赤石小屋からの雲海、左 聖岳 真ん中に兎岳の△の耳が一つ、右が赤石岳。

 

 

というわけで、三連休前日に休みをとって三泊四日の南アルプス赤石岳登山は

金曜10時半、静岡駅集合。

 

東京、大阪、福岡からオバサン以上が7人、オジサンが4人の計11人集合、

他に添乗員とツアーガイドの13人でGO!

中に70歳を越えた夫婦がいて、なんとこの赤石で100名山を達成するんだとか。

なんで赤石岳がサイゴか?と聞けば この廻りの山には登ったが 

ここは天候に恵まれず後回しになった・・・天気ダイジョブかな~?

 

 

 

静岡駅でウナギ弁当を買って旅行社のバスに乗り込み

途中で弁当食ったりトイレ休憩しながら、安倍川、大井川を遡り

中継地点の畑薙ダムまで、聖に登るグループと一緒に4時間揺られ、

あちらの若いツアーガイドが、「山では金がものを言う、重い水を担いで上がるより

山小屋で金を出せばいくらでも買えますから、荷物だって1g1000円で請け負います。

今時 ゴールドだって1g5000円しますよ、それに比べりゃ安いもんでしょ」

と言うのを笑って聞いてたんだが・・・

 

 

一般車はここまで、という畑薙ダムの駐車場から専用バスに乗り換えて もう1時間。

この道がひどいガタガタ道。上下左右に揺れ、窓にアタマをぶつけないように気をつけ

途中で落石を運転手と添乗員がかたずけながら、

 

 

山奥の椹島(さわらじま)ロッヂというところに到着。ここで一泊目。

リニアモーターカーを造ってる人達の宿舎にもなってるらしく、

もっと下では入らない携帯の電波がとどくんだと。

 

 

夕食時に配られた翌日の昼の弁当はアルミのパックに入ってたが、

山を降りるまで 食い終わったゴミを持ち歩かないようにと 

みんなサランラップをもらって、中身をオニギリにしだした。

オレはチャーハンみたいな炒めメシなんか、どうせ胃が疲れて食えないだろと

半分だけマネして握ったけど、結果はそれもノドを通らず・・・

 

 

翌朝の食事、さあ行くぞ!

 

 

 

この山一帯は 帝国ホテルを造った大倉喜八郎が買って製紙会社を興し、

いまだにその影響下にあるらしく、専用バスのウシロにも名前が入り、

登山口の手前に彼を顕彰する碑があった。

なにしろ、明治時代のことらしいが80歳過ぎてから、カゴに担がれて頂上に登ったというからな。

 

 

 

初日は1500m登って赤石小屋まで4.5km 6時間半の予定。

 

 

大倉喜八郎の名前をとった大倉尾根は、ほとんどが樹林帯。

 

 

♪ 最初の階段上がる~

 

いよいよかと、期待に胸をふくらませながら上がったときには

降りてくるときの、あんな姿は想像できなかった。

 

 

 

服装調整する休憩もあって、快調に五分の一通過。

 

 

ギンリョウソウぽいけど、秋に咲くのやモドキがあるからと添乗員。

 

 

 

みんなツアー慣れしてるらしく、もくもくと先頭のガイドのあとを付いて登ってゆく。

オレは写真を撮るたびに遅れ、最後尾の添乗員に「さあ行きましょ行きましょ!」

とせかされ?小学校の時の林間学校で チョウチョを獲る網を振り回して遅れ

先生にしかられた時と一緒だな。

 

 

花の写真を撮るにも歩きながら 構図もへったくれもない。

 

 

「これはカニコウモリです、葉っぱがカニやコウモリに似てるから」とガイドさんが説明すれば 

大阪のおばちゃんが「どっちかにすれば?」

カニとかコウモリじゃ紛らわしいヤロ!あっカニが咲いてるとか・・・

 

トリカブト。色の濃さが違うのは毒の濃さが違う?

 

 

見えた、赤石岳。

オレが子供の時に見上げてたというほかに もうひとつ この山に思い入れのワケがある。

お袋の妹が嫁いだ先が 故郷にあった「赤石」という屋号の大きな製材所を営む材木屋さん。

子供の頃、遊びに行くと木曽のほうから運ばれてきた杉やヒノキが

大きな丸く歯のついた電動ノコギリで次々と切られ、すごい音と、木屑の匂い。

時々、でっかいクワガタが潜んでいて 夢中になって探したもんだが

その”赤石の伯父さん”と呼んでたおじさんが身上つぶし、

本来ならオレに廻ってくるはずのない息子の、つまりイトコの仲人をした。

 

 

今でも仲良くしてるあいつに「赤石岳、登ってきたぞ」と言ってやりたいのだ。

 

 

 

4/5で昼休憩、案の定サランラップに半分にしたチャーハンの握りも、

そのまた半分しか食えず、しかもストックを撞き過ぎて、ゴルフで痛めてる右手首がなお痛ぇ。

持ってったアミノバイタルを飲み、これ効くんですかね?と55歳に聞けば

「効くと思って飲めば、効きます」

まあそうだな。

 

