
又、紙幣が刷新されるというニュースが流れ、このまえの時のバタバタが否が応にも思い出される。
もっとも今度は、5年後の2024年に新札発行ということだが、2004年の時は発表から2年だったからな。
又・・・と書いたのは あれから もう15年も経ったのに ついこのあいだのような気がするからだ。
あの時、自販機で使う紙幣識別機 通称ビルバリを作っていたわが社は大アワテ。
一応業界には、しかるべきところから事前に新札の見本を提供され、
データを取ってプログラムの書き換えの準備をする期間を与えられた。
札の大きさが変わるわけではないので、メカのほうはそのまま使えたが
あの頃は 設置してある機械一台一台に、新しいロムと交換という手間が大変だった。
それでも発行に間に合わなかった自販機がたくさんあったようだが、いきなり新札が出回るわけでもなく
おいおい交換で間に合ってた時代だった?
その後も、別の製品の特許事件とか オレもこれで 苦労はしてるんだぜ~。
マア、今は 自分のところで作るよりヨソのを買ったほうが安上がり、ということでラクをして
あの頃のような焦りはないけれど、そもそも我が方がビルバリの開発を手がけたのは
インベーダーゲームが街中を席捲していた1980年代。
100円でゲームをさせるより1000円のほうがハカが行くだろと、考えた?
ちょっとアタマのいいアッチ系の人に頼まれ、アメリカ製のドルを識別する機械を手に入れて分解。
まだ日本にはそのような機械がほとんどなかった時代だ。
ドルも日本の札も磁気インクで印刷されていて、その磁気の強弱を テープレコーダーに使われてる磁気ヘッド
の下に通して電気信号に変え、あらかじめ記憶しているデータと照合して真贋を見分けるという理屈だ。
しかし1000円札といっても、ピン札から折り目の入ったもの、しわくちゃの札、
果ては洗濯機で洗ったようなものまで千差万別。
それに多分、各地の造幣局によっても印刷の濃さが違ってたんじゃないか?
それら、何百枚という千円札を集め 磁気ヘッドの下をくぐらせてデータ取り。
表、裏 順方向、逆方向の4種類の上に 札を16ブロックに分けてそれぞれの箇所のデータを取るため
毎日パソコンとにらめっこしながら、それでも夢中でやってた日々はおもしろかったな。
そうして、それぞれのブロックの数値を これ以上これ以下と最大公約数的な数字にまとめてテーブルを作り
モチロン、最初のセンサーを札が通ったらモーターを廻し始めるとか 全体のプログラムも作るわけだが
当時使っていたマイコンというのは 2Kビットと 今では考えられないくらい容量が小さく、
プログラムもキレイに書かないと、すぐに容量オーバー、データーも削りに削った。
札の長さというのは 5m/mくらい違うのはザラで あまりあてにならず参考程度、
札の厚さにいたっては、センサーが紙粉で誤動作を起こし 使い物にならずに削除。
それでもホンモノの札なら、いくら汚れていても通さねばならず、それをハジいてたんじゃ商売にならないわけで
そのあたりのプログラミングが ウデのみせどころだった。
最初に作ったのは、札を収納するところまではアタマが及ばず、
彼らもゲーム機の中にボール箱を置いて札を受けてたが、
一ヶ月たち三ヶ月経って、なんのクレームもなさそうだとわかった時はホッとしたな。

印象深い想い出は 21世紀になってすぐの夏、関西方面で大量のニセ札が自販機から見つかった事件。
丁度、インクジェットコピー機が出回り始めたころで あのトナーにも磁気が含まれてたため
それでコピーした札が、銀行の機械もダマしたというのでビックリ。
大阪府警に業界の十数社が呼ばれ、日立やサンヨーといった大手に混じって零細の我が社にも
カーテンで仕切られたスペースが与えられ、犯行に使われた”ホンモノ”のニセ札を渡されてデーターを取れ。
手袋をした手でニセ札を、パソコンでチェックしたり持ちこんだ機械に通したが 見事にシャットアウト。
ウチの機械は上出来だと、 帰りに みんなで祝杯を挙げたな。
最近のビルバリは磁気だけではなく、色やその他のセンサーも備え 札もホログラムなど ニセ札対策には
十分に気を遣っていて、あの頃とは雲泥の差。
ビルバリが出始めの頃は、札が詰まったといって見にいくと、札の入り口にコインが入っていて
ダレだこんなところに100円玉入れたのはって、使うほうも使い方がわからなかった時代だったんだが
今や、キャッシュレスの世の中。
江戸っ子は、宵越しの銭は持たねぇんだ。
現金を持たなかった江戸時代に戻るか・・・イミガチガウ?
SSS