色の褪せたあじさいなど眺めながら、新札発行のニュースを他人事のように聞いてるが、20年前の新券発行の時はかなりバタバタした覚えがある。

 

 

我が方など自販機で使う紙幣識別機を作っていたメンバーは、事前にしかるべき場所で新札を提供されてデータ取り、新しいデータを組み込んだプログラムを すでに設置してある券売機や各種販売機に入れ替え作業、大手飲料水メーカーの機械などは ケーブルを繋いでチュッとやれば新しいのが上書きされるのに、ウチのはロム交換という原始的手法だった。

 

お客の営業マンが、一台一台新しいプログラムを書き込んだロムと差し替えるわけだが、入れ替え中にロムの足が曲がった、反対に差したなどのトラブルは日常茶飯事、全部終わったと聞いたのは、新札発行から三ヶ月くらい過ぎてたんじゃないか?

まあ、すぐに新札が出回るワケじゃないからと鷹揚な時代だった。

 

 

 

古い機械のフタを開けてみると 40ピンのロムのアタマにオレのミミズの字で93年?

これは多分試作のロムで、ホンモノはちゃんとシール印刷してたが、もう30年以上前のハナシやないか。

 

 

 

そもそもは、もっと前のインベーダーゲームが流行っていた頃、1000円札の識別機があればもっとハカがゆくと頬にキズのあるような人達に頼まれ、アメリカ製のドル識別機を買って来て分解、まだ日本にはそのようなものがなかった時代だ。

ドルも日本の札も磁気インクで印刷されていて、その磁気の強弱を テープレコーダーに使われてた磁気ヘッドの下に通して電気信号に変え、あらかじめ記憶しているデータと照合して真贋を見分けるという理屈だ。

 

 

しかし1000円札といっても、ピン札から折り目の入ったもの、しわくちゃの札、果ては洗濯機で洗ったようなものまで千差万別。それに多分、各地の造幣局によっても印刷の濃さが違ってたんじゃないか?それら、何百枚という千円札を集め 磁気ヘッドの下をくぐらせてデータ取り。表、裏 順方向、逆方向の4種類の上に 札を16ブロックに分けてそれぞれの箇所のデータを取るため毎日パソコンとにらめっこしながら、それでも夢中でやってた日々はおもしろかったな。

 

 

日本人というのは生来キマジメなのか、偽札でどうこうという経験はないが、一度だけカラーコピー機というものが世の中に出てきたときに、関西の銀行でそれを使った大量の偽札が見つかったという事件があった。

大阪府警に業界の十数社が呼ばれ、各社カーテンで仕切られたスペースで手袋と犯行に使われた”ホンモノ”のニセ札を渡されてデータを取って参考にしろ?はるばる持ち込んだパソコンでチェックしたり持ちこんだ機械に通したが 見事にシャットアウトして、どうだオレが作ったプログラムは!と胸を張ったな。

 

 

TVを見てると、札を使う人はますます少なくなり、新札発行もこれがサイゴになるかもしれないと・・・

めまぐるしく移り変わる世の中をヨコメに、「そこに座ってるとご飯が出てくると思ってるの?」とマゴに言われながら、ウルセ たまには勉強しろ、とやりあってる静かな毎日だけどな。