金曜日、仕事を早仕舞いし 雨の新宿を抜け中央道を一っ走り
信州駒ヶ根を下りたら、なにッ、こっちは晴れてるの?
ホテルに入る前に、日帰り温泉に飛び込み湯上りに 黒酢ブルーベリーなるものを一杯。
気分的な開放感もあってウマイッ!
翌日の山登りの足慣らしと、裏の河原を歩けばホタルブクロが咲き、
「こまくさ橋」というつり橋の向こうは、南アルプスの山々が峰を連ねる。
そういえば日帰り温泉も「こまくさの湯」
こまくさって見たことないな、今頃咲いてるのかな?
反対側の山奥が、明日登る 宝剣や三ノ沢。
光の帯が降りて吉兆に思えるが、天気予報じゃ曇り、昼から雨。
といわれても、今さらジタバタしようがなく チングルマの花さえ見ることができりゃ・・・
翌日の土曜日、案の定の曇り。
バスの始発は5時15分だが、三連休の初日だから 5時頃から臨時便が次々でます、というのを信じて4時半にバスターミナルに着けば早くも200人くらいが列を作っていた。
まあ、九割がたが木曽駒方面、残りがあちこちに散らばる感じ?
結局4台目くらいの臨時バスに乗ってロープウエーの駅に着き、上を見上げると
山の中腹より上はガスがかかっている。
他の登山客からも失望のため息が聞こえるが、こればっかりはしょうがないだろ。
駒ケ岳神社に無事を祈ってお参りし、6時半登山スタート。
ちょっと上がれば もうロープウエーの駅はガスの中。
ミヤマキンバイ?キンポウゲ?どっちだ。
花の百名山といわれる三ノ沢岳に登り、去年見たチングルマの綿毛の 花の姿を見たいというのが今日の第一目的だが、せっかくここまで来たんなら ちょいと宝剣まで往復してから三ノ沢に登ろうというコンタン。
ショウジョウバカマ
宝剣は一昨年、何もわからずに登り 途中で出会った山岳救助隊のオバサンにここからは必要ないからと、
ストックをリュックにさしてもらい
首から下げたカメラを見て「カメラ落としても命を落とさないで下さい」と言われたところ。
あの時のスリルを又 味わいたくて、まあ言って見れば大人のアスレチックみたいなもん?
極楽平までのサイゴのところに雪渓が残り、
慎重に前の人の足跡に登山靴を蹴りこんで通過。
念のためにと持ってきたチェーンスパイクは重荷だった。
向こうに見えるはずの三ノ沢岳はガスの中。
何を言ってもしょうがない。
ヒメウスユキソウ。エーデルワイスの一種で、この駒ケ岳周辺だけで見られることからコマウスユキソウとも言われると・・・
あれがチングルマか?
霧の中に、それらしき花の一群が見える。
ミヤマキンバイ。
次々に高山植物が現われ、そのたびに息を止めてシャッターを押すから直後は呼吸が苦しい。
ツガザクラ。
イワウメ(岩梅)。
極楽平から宝剣、三ノ沢方面に行く稜線には高山植物が一杯。
しかし風が冷たく、一枚羽織って ♪風に~吹かれて~
あれ、なんの歌だっけ?
過ぎた日の 微笑みを みんな 君にあげる
ゆうべ 枯れてた花が 今は 咲いているよ
過ぎた日の 悲しみも みんな 君にあげる
あの日 知らない人が 今は そばに眠る
温かな 昼下がり 通りすぎる 雨に
濡れることを 夢に見るよ
風に吹かれて 胸に残る想い出と
さよならを するために
ビリーバンバンだ。出てくるまでが長い!
遭難の碑前で 昨日八ヶ岳SAで買った赤飯の朝食、ハラ減った~。
ここが三ノ沢岳方面との分岐地点。
宝剣をやっつけたら、又ここまで戻って三ノ沢に行く予定だが。
なんか空が明るくなってきて、ガスが流れ太陽が雲の裏で光り 青空ものぞいた?
お~、宝剣もガスの向こうに姿を現した。
風よ、もっと吹け!