 

しかし、とにかく 皆に遅れず 予定より一時間も早く 小屋到着。

なんだよ、それならもっと休憩入れてくれよとブツブツ言ったらおばさんが

「もっと大きな声で・・・」

 

なんだ、水タダじゃん。

しかし貴重な水だから大事に使うようにとお達し、

洗面や歯磨き用は別に雨水のタンクがあった。

 

三年ほど前 2回目の山登りで仙丈ケ岳直下の山小屋に泊まって以来の山小屋。

あの時は右も左もわからず、モンベルで「山小屋はパジャマで寝るのか」と聞いて失笑を買ったからな。

一度、 経験してるのは強い。5時の夕食まで自由行動というので

 

 

歩いて15秒と看板があった上の見晴らし台に上って、明日登る赤石岳を眺め、

 

 

右を見ると、荒川三山は雲か・・・

 

トイレは歩いて1分くらいのところだが、夜中は暗くて苦戦しそう。

 

 

 

え~、アレはヘリで空輸するの?

へり代100円、だからウンチンって言うのか。

 

小屋の周りには、ハハコグサがイッパイ咲いていた。

 

展望台から10分歩いた先に 名無し三角点があるといい

 

ここから富士山が見えると聞いたが あいにく雲の中。

 

小屋に戻ると壁に、大倉喜八郎がカゴに担がれて登った証拠写真があり

 

 

いつのまにか登山客が 早くも寝支度、オレもあわてて布団を敷こうとしたら

 

 

寝袋?人生初体験や。

 

 

夕食の時間になったが、オレこんなに食べれないやと同行の55歳に二切れ食べてもらい

 

 

 

夕食が終わって外に出ると 雲海!!!

スゲッ。

 

 

 

こんな景色が見れるなんて・・・

左に聖岳、真ん中に兎岳 耳が二つ見える。右が赤石。

 

 

 

 

空気中の水分を吸って生きてるという苔が立ち木にからみ

 

暗くなってきて さあ寝るか。

 

 

 

オッ、その前に耳セン買わなくちゃ 300円したけど効果のほどはギモン?

まあ、ゴルフの時にも使いようはある。やつらのグジュグジュを聞かないようにな。

 

 

いよいよ赤石登山の朝、満月の終りが山にかかり、

百名山のオヤジさんに、お祝いするような良い天気ですね~とアイサツをして

そういや、あの三角点で朝焼けの富士が見えるんじゃないか?と出発前に足を延ばせば

 

期待通りに、木々の隙間から朝焼けの富士!

 

 

 

今日は歩行距離7km、行動時間6時間半、獲得標高1460m と案内には書いてあるが

とにかく、みんなのあとをついてくしかない。

しかし、ちょい太めのおばさんもいるというのに 女性達のたくましさといったら・・・

少しあるくと樹林帯を抜けてハイマツ林。

 

 

振り返ると、富士山に いい感じに雲がかかって

 

 

富士見平というところに到着。

 

 

皆、四方八方にカメラを向けて一休み。

三年前の仙丈の時は 同じ頃の季節で寒い思いをし、防寒着をたくさん持ってきたのに

今日はここで上を脱いでシャツ一枚。

 

 

 

しかしみんな モクモクと黙って登って 花や景色を愛でるという風でもなく

親しくなった55歳に、なにが楽しいんでしょうね~と聞けば「登るのが楽しいんですよ」

そういうもんなの?

 

 

 

 

前を行くおばさんの足元に、ヒナウスユキソウ。

 

 

 

ガイドさんが 「イブキジャコウソウです。匂いますから近くによって嗅いでみてください」

谷川岳で見たときはなにも知らず写真だけ撮ったが、今日は近くによってどれどれ?

なんか、ヘンな匂いがした。

 

 

うしろにはずっと富士山が見えて登山日和。

 

目指す頂上はアレか・・・

 

 

ついに尾根筋に出て、風は幾分涼しくなったが ここは楽しまなくちゃと気分もルンルンに

 

 

ウシロは、オッあのチョこんと飛び出てるのが仙丈じゃないか?

それしか登ってないからな。

 

 

いよいよ頂上が近づいてきて

 

到着~~!

旅行社が用意した祝いの垂れ幕を、百名山達成の老夫婦が持って記念撮影。

 

 

オレも一枚撮ってもらって

 

 

 

富士山の反対側を見下ろすと、右手に中央アルプスか?

その下に見える市街地が伊那か駒ヶ根だとすると と思いながら左に目をやると

え~、雲の切れ目に ふるさとの飯田の街が見えるじゃないか。

 

多分、あのあいだを天竜川が流れてるはず、

子供の頃 あそこからこちらをながめてたかと思うと  感激でナミダが出そう・・・

 

標高3120m 日本で7番目に高い赤石だが、富士山より高く見えるだろ?

