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小仙丈の上は冷たい風が吹き付け、濡れた下着のまま休んだんじゃヤバイと着替え。

アウトレットのモンベルで二着買った山用の下着の一着を着てきたが、予備の普通のに着替えてここで昼食。

まわりはガスってなにも見えず、風の当たらない裏の岩を背にコロッケパンとまいたけ?のおにぎり。

ペットボトルのお茶をごくごくと飲んだら、残り五分の一くらいになってしまった。

一応ナニに電話をしたが、ソフトバンクホークスは通じず、電源がなくならないうちにとシャットオフ。




写真を撮ってもらったご夫婦に 「頂上まであとどれくらいですかね~」と聞けば 地図を見ながら

「ここが2864m、頂上が3033m、あと200m弱だから1時間くらいでしょう」



たしか、さっき聞いた人も一時間って言ってなかったか?

オレの足だと倍はかかると計算しないと・・・

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ガスが強風で流され、仙丈の有名な 昔の氷河のあとだというカールが現れた。

このゆるやかな曲線、たおやかな山容、南アルプスの女王と呼ばれるユエンだな。

あの、ちょっと雲がかかってる先のところが頂上?

晴れていればこの尾根歩きは気分転換になって最高なんだろうが、疲労困憊の今、それどころじゃない。


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またすぐに雲に覆われ、先を行くこの青い服を着た人は年のころ70くらい。

オレが追い越した、唯一の人。もっとも、このじーさんが休んでたところをだが。

小仙丈を先に出たので あとに続いたが、クマよけのベルがいつまでもチリンチリンと聞こえ

ああ、そんなに離されていないなと ずいぶん勇気づけられた。


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ハイマツの下に 高山植物・・・だろう。花がないのがさびしい。

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上から降りてきたのは、先ほどオレが道を譲って追い越していった山ガール。

「もう頂上に行って来たのか?」と聞けば、ほほえみ 「あとどれくらい?」に 30分ぐらい・・・

一応、降りてゆく後姿をパチリ。


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花も極小ながら咲いてるじゃないか。いずれゆっくり名前を調べよう。

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オッ、カモメ!

待てよ、こんな山の上にカモメがいるわけがねぇな。

高山病で頭がおかしくなったか。

雷鳥だ!

そのままそのまま、とカメラを構えて、もっと近くに・・・




動かねぇな。

なんだよ、枯れ枝かい。

(右下隅クリックして拡大してみて…間違うのもムリないでしょ)


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お~、あれが頂上?チリンチリンはとっくに聞こえなくなって

また降りてきた人に聞けば、そうじゃなくてあの右側を廻ってアップダウンを2回ほどすれば・・・

え~~~、あとどれくらい?

そうですね~30分ぐらい。



さっきの山ガールに聞いたのはガセだったか。

まあ、人によって違うのはしょうがないけど、オレの体力も精神力もほぼ限界。

とにかく持っているのは、なんとか頂上にたどり着きたいという気持ちだけ。

もう上から故郷の街が見えなくても良い。とにかく頂上へ・・・

そして水も残りわずかになった頃、トウチャコ~。


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標高3033m 仙丈ケ岳の頂上。

スマホの電源を入れなおして時間を確認すれば2時!

8時半に登り始めて、5時間半。標準タイム3時間半より2時間増し!



まわりはガスってなにも見えず、感激する暇もあればこそ、写真を撮ってもらった人に仙丈小屋はすぐ下ですよ

ね、と聞けば、その埼玉の行田から来た同世代の人は、逆ルートから登ってきて小屋に荷物を置いて上がってき

たという。


あとは下るだけ、水飲み干してもダイジョウブと言うんで、ペットボトルをカラにし、お先にと頂上をあとにした。

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今度はホンモノの鳥、しかし期待の雷鳥じゃなさそう。なんとかカラス?

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仙丈小屋、こっちだな。

しかし、長い下りは初めて。ヒザが痛むのでそろりそろりおりるから時間がかかることこの上ない。

行田の人は15分くらいと言ってたが、とっくに15分過ぎてる。

ネットでは頂上付近からすぐ下に小さく小屋がみえていたのに、このガスじゃ何にも見えぬ。


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持ってきたのは、プリントアウトしたルート案内一枚だけ。

メモは日曜シュッパツの予定だったもの。平日用のバスの発着時刻は違ってる。

他人の仙丈登山ブログをたくさん読んで、一応頭の中にイメージはできてたが

まったく小屋は見えず不安・・・道、間違えたかな?方向音痴は得意だからな~。

まあ、頂上で撮った写真はあるし、なにかあっても頂上へは辿り着いたという証拠にはなるだろう。

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オ~~、小屋だ!

うっすらと小屋の影。


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2時40分、約束通り3時前についたが まさかこんなにかかるとは・・・

腹積もりじゃ昼ごろついて あたりを散策してる予定だったのに。

2階で受付を済ませ、水はどこ?