あ~~。これから行く宝剣のピークがクッキリ。
このタイミングで見れるとは・・・臨時バス第4便で正解だった?
この姿を拝めただけでも、来た甲斐があったというもんじゃ。
誰かの「富士山が見える~」という声に振り返ると
連なる南アルプスの上から アタマ一つ抜けた富士の雄姿が。
さすが日本で一番高い山!
ハクサンイチゲ(白山一華)
もしかしてコマクサ?
南アルプスをバックにハクサンイチゲ。
イワツメクサ。
裏の木曽側には 数年前に爆発し この7月にやっと頂上までいけるようになった御嶽山が
雲の上に顔を出してる。
なに?
さ、言われる前にストックをしまって岩のぼりの始まり~。
新品の鎖だな。これなら切れるシンパイはなさそう。
こんな岩場のスキマにも、小さな花がしがみついて咲き、
人間も岩にしがみつきながら登って来る。
コチラはこれから降りる。のぼり優先で どうぞどうぞとヨユウをかませて見守り、
サイゴの一登りで頂上だ。
左奥に見えるのが木曽駒ヶ岳。
岩陰にコイワカガミ。
振り返ると、あとで登る三ノ沢岳の端正な三角錐の山容が見渡せ、
お~、この岩の隙間覚えてる。
真正面に富士山が見えるやないか。
腰をかがめてくぐり、
その先で 若い人達がインスタ映えの場所だと記念撮影していて ”オレも撮って”と頼み
カメラを預け、おそるおそる登って・・・
”もう降りていい?”
今が盛りのキバナシャクナゲが光って
そうして宝剣岳2931m頂上到着。直下には小さな祠があってお参りをし、
下に、小さくロープウエーの駅が見える。
この女の子は どこから来たと聞いても日本語が通じず 「from korea」
韓国からかよ。 一人で?で聞けばそうだとうなずき スゲぇなと思ったら
うしろから男が登ってきて、英語 通じなかった?
♪ 雲が~流れる~ 北国の街へ~
これはダレの歌だったけな?
さっきおりてきたところを 登り返し。
足元のイワベンケイを撮って息を整え、
サッ行くぞ!
上から転げ落ちて来ないかシンパイしながら 前の人のウシロに続く。
ここにもミヤマキンバイが咲き、
とにかく、いつものセッカチさは引っ込めて 慎重に慎重に・・・
やっと分岐まで戻り 9時半、ヨシ、 あそこまで往復だ。
時間はタップリある。
左手に見えるのは空木岳か?
このハイマツの中を最初は下ってゆくんだが ハイマツはそのうち腰まで来て胸まで来て
ついには顔の高さを越すところもある。3っつくらいのピークを越えた先が頂上。
雲がでてきた。去年は雨の中、登山靴の中まで水が入ってジャブジャブだったからな。
同じタイツに半ズボンの今日は、早めに下のカッパを着るぞ。
オモワクとは違い、薄日がさしてきて イワカガミを照らした。ハイマツの下にたくさん咲いている。
滑りそうな岩の上をロープを伝い、中腰で通過。
キブシのような花。なんだろ?
ミツバオウレン。
キバナノコマノツメ。
キバナシャクナゲがアチコチに咲いて目を楽しませてくれる。
ヒメイチゲ(姫一華)
シワだらけだが 陽にやけた顔の スーパーボランティアのあの人みたいなおじさんが降りてきて
80歳過ぎてる?農作業でもしてる人かな?
つい、”お元気ですね”と声をかけたら 「ワタシはこんなカオですが まだ若いんですよ70です」
えっ、オレのほうが上か。
「このまえも83歳くらいといわれてぶっ殺してやろうかと思った」って・・・言わなくてよかった。
10年前に奥さんを亡くし家を売って山登り、300名山を上ったっていろんな人がいるんだ。
「時間、いいですか?」というから いくらでもありますといえば
群馬だかの家のある土地を1千万で売り出したが買い手がつかず、800万、650万と値下げしてったら 隣のヤツが来て、ホラ隣の土地はなんでも買えっていうでしょ?足元をみやがってこっちが焦ってるとおもったのか450万でどうだっていうんですよ。断りましたよ。そしたら今度はウワサを聞いてヨコのやつが来てまた450万、値段まで聞いて来たらしくお断り。すると近くで医者をやってるのがまた来て650万でどうだ?ホントは1000万で売りたかったけど もうしょうがない売りましたよ。それで九州の先の島の山やら、北海道の山にいって今はアパート暮らし。
まあ、こっちもいい休憩がとれてよかった。お互い、お大事にと別れて
このケルンまで来りゃ もう一息。
その先を上ったところが高山植物のお花畑。
この白いのがうわさのチングルマだ!
