高校生活は、サッカーに明け暮れていた。

日が暮れるまでボールを追いかけまわしていたが
雨が降ると、体育館での練習を早めに切り上げ
スマートボール屋や雀荘に行った。


東京オリンピックの頃、ビートルズが入って来る少し前のことだ。

ある日、左ウイングをやっていた”町井”が
部室の裏でタバコを吸っていて、先生に見つかった。

ひなたぼっこをしながら、授業をサボっていたが
低い屋根の向こうから煙が上がっていた。


「ドジッ!」
皆から攻められて
「あの時間は見回りにこないと思ったけどな~」
「オマエのカンが当たったためしがね~」


身上書にキズがつく停学ではなく、一週間の自宅謹慎の温情処分。
それでも、一歩でも自宅から出たら停学というオマケつきだった。


オトナシくいいつけを守っていると聞いて
サッカー部の仲間でお見舞いというか、冷やかしに行くと
ドジは当時、熱を上げていたシルヴィーヴァルタンの「アイドルを探せ」
のレコードを繰り返しかけながら元気がなかった。


「アイツ、結婚するんだぞ!」
19歳の人気絶頂期に、
もう結婚するという話が伝わってきていて追い討ちをかけると

「絶対に離婚するから!」
とムキになった。




オレ達が、社会に出て10年すぎた頃
新聞で「シルヴィー・ヴァルタン離婚」
という小さな記事を目にした。


「ははは、当たったよ、ドジ」





今日、会社を出る時、カレンダーをめくってきた。
今年も残り一枚だ。
あいつも、カンレキを迎えたかな~。