 

直下に見える赤石避難小屋で昼食タイム。

 

赤石小屋名物 高菜の葉でくるんだメハリ寿司のおにぎりだが

胃が受け付けず、一口かじっただけでリュックにしまった。

 

ここのオヤジが名物?らしいがエプロン姿のおかみさんも なかなか

知り合いにハーモニカを持ち出してのサービス。

聞き覚えのある、哀愁を帯びたメロディーが山の上に響き 拍手大喝采。

 

オヤジさんも 残り少ないよと言いながらタダでステッカーを配り、、

 

 

ちょっとそこの、カオはいいから背中を写させてと頼んで

この避難小屋で売ってるTシャツを着たお嬢さんをパチリ。

「泣きたい時は山に来い!!あかいし岳人生ひなん小屋」

オレはさっき泣いたけどな。

 

 

さあ、帰るぞ。

又 隊列を組んで・・・

 

この赤い岩石がラジオラリチャートと言い 赤石岳の名の由来らしい。

 

しかし、ザッザッと下ってくメンバー どこがゆったりやねん。

このツアーの名称は「ゆったり赤石岳」

行程はゆったりでも 決してゆっくりじゃなかった。

 

途中の水場では、これぞホンモノの南アルプスの天然水が地上に湧き出し

 

カラのペットボトルに満たせば たちまち表面がこの通り。

 

 

小屋まで戻り、今登った赤石岳の山の端に日が落ちるのを見て サイゴの夕食。

 

連泊しても昨日とは違うメニュー、鮭のムニエルこの旅一番のご馳走だったが

これも食べきれず・・・

連休最中のこの日、定員100人のところに120人が押しかけ食堂にまで泊まって

隣とは腕や足が当たる狭さ。

狭さといびきで疲れてるにもかかわらず、寝たのか寝なかったのか・・・

 

最終日の帰りの朝ごはんは、お茶をかけて搔き込み

えっ、外は雨?

下りの雨は足元が滑るから気をつけてといわれながら雨具を着て

 

 

まあ、昨日おとついが晴れたからヨシとしようよ。

 

 

 

 

前を行く55歳に、アンタなんか完全にヤマオトコなんだから こんなツアーに参加しないで

一人で行きなさいよ、といっても 小屋やバスの予約が面倒?

 

このあたりまではなんとかだったが、徐々に隊列から遅れるようになって

ついに禁句の「ちょっと休ませてくれ」

 

うしろの添乗員が無線で先頭のガイドに伝えてくれて休んだが

10時半発の専用バスに乗れないと、全員もう一泊しないとイケナイ・・・

 

あまり休んでちゃいられないと重い腰を上げても、15分も歩けば、ちょっと休ませて・・・

「荷物少し持ちましょ。」と言ってくれて水と重いカメラをあずけ直後はラクになったが

また太ももが張って、腰がふらつく。

登りは心臓、下りは筋肉ですからね~と言われたが、

高校の時のサッカーの練習でもこんなに絞られた覚えがない。

 

自分でも情けなくなる思いでトロトロ下ってると 前で大休止してたガイドが登ってきて

先に行ってやることがあるでしょと、添乗員と交代。

この小柄なガイドさんが、残りの荷物 持ちましょ、と自分のリュックを担いでるのに

オレのリュックを片方の肩に背負ってくれ、不調が始まったのがまだ五分の二くらいの地点

だったから、あとの五分の三は もうそれこそハジと申し訳なさと 入り混じって

ホウホウノテイ、文字通りの這う這うの体で

ダイジョブです。時間は間に合いますからそれより転んで怪我しないようにしてください

など、優しい言葉をかけてもらいながら ヨロヨロ なんとか 最初に登った鉄ハシゴに辿りつき

ここでコロンじゃ元も子もない、ストック持ちましょと言ってもらって 

空身で手すりを掴んで 慎重にゆっくりゆっくり階段を下り・・・

 

迎えに来てくれた添乗員にもココロからの感謝を申し上げれば

「自分の力で登ったじゃないですか、お客さん背負って帰ったこともありましたから」

と、ナグサメともつかない言葉をかけられ、

荷物持ってもらって、とても自分のチカラとは言えないけど、カゴよりはマシか。

 

 

 

 

皆より40分遅れで到着し、全員にアタマを下げ 途中の温泉で一息。

 

 

とろろそばは、気がラクになったせいかするっと胃に入り、

 

 

バスのテーブルにお世話になったバンテリンと 記念バッジ。

ゴルフ帽につけてジマンするかな。荷物持ってもらったのはナイショで。

モチロン、ガイドさん達二人には1g1000円とはいかないが お礼はしたさ。

 

 

 

畑薙の駐車場で バスの乗り換え。

これに懲りずに、またどこかでという55歳に

いやいやもうゼッタイ会わないから、ツアーはコリゴリ、

もう自分勝手ヒトリヨガリのオレには向いてないよ。

この山は思いいれが有ったから来たけど、

これからは、いつもの富士山が見える低山を 好きなときに休んで ゆっくり登るよ。

 

まあ、いろいろ泣いたけど それでも 又一つ終わったというこっちゃな。