オレんところだけのウワサ?
こちらにも雪渓が残り、
ミヤマキンバイの群落。
キタ!三ノ沢岳 到着。
標高2846.7m これでも日本で46番目の高さらしい。
早目にはいたズボンのカッパ。下は切れ落ちてる。
赤飯の残りを食べ12時40分、分岐が9時半だったから3時間越え?
意外に時間がかかってるな。
予報通りに 細かい雨が降ってきて、さあ帰るぞ。
下りはじめたら女性の二人組が上ってきて挨拶を交わしたが
もうダレも来ないと思ったのに、随分と遅い時間にくるんだな。
なんか、名前をつけたくなるような岩だ。
ナナカマドの花。
雨のしずくがボウシの先からポツリポツリ落ちて、本格的に降ってきた?
いっつもココは雨だな。花の百名山じゃなくて雨の百名山だな。
しかし疲れた。上り返しが多くてきつい。濡れた岩に腰かけて休んでたら先ほどの女性組が降りてきて”ずいぶん早いですね~”と冷やかし気味に声をかけたら
「これからロープウエーで降りなきゃいけませんから」
え~、オレもロープウエーで降りるつもりだけど・・・
40歳近くのリーダーのほうが腕時計を見て 「今2時半でしょ、分岐まであと1時間半、そこから1時間見て5時。ロープウエーの最終便が5時ですからね~」
ホントかよ。時間なんてまったく気にしてなかった。あのおじさんの長話を聞いてたのがいけなかったか?とにかく急がなきゃ と思い、先に行く女性組のあとをついて は~は~ぜ~ぜ~
気は急くが足は言うことを聞かず 牛の歩み。
若い方の女性を抜いたら「トレーニングに連れてきてもらったんですが キツイですね~」
雨に濡れた岩をよじ登り、先が見えないハイマツの中を下を向いて上り、多分限界を越えて
るなと思いながら最後ふっとカオをあげると、やっと、分岐の矢印が上に見えてフ~~。
3時半、「もうダイジョウブですね」 分岐に先に着いてたリーダーに言われ
”イヤ~、おかげさまで”と礼を言ってるところに黄色のヤッケの若いほうも到着
「このまま行く?」 リーダーはさっさと出発し、「寒いから手袋してた」というキイロを置いて じゃオレもお先に・・・
山にはそれぞれのペースがあるのだ。
カメラはずっとリュックにしまいっ放し。お別れに今度はスマホで獲ったコマウスユキソウ。
ここまで来りゃ、と 先に着いてリーダーと休んでた極楽平の雪渓の上にキイロも到着し
どうぞ、先に行ってください と、二人を送り出し
雪渓を降りたら、「私、上りは苦手なんです」と言ってたキイロもさっさと姿がみえなくなって、
オレもハヤシマリコにならないよう、最後のチカラを振り絞り
途中で下のロープウエーのほうからアナウンスが聞こえてきて 今度の発車は4時半、その次の5時が最終便ですから遅れないように・・・
登り口の駒ケ岳神社にお礼参りをし、またロープウエーとバスを乗り継いで駐車場まで戻り、
昨日入った日帰り温泉にドボン。
6時半のスタートで4時半、延々10時間の今まで一番長い時間をほっつき歩いた計算だ。
そのまま、南に下って故郷の街にもう一泊。
日曜の朝 ウチの墓に参り、叔父さんのお墓にもお参りし、まだ健在の伯父、伯母のところにも寄って挨拶を交わし、明るい雨の降る中央道を混まないうちにとすっ飛んで帰ってきたのでありました。