一番日の長い夏至の昨日、3時起きして関越道水上インターを降りれば、真ん中に見える相耳峰の谷川岳の猫耳が早くも輝いて、絶好の登山日和やないか。
ここの天気予報は今日をはずせばずっと曇りや雨、来た甲斐もあったというもんだ。
谷川岳ベースプラザにクルマを滑り込ませ、身支度を整えて車両通行止めの林道を行けばヤマボウシ。今年は、あっちこちでこの花を見かけるな。
日本三大急登の一つと言われる西黒尾根の登り口で、背の高い青年が写真を撮っていて”ここから行く?”と聞けばうなずき、”オレはもう少し奥の巌剛新道から”
その道を知らなかったらしく”途中でこの道と合流するんだよ”と知ったかぶりをすれば
「じゃ、またどこかでお目にかかれますね」
まあ、ムリだと思うよ。オレは超スローペースだから・・・
4年前に西黒尾根から登り、途中で右下から登って来る巌剛新道の合流をみて、こんな恐ろしげな道は一生縁がないと思ってたのに、ひょんなことからかなりそそられる登り口を発見してしまい、今日がこの道3回目。
マチガ沢から頂上が見える。
前にここを通る電気自動車のガイドさんに、ここから頂上が見えるのは年に60回くらいと聞いたが、今日はその貴重な一日か?
すぐ脇に登山口。なにやら注意書きみたいなのがぶら下がっていて、ざっと読むと 不安なヤツは行くな?
いまさら、止めろと言われてもね~、で、6時スタート。
すぐに巌剛新道の標識。これが現われるの、こんなに早かったか?今日は調子がいいかも。
昨日のゴルフは 山登り前の何時ものようにカートに乗りまくって足を残したからな。
アジサイに似たオオカメノキ。あくまでもオは二つ。
沢沿いにピンクのタニウツギ。
この木の枝で箸を作り骨を拾ったとか、棺の蓋をする木釘を作るとか 地方によっては忌み嫌われる木でもあるらしいけど。
右側からはマチガ沢の雪渓の下を流れる雪解け水の音、左の森はハルゼミや もうヒグラシの鳴き声?
ツクバネソウ。
木の覆いが取れて、こういう景色が見渡せると疲れも吹っ飛ぶ気分だけど、まだ大分あるな~。
しかしここ、こんなに瓦礫が多かったかな?それとも去年あたりの大水で流されてきたものか?
第一見晴らし、到着、7時10分。
頂上までを4ポイントに分け、それぞれを1時間と見てるが、第1ポイントとみなしてるここまですでに10分遅れだけど まあ想定内。それどころか、去年はもうバテバテでここで引き返そうかと弱気のムシがおこったところ。それに比べりゃ上出来やが。
マチガ沢の全景が見渡せる、巌剛新道ならではの絶景ポイント。
トマとオキの耳も尖って見えるけど、遠いな~。
反対を振り向けば、前に登った白毛門。
あれか~、まだあるな。まあ一歩一歩こうやって歩いて行けば、いずれ辿りつく。
人生も同じだ。京都で4年間、オレが人生の夏休みと呼ぶ時間を過ごしてから ずっと一歩一歩やってきて、
いよいよこれからは、ロングバケーションに入るというわけか。
しかし、休みというのもオワリがあるから楽しめるんであり、ずっと休みというのもナンだな。
あっ、アサギマダラ!
かなり大き目の個体だったが す~~と行って行ってしまった。もう帰らない~
マチガ沢の雪渓も、随分上のほうに見えるようになって来た。
この道もいよいよ難所にさしかかって、鎖をひっつかみ
鉄ハシゴをよじ登れば、
癒しのユキワリソウ。
この崩壊場所は毎年通るが、この日はちょっと恐怖を覚え、イザという時のためにしっかりロープを掴み山側に身体を寄せておそるおそる・・・山に登っていて、怖さを感じるようじゃそろそろかな。
白とキイロのタカネニガナ。
コイワカガミ。
やっと第2ポイントと勝手に思ってる 西黒尾根との合流地点。8時50分。
途中で休み休みきたからな~。
なんか、またぶら下がってるので振り返って見たら、
こんなのがあるからダレも通らないのか、ここまでダレとも逢わず。
しかし、この合流地点に来た途端に西黒尾根から上がってくる人達に遭遇して、ヤッパリ月曜日とは言えみんな晴れるのを知って来てるんだろうな~。
ミヤマキンバイ。
西黒尾根に合流し、ちょっと登ったところから見下ろしてる図。
真ん中あたりが合流のガレ沢の頭。
ホソバヒナウスユキソウ。
コバイケイソウ。
雪渓をバックに、ユキワリソウ?かハクサンコザクラ?
