ジョイナス地下の有隣堂で、マゴの漢字練習帳と一緒に買った新田次郎の文庫本「山の歳時記」という随筆集。

戦前 厳冬期の富士山の頂上で 中央気象台(のちの気象庁)職員として観測に勤め その体験などを元に小説家に転じたとまでは知っていたが、彼の書いたものを読むのは初めて。

 

夏の山頂の落雷によるブラッシュ放電のハナシや、冬に女と別れた自殺願望者が登ってきて、「泊めてくれますかね」と尋ねたブロッケンの妖異のハナシなど、なかなか興味深かったが、なにしろ書かれたのが昭和40年代前半、今から50年以上前のことで 中でも下の一節、

 

「富士山ほど夏と冬で、そのたたずまいが変わる山はない。夏の間はだれだって登れる平凡な山で、四、五歳の子どもから七十歳近くの老人まで登る・・・」

オイオイ、50年前は七十歳近くなると、すでにリッパな老人の仲間入りかよ!

 

まだ谷川岳が魔の山と怖れられ、年間何人もの人が遭難死していた時代、登山ブームが始まりかけて 生徒を引率の先生が飲んだジュースのカンをポイ捨てしてるのを嘆き、南アルプスの上河内岳、茶臼岳に畑薙大つり橋の脇から登ったときには、絶妙な紅葉を絶賛しながら

「もうすぐここにも山のブームが押し寄せてきて自然が山靴に踏みつけられ 滅亡してからでは遅い」と保護の警鐘を鳴らしている。

 

そんななかで興味深かったのは「臭いハナシの語源」

ハナシがビローなので、ここからはマスク着用して読んでくだされ。

 

山に登る人の隠語で、山で用便することを「キジを撃つ」という。戦前からの言葉か戦後に作られたか、また語源はどこから来たのか知らないというような意味のことを 新田次郎はある雑誌に書いたところ全国から数十通の手紙が寄せられたそうである。

 

狩猟家の一人は「キジを撃つというのは 古くから猟師の間で使われいたもので野外で用便するという意味、猟犬に追われて飛び立つキジは 精神的緊張から空中で必ず脱糞する。このキジの習性からヒントを得たものだ」と・・・

 

別の猟師は、「キジを撃つ場合に、草むらの中に長いあいだしゃがみこんでる格好が用便の際の格好に似ているからだ」と・・・

 

女性の場合は「花を摘む」というキレイな隠語があり、戦後派女流登山家の創作だそうだが、これもその格好が似てるからだろ。

 

まあ、ほとんどがキジを撃つ場合の待ち姿勢の相似からきているという説の多い中、まったくの異説があり、その手紙の主は昭和の始めごろ朝鮮で軍務に服していた経験のある人で 部隊が演習で山間地に行き 便所を掘った場所は疎林のずっと続いた山の中腹。キジの多いところで人を怖れるでもなくすぐ近くまで姿をあらわしていたと。

 

キジを撃つという言葉は、血気盛んな兵隊達がこの山の中の便所で放つ砲屁(放屁ではない)の音に驚いて逃げたことによって兵隊達に用いられるようになったものである。

その部隊の兵隊達が帰郷後に吹聴したのが、登山家達のあいだに広がったものではないかと思われる・・・

 

さて、一体どれがホントの語源であろうかと新田次郎は結んでいるが、ちょっと胡散臭くておもしろいハナシだろ?

まあ山奥深くまで道路やロープウエーが整備されて、70歳過ぎても谷川岳や南アルプスに登れるような時代が来たことを彼は どう思うんだろな~。

まあ、山のマナーに関しちゃ あの頃と違い随分と良くなってると思うけどね。

 

 

 

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