんとか生還して欲しいという願いもむなしく、3日後、所属する石井スポーツは、二次災害の怖れもあり地上からの救出も困難で、滑落以降の両名に動きはなく残念ながらご家族同意のもと、救助活動を終了することを決定したという報告、奇跡は起こらなかった。
オレが68歳になってそもそもの山登りを始めたきっかけがNHKでやってた「100名山一筆書き」グレートトラバースという番組を観たから。
田中陽気という若者が人力だけで、南は鹿児島県屋久島から北は北海道利尻島まで全国各地に広がる数々の名峰、日本百名山を歩いて、海上はシーカヤックで横断するという物語は、オレも故郷の山に登るという忘れ物を取りに行くには十分の動機になった。
彼が険しい山道を駆け登ったり、次の山までの国道を走ってるのを楽しんで観ていたが、そのうちこれを撮ってるカメラマンがいるんだろ? 雪の斜面をあえいでる主人公をヨコから捉えたり、先回りして陽気の姿を写して、NHKにも山岳部出身の優秀なのがいるんだろうなぐらいに考えていたが、ある時それが平出和也という登山家兼写真家で、むしろ田中陽気よりスゴイ人だと知ってびっくり。
黒部の十字峡や冬の屋久島の永田岳など数々の映像、去年は再放送だったと思うが、二人でカラコルム・シスパーレの未登頂ルートに挑んだNHKBS1スペシャル「銀嶺の空白地帯に挑む~カラコルム・シスパーレ~」を観て 、あんな壮絶なところを慎重のうえにも慎重を期し、危ないと思ったら決して突っ込まず やっぱりホンモノは違う、二人に限って遭難と言う文字はないと思ってただけに、ニュースを聞いて どうして・・・
この写真はシスパーレ登頂後、2日間かけて降りてきて、地元のレイをかけてもらって祝福を受けてる一枚、左が平出和也、右が中島健郎。 @石井スポーツ
オレのような2000mそこそこの山登りにゃ関係ないハナシだが、登山家や冒険家のあいだには「43歳の壁」という言葉があって、多くの冒険家が四十三歳で遭難するのは決して偶然ではなく、経験の拡大に肉体が追いつかなくなりはじめる年齢であるからと・・・
植村直己、長谷川恒男、谷口けい、河野兵市、星野道夫みんな43歳で遭難死しているという。
平出は45歳になり、魔の43歳の壁は越えたと思ってたのにな。
ヒマラヤの万年雪の上に、満月の光りに照らされた二人が横たわってる姿が目に浮かぶ・・・合掌。