先月の尾瀬行きと同じように3時起きし関越道をひた走ってると 夏至を過ぎたばかりの空はもう明るみ上州の山なみもくっきり浮かび上がって、月曜のテンクラ予報もA、今日は梅雨の晴れ間の絶好の登山日和になりそう。
夜来の雨に濡れた道路を横浜から2時間15分、
5時半前に谷川岳ベースプラザの駐車場にクルマを滑り込ませて ここまでは速いけど、これからは超スローペースだからな。
青空ものぞき登山靴に履き替えて いざ出発!
オレだってアンタに出会いたくない!
ヤマボウシや、
山あじさいを眺めながら、多分辛くなるだろう山歩きのモチベーションは二つ。
今まで谷川岳に6回登って、どちらも1回だけお目にかかったショウキランとムシトリスミレに もう一度逢いたいな~と・・・
↑葉緑体を持たず菌類に寄生する腐生植物で、咲くのは1週間ほどといわれるショウキランは幻のラン?
一昨年に偶然に出あい、去年も同じ頃に出かけたが影も形もなくて 肩の小屋の主人に尋ねたところ「温暖化の影響で今年の花は例年に比べて2週間は早いです」
じゃあ、ってんで今年は梅雨の晴れ間を狙って去年より2週間早めの昨日、どんな花も見過ごすまいとキョロキョロしながら行くと濡れた斜面にイチヤクソウ?いいぞ、この調子・・・
西黒尾根の登山口をやり過ごして20分ほど行くと、
マチガ沢。
山頂は雲に隠れてるが、今日の晴れてくる予報だ。
6時、山頂目指していざ・・・
ヤマブキショウマ
それでなくても滑りやすい蛇紋岩、今日はよほど注意して歩かないとな。
昨夜の雨のためか道は沢と化して、
ゆっくりゆっくり 急ぐ旅じゃない。
会社の先輩だったデビッドさんに教わった金科玉条「ゆっくりゆっくり」を言い聞かせて・・・
ゆっくりだって、いつかは必ず着くってもんだ。
あの人は、オレより一回り上のイノシシ年。今年90歳になると言うのに富士山の上の宿を予約してあるって言ってたけど、予約すると天気に関係なく行かなくちゃならんしな~。
沢を渡ろうとフト観ると、
山葵のような葉っぱだけど、このキイロい花はなに?
カラマツソウ
日が差してきて暑い。
Tシャツ一枚になり、こんなことならゴルフと一緒で下も半ズボンにすればよかった。
苔を押さえ、
そっちダメね。
瓦礫の山の道の上を歩き、
振り返ると白毛門が見えたが、これが見納めとは思わなんだな。
山頂方面も雲の中。
第一見晴し到着。予定では1時間のところを12分遅れ。
自分の中では頂上までを4つに区切った4分の1の地点。
第二が西黒尾根と合流するガレ沢の頭、第三がザンゲ岩。頂上まで4時間で行ければ御の字だ。
ちなみに第二とか第三の見晴らしはない。
深山幽谷のオモムキだけど、やはり温暖化の影響?で マチガ沢の雪渓は去年より2週間も早いのに雪が少ない。
よく眺めると、アレは滝か?
へ~、この滝も 人差し指をチョンチョンと振ってマボロシ~~!!!?
ヒザ上までの草や羊歯を掻き分けて行くらズボンは濡れ、下ばかり見てると頭をゴンッ。
時々風が吹いて木の枝のしずくが落ちてきたが、今度はホンモノの雨?
丁度疲れたし、すぐやむだろうと大きな木の下で雨宿り。
全体的に暗くなってきて、なんだよ今日は晴れじゃないのかよ!
マゴのおやつのポッキーを食べながら待っても止む気配ナシ。
ソフトバンクのスマホは繋がらず 天気予報も見れない。
そのうち木の下にいても濡れるようになってきたのでリュックカバーをし、念のためと上だけは持ってきた雨ガッパを着たけれど、ズボンは持ってこなかったからな~。
ちょっと一休みのつもりが 30分、40分経ってもやみそうもなく、こうしてたってしょうがない。
行くか・・・
8時20分 restart
恐怖の崩壊地を 滑ったら一巻のオワリと超慎重に渡り、
振り返ってフ~~。
反対側は雲の中。
両手で鎖をワシ掴むみして力技でよじ登り。
鎖は補助的に使えと言われても 背にハラはかえられない。
雨は相変わらずしょぼしょぼ降って、テンションダダ下がり。
これでショウキランでも咲いててくれれば、元気復活なんだけど、
一昨年に見たブナの木と同じような場所の根元を 目を皿のようにして捜してもないものはナイ。
もう、イッソ引き返すか。
でもまたあの崩壊地を通らにゃいかんし、西黒尾根から引き返すというのも怖い。
この木の枝で 骨を拾う箸を削ったり棺おけを打つ釘を作ると言うタニウツギのピンクの花。
縁起でもねぇ・・・
オッ、これも逢いたかったユキワリソウの花。
今までてっきりハクサンコザクラだと思いこんでいたが、ハクサンコザクラは中心部のキイロの周りに白いのがないのだそうで、しかも春先に騒いでいた「雪割草」とは全くの別種であちらは漢字表記。なんでもカタカナで書けばいいってモンじゃないな。
9時16分、丁度半分の地点と目論んでいた ガレ沢の頭に到着。西黒尾根方面からもダレも上がってこない。
ここから先、1時間が一番キツイところだが、まあ、モノは考えようよう ショウキランに早かったということは 虫取りスミレには丁度良い時期なんじゃないかなと気を取り直し、
オッ、ニッコウキスゲ!