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小屋からちょっと下ったところに、これこそ正真正銘の南アルプスの水。

超冷たくて、ウマクて、カラになったペットボトルで受けゴクごくごく・・・

氷水を食べたときみたいに後頭部がキーンとなったが、一本飲み干し、また満杯にして小屋に戻り

「乾燥機ないの?」



ガスの中を歩いても濡れるんだな。上のヤッケや濡れた下着を乾かせればと思ったがゴルフ場とちがって

「残念ながらありません。」 まあそうだよな。


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背にハラは換えられぬ。案内されたハシゴを上がった3階寝床でサイゴの下着に着替え、

5時の夕食までとゴロンと寝ころんだが寒くなり、毛布をかけもぐりこんだ。

大体20人分くらいの寝床が敷いてあり、オレは丁度真ん中くらい。

モンベルの店員に、山小屋はパジャマで寝るのかと聞き笑われたが、ホントにパジャマに着替えたかった。


しかしこの寝床がずらっと並んでいる光景、子供が小さいころ夜、網を乗り越え一緒に海釣り公園に行ったら

大勢の人が闇の中で釣り糸を垂れてて、こんな世界があるのかとカルチャーショックを受けたがそれ以来だ。




「夕食の用意ができました~」という声に下に下りたが どうも熱っぽい。

額に手を当てるとちょっとヤバイ?

ムリして、どこかおかしくしたかと思ったが、考えて見りゃこりゃ風邪の症状だな。



身体も疲れ果て、水も飲みすぎて食欲はまったくなかったが 食べておかなきゃ持たんとハンバーグを完食。

ご飯も食べれるだけよそえと言われ、少なめにしたがそれでも二口ほど残り、お茶をかけ無理やり流しこんだ。


小さなテーブルに6人づつ座り、「二年前の今日、御嶽山が爆発したんですよ」という話をウワの空で聞きながら

もう一度水をペットボトルに満たし、早々と三階の寝床にもぐりこんだ。

冷たい水の入ったボトルを額にあて、目を閉じるがなかなか眠れない。頭も痛い。


7時半、消灯。その前にトイレに行きたい人は行っておいてください。

オレは、これだけ汗をかいてりゃ出るもんも出ないし、いまさら起き上がれないとパス。



電気が消えると、それこそ真っ暗闇。

そのうちアチコチからグーグーガーガー、眠れたもんじゃないよ。

碁の旅行で慣れてるとはいえ、音量が違う。



着替えた下着は汗でぐっしょり。ウチならパジャマの替え持ってきて~といえば済むがここじゃそうもいかない。

ペットボトルの水を何回も飲み、トイレ行きたいな~。

何時頃だろ。みんな済ませてるからおきる奴なんかいない。

目を開けても真っ暗闇。こんな中、ハシゴの降り口だってわかりゃしねぇ。

ライトはリュックの中にあるけど、そのリュックのありかさへわからぬ。



ペットボトルの中身が暖かくなり、身体の熱で下着が乾いた?額の熱が下がってきた。

人間の身体というのはよくできてるし、今時の下着も良くできてるね~。

多分、ゴルフ用の下着だっておなじようなもんだろうが、ゴルフは昼に着替えちゃうからな。



突然、ゴ~~というスゴイ音がして小屋がガタガタ揺れた。

噴火!?




仙丈は火山じゃないだろ・・・地震か?

しかし、それほど揺れるという感じでもなく そうか 風かァ。

3000m近いところに建ってる小屋だからな~、風も吹くやろ。



眼の裏が明るくなり、開けると隣のおじさんが小さなライトを点けて、リュックから水を取り出そうとしている。

とっさに、トイレに行きたいんで階段の降り口を照らしてと頼めば、外は危ないから持ってゆきなさいよ。



このままじゃ寒い?しかし、外はそれほどでもなく、それより満天の星!

頂上から降りるとき、明日のご来光を拝みにまたあそこへ登るのはこの足じゃゼッタイムリだと思ったが

休んだお陰で、足は回復基調。

戻って、起きて待っててくれたおじさんに空の報告をしたが 結局寝れないまま4時起床!


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月が光り、もやってるようだが、山すそはかすかに明るく、この分なら夜明けの景色が見れそう?

再び頂上まで登る気力はなかったが、尾根筋まで上がれば、富士山と北岳と間の岳、日本の高いところから

一着、二着、三着が同時に写真に写せると、ネットで調べ済み。



クマのような小屋の主人がオレをみて、「あそこまでならストックなんかいりませんよ」

そういうけど、こっちはシロートなんだからと言っても、「松葉杖じゃないんだから」

「言ってくれるね~、上に行ったら富士山見えるンだろうね。」

「こんな日に見えなかったらいつ見えるんですか」と自信満々が、登り始めたら急にガスってきて

五時半の夜明け時間になっても、すべてガスの中。まったくどいつもこいつも言うことが・・・

山の天気は変わりやすい。ここの制限速度をご存知ですか。

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あきらめてゆっくり小屋に戻れば、昼まえには降りだすという予報に、みんな出発しはじめてて

昨夜はあんなにたくさんいたのに、一人の朝食。味噌汁がうまい。塩分摂ってなかったからな~。

昨夜と同じようにお茶をかけてご飯を流し込み、昨日のところで水を補給して、いざ下り・・・


\¤\᡼\¸ 1
←苦闘の三部に続く。