
こんなにミゼラブルな姿のクルマを、みんなの目のつくところに捨て置いて
山登りを始めるオレの気持ちがわかるか?わっかんねェだろうな~。

パンクだと教えてくれたオジサン達のグループが、山支度をしてるのを尻目に
さっさと登山靴に履き替えて出発。背中の視線が痛い?自意識過剰・・・

まだ、朝の6時過ぎ、向こうに見える山なみは南アルプス。
風が気持ちよく、街中を5分も歩けばフ~フ~息が切れるのに
こういうところなら、どこまでも行ける?パンクのことさえなけりゃな~。

朝日の差し込むこんな山道も、なんでもなきゃ胸弾むところだが。

ほどなく大蔵高丸。
この辺りの丸という言い方は、古い朝鮮語で山と言うイミなんだそうだ。
だが、向こうに見えるハズの富士山がいない。

お~、でてきたなミツバツツジ。
丁度見ごろやないかい。

林の中のあちこちに、うすむらさきの花が姿を見せてくれて

パンクのことさえなきゃ、こんなに楽しい山歩きはないんだが・・・

雲の下、真ん中下に見える街並みは甲府か?甲府盆地っていうからな。

ガスが流れてきた。

アララ、先が見えないとはこのこと。
とにかくパンクも、あそこにいたんじゃどうしようもない。
スペアタイヤなんてみたことないし、たとえあっても替えられねェ。
パンクのまま、レッカー車の入れる県道まで降りるしか手はないな。
そのあと、保険会社に電話してレッカー車の手配してもらい、クルマ屋にも電話して・・・
時間もまだ早いし、それよりなによりここじゃ電話が通じない。

グズグズ考えてたらハマイバ丸到着。
ミツバツツジと富士山が一緒に見えるところはどこだ? まだ先?

そのまま先に進めば、草むらでおじさんがゴソゴソしていて、
遠くから、「ミツバツツジと富士山がいっしょに見える場所はどこですか?」と聞けば、
すぐそこ。カメラマンが三人、ガスが晴れるのを待ってますよ。

ワタシも、そのあいだ、わらび獲り、と成果を見せてくれた。

お~、ここか~。
ミツバツツジは一つの株じゃなくて、同じくらいの高さのがそろってるんだな。
しかし、バックに見えるはずの富士山はどこじゃ!
待ってるカメラマンに「ガスは晴れますかね~」と聞いても さあ~なんとも言えません???
とりあえず、待つか・・・

↑大月市観光協会ホームページより拝借。晴れてればこのように見えたハズなのに・・・

しばらくすると、うしろからガヤガヤ ここだとか富士山が見えないとか騒いで、あっ、あいつら・・・
すみませ~~ん、シャッター押してもらえませんか?という声に、ヨコの人を促し、
オレは座りながらうしろからパチリ。
ガスで寒くなり、上着を一枚羽織ってたからバレなかった?ま、ダレも気にしてやいないか。

30分待ってもガスは晴れるどころか、ますますひどくなり
パンクが気がかり、帰るか・・・

今、7時半だろ?
一時間かかって駐車場、9時過ぎには県道沿いにある天目山温泉の駐車場に着けるやろ。

アタマはパンクで一杯、そのあと お通夜も控えてる。
そういや、千葉の式場までどうやって行こう。
ナニのクルマ、借りるか・・・

その前に、オレがどうやって家まで戻れるかだな。
6時の通夜には間に合うだろうな~。

ガスのスキマから差した陽に照らされたミツバツツジ。

来た道を戻りならが、破魔射場って 悪魔の魔力を弓矢で射る場所っていうようなイミだろ?
パンクはする、富士山は見えない、よほど日ごろの精進が足りてないんだな。

先月、苦労して登った湯の沢峠のお花畑の標識のあるところのサクラの木に 小さなサクランボ、
何時の間に咲いた?

駐車場まで戻ってきてもパンクしたまま。あったりめェ?
ナグサメに白いズミの花を撮って さあ、行くか!
トロトロトロトロ ローギアで坂道を下り、右に左にカーブを曲がり・・・

途中で、登山客を乗せて上がってきたタクシー数台とすれ違ったが
それがお客を下ろして、早くも戻ってきて後ろにピタリ。イライラしてる様子がアリアリ。
やっと、場所を見つけて道を譲れば パンクを知ってか知らずかプップとクラクションを鳴らして過ぎ去った。
クソッ!

フトモモがいたくなるくらい慎重に下って、やっと目的の温泉の駐車場についたのが9時30分。
1時間もパンクのまま山道を下った計算になる。
10時オープンの温泉待ちのクルマのヨコに停車すれば、窓からオジさんが顔を出して「空気抜けてますよ」
わかってらい!というココロの声は抑えて、ハイ、パンクしてるんです。

先ず保険会社に電話して詳細を話せば、45分くらいでレッカー車を向かわせます。
ということは10時15分か、早えな、15分しかないんじゃ温泉入ってるヒマないな。
とりあえずホッと一息ついて見上げた山の、新緑がまぶしい。
クルマ屋さんは日曜で電話が通じず、留守電を入れ、
ナニにも電話してパンクした!通夜に行くのにクルマ貸してと頼めば「電車で行きなさいよ。」
あいつ、またぶつけるのを怖がってるな、

時間通りにレッカー車が来たが この長いのじゃ グズグズ考えずにここまで降りてきて大正解だったな。
大月の駅までオレも乗っけてもらい、気さくなウンちゃんから
こういうクルマじゃあんなとこ行かない方がいいと言われても、まあそうなんだけどね~。

急にハラが減り、電車待ちの時間で ひなびた大月駅の構内の駅ソバ。

何十年ぶりかという中央本線は、急行「かいじ」で八王子にでて
横浜線でヨコハマまで。

車窓から見える景色に慰められ、帰ってから一風呂浴び喪服に着替え、
東海道線、銀座線、東西線で千葉の式場まで。
Aさんとサイゴのお別れをし、旧友達と近況を報告しあい、
ゴルフ帰りで来た後輩のガンちゃんのクルマに乗せてもらって
あんた、まだ100切れないの?
家まで送ってもらって夜9時、長い一日だった。
まあ、考えようによっちゃ、クルマが使えない、と言うことは捕まるシンパイもないわけで
このまま金曜日になだれ込めば、晴れて年季が明けるというこっちゃ。