どっちかでマチガイなし。
大分来たな~、もう一息だろ。
マチガ沢の雪渓の頭の部分も一応、オサエテ。
向こうに見えるのは、尾瀬の山か、那須の山か・・・
10時過ぎに第三ポイントのザンゲ岩を通過し、もう一息。
頂上下に残る雪渓。上に この山のシンボルの標識が見える。
ロープの右側の汚れている雪の上を、フミアトの上に靴を重ねて上がり。
トマの耳 到着、10時50分、延々4時間50分。
あっちに見えるのが、もうひとつのオキの耳。
その途中にハクサンイチゲの群落。
1963mと1977mという2000mに満たないこの山の人気の秘密が、このたくさんの高山植物、花の山。
昔はたくさんの遭難者をだし「魔の山」と怖れられてたが
「魔の山なんて誰が言う。味わい深し谷川岳」
頂上直下の肩の小屋で売ってるTシャツにプリントされている。
さあもう少しと、登りの坂を見上げると、背の高い人が降りてきて、お互いじっと顔を見つめて アッ!
「また、お会いできましたね」
”オレも随分ゆっくりだったけど・・・”
「ええ、私もゆっくり来ました」
ついにオキの耳に到着。
ここまで来たら もう一歩足を伸ばして3年前に見た、虫取りスミレ探しをするか。
ノビネチドリ。
コイワカガミの群落。
キバナノコマノツメ。
チングルマも・・・
だが、奥の院の手前の斜面を目を凝らして見ても 紫色の花は見当たらない。
花に詳しそうな人に聞くと、1週間前に終わった?今年の花は早いそうで、花も1週間たつと変わりますからね~って、そんなもんかいや。
こちらはヒメイワカガミ。
ヒメだからね。
水は、凍らせた500mlを1本と600mlの麦茶のペットボトルを持参。
凍らせたほうに 麦茶を注いで少しづつ飲んでいたが、暑さでこころもとなくなり肩の小屋で仕入れて行くか。
と思って、いっけね~、お金少ししか残ってないや。水買ったらロープウエーに乗る金がないぞ!
2000円持って、水上を降りたセブンでオニギリとバナナとスニッカーズの小さいのとエネチャージを買って・・・
ポケットを探って小銭を数えると、持ってたのと合わせて千円チョイ?
水400円!
ロープウエイ代は、どうしたって千円以上したんじゃなかったっけ?
だけど、背にハラは代えられないよな~。
水を一本買って、あとはどうとれもなれ。
ロープウエイの係り員に、駐車場のクルマまで行けばあるから乗せてと頼み込むしかね~な。
まさかダメとは言わんだろ。ロープウエイのところを歩けとか言われたら警察に駆け込むぞ。
帰りは、天神尾根を下ってロープウエー。
とりあえず、肩の小屋直下の雪渓をまた慎重に降り、
振り返って一枚。
アカモノ。
つねずねヘンな名前だと思っていたが 赤桃が訛ったものと聞き納得。
ゴゼンタチバナ。
南アルプスのものと比べると、花の大きさが半分くらいだな。
随分、降りてきた、ザンゲ岩が見える。
ウルシみたいな葉っぱだけど、ナナカマドか?
あった!ウラジロヨウラク。
このまえ、天子ヶ岳で見損なった花をここで見るとは・・・
ロープウエイのことで、疲れを紛らわしながらずんずん降りてきて
あそこに登ったんだ。
下りに3時間かかって、ロープウエイの人にワケを話せば、あっさりと「下の売り場で払ってください。」
途中で出会い、ワクチンのことをいろいろ教えてくれた医療従事者の山ガール、大きなカメラに三脚持参の老カメラマン、花のウンチクを傾けてくれた人、みんな優しく親切な人ばっかりで、この世の中も捨てたもんじゃないな。