一番キツイけど、一番花に出会えるところでもある。
ガレ沢の頭の目印も霞んで、
ウラジロナナカマド
キイロの矢印がなかったらゼッタイに迷いそう。
イブキジャコウソウ。
いつもヘンな香り・・・
しかし注意して慎重に歩けば、いくら蛇紋岩といっても滑ることはないんだな。
去年は 不用意に歩いて3回も滑り、ヒジや手のひらに擦り傷を作った。
パットも、こんなもんとバカにしないで慎重に用心深くやるに限る。
がけっぷちでは、麝香の香りをふりまき、
ダイモンジソウみたいだけど、
こんなテンテンがあったか?
露を帯びたウラジロヨウラク。
なんとかイチゴ
キイロの矢印を頼りにエッチラオッチラ。
なんだ?
ダレかの忘れ物か、それともそこらへんにオッコチしてる人がいるのかも・・・
うしろから二人連れがやってきて、どうぞと先に行ってもらいながら
今日降るって言ってました?と聞けば、
「出かける時のテンクラじゃそんなことありませんでしたけど、谷川岳じゃよくあることですよ」
そうなの?
それにしてもデカイ荷物ですね~と聞くと、谷川岳の先の避難小屋まで行って泊まるんだと。
相変わらずの曇り空だけど、雨は上がった?
づ~~と昔に、氷河が削った痕だという岩にカエルが一匹。
ホソバウスユキソウ
これも見たかった花で、さすが花の百名山と言われる谷川岳。
さっきのアンチャンの姿が尾根に浮かび、
エビネチドリ
雪渓をバックに咲くユキワリソウと
ホソバウスユキソウ
ミヤマキンポウゲの咲くザンゲ岩を過ぎたところでイップク。
難所を過ぎ、4分の3まで来て もう一息。
エネルギーをチャージして、
アカモノ
実が赤い桃がなまって付いたと・・・
コイワカガミ
これを過ぎりゃ、もうすぐ山頂。
そのまえに雪渓が少し残っていて、
谷川岳の象徴みたいなケルンを見上げると、少し青空がのぞいてきて、ちょっと動画でも・・・
新潟の山も雲の中から浮かび出て、
振り返って見る肩の小屋とケルン。
ロープウエーから天神尾根を上がってくる人も今日は少なめだったが、お互いに撮りっこした夫婦連れをあとに この先のオキの耳と もう一つ先の奥の院までムシトリスミレ探し。
去年はここでギブしてユーターンしたけど、今日は雨のお陰か幾分涼しくて写真じゃダウンのチョッキも着てるし、身体ももう少し持ちそうだ。
それに雲や霧で先が見えないというのも、まだあんなに遠いのかとか思わずにいれて案外良いのかもしれない。
競走馬でもシャ眼帯をして、思わぬ好走 ということもあるしな~。
オッ、さっきの兄ちゃん達。
肩の小屋で一休みしてた?
兄ちゃん達に教わった 関越トンネルの通気抗が小さく見える。
だれか煙突掃除に行くんだろうか?
ハクサンイチゲが咲き、
ツマトリソウ
そうしてオキの耳も通りすぎて、7年前にムシトリスミレを見た奥の院に向かって・・・
ウサギギク
いたッ!
ムラサキ色の小さなスミレに似た花がうつむきかげんに咲いて、来た甲斐もあったってもんだ。
スミレと名は付いてるが スミレとは類縁は遠いという。
食虫植物は環境の厳しいところにしか咲かないというから、谷川岳のここらあたりも相当な場所だということがわかるな。
ちなみに、葉の表面が細かい粘液がついた繊毛で覆われていて、そこにくっついた虫を栄養にするということだが、試しに葉を触ってみたけど、まだサラサラしていて粘液は感じられなかった。
その先の鳥居をくぐって振り返って見た図。
祠にお賽銭をあげ、12時半到着。
6時に出発だから 延々6時間半がかり。
もっとも雨宿りに時間を費やしててからな。
オニギリを食べて、辺りを見回してから さあ 帰るか。
ジョウエツキバナコマノツメ
帰り道、もう一度ムシトリスミレに別れを告げて、
よい時に出会えたな。
バイバ~イ。
ミヤマオダマキのツボミ。
なにもかもピッタリというわけには行かない。
ゴゼンタチバナ
ユキワリソウの群落。
ちっちゃなマイズルソウ
ケルンと雪渓が見渡せる谷川岳に別れを告げて、あとはエッチラオッチラ下るだけ。
今頃になって晴れてきて、下界は暑いだろうな。
涼しい山の上じゃ もうアカトンボが飛んで、
クワガタのメス?
ショウキランの代わりのギンリョウソウも見て、
もう一息でゴールと言う手前で追い越してったオジサンに 雲がかかってるアレが谷川岳ですよね、と確認すると
「登らなかったんですか?」
いやいや登りましたよ・・・10時間がかりで。
ロープウエーに乗ったのが16時09分。
途中の湯テルメ谷川という日帰り温泉で汗を流し、赤城SAでラーメンとギョーザを食って出たのが18時15分。
19時59分には家に帰り着いて、クルマに乗りゃこっちのもんだけどな~。