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日の暮れるのが早くなった秋の夜に、
ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
という虫の音が聞こえる。リとルのあいだの微妙に、そしてひそやかに鳴くこの虫の名を”カンタン”というが、姿を見ることは滅多にない。

名の由来は中国の「邯鄲の夢」(かんたんのゆめ)という故事からきている。

昔、唐の時代、盧生(ろしょう)という若者が旅をしていて、趙の邯鄲というところに宿をとった時のこと、宿の亭主が夕食の粟飯を炊くあいだ、丁度居合わせた老人から枕を借りて仮眠をとった。

すると、盧生は瞬く間に立身出世をし、美しい妻を娶り、栄華を極め、死ぬまでの夢を見た。

その時、自分を呼ぶ亭主の声が聞こえた。
「さあ、食事ができましたよ」

盧生は、今見た波瀾万丈のドラマが、粟が煮えるまでの一瞬の夢に過ぎなかったことを覚る。
「一炊の夢」ともいい、人生の栄枯盛衰の儚さ、又、過ぎてしまった時間をあとから振り返ればほんの束の間にすぎないという時間の不思議さをあらわしたおなじみの故事だ。

儚げに鳴く”カンタン”の声のイメージがこの故事に合うのだろう。
庭から聞こえるルルルルルルという虫の音を聞きながら、今度の日曜に行われるゴルフコンペの夢でも見ようか。

蛇足だが、この老人の枕は南天の木から作られていたという。
南天は難を転ずるといって縁起が良いとされている。
下の写真は庭に生える”白南天”。