「四畳半リアリズム」発足に寄せて
2021年8月8日
「四畳半リアリズム」の言い出しっぺ
古川博司
昔の話ですが、レコードメーカーで制作部署にいた頃。とあるアーティストの曲のMV企画で「あなたの宝物と一緒にMVに出演してください」という一般公募を行ったことがありました。
応募者のお一方に「自分の髪毛」が宝物という方がいらっしゃいました。その方のお手紙には、「自ら命を絶とうと思っていた矢先に、この曲(MVの曲のこと)に出会って。まだ生きてみようと思いました。生きる決意のために長い髪の毛を切りました。その髪の毛が私の宝物です。」とありました。
「歌」が、人一人の命を救ったことを実体験しました。
「歌」は心に直接作用します。
「歌」は喜怒哀楽のアンプです。
「歌」は産業コンテンツではありません。
「怒」を内包して、苦しみでがんじがらめになっている方が、この国には、数知れぬほど多くいらっしゃいます。
かく言う、私もその一人です。
生きる窮愁を耐え忍んでいる方に「がんばって」「たいへんだね」と声をかけても何も伝わることはありません。
むしろ、その苦しさを正面から受け止めて、心持ちを「歌」にして、寄り添ってあげることが必要です。
そんなことを考えているときに、シンガーソングライターのBEBEさんと出会いました。彼女は、
「怒」をテーマに曲を書こうと思いつつ、自分が「怒」をテーマにして良いのかと迷っていたところでした。とても歌に対して真摯な姿勢の方です。「BEBEさん書いてみましょう。」と話をしました。
そこから、BEBEさんは、今の日本で起こっている事を読み聴きし、まず最初の曲として「ひとでなし」が完成しました。
多くの方に歌ってもらいたいと思いで、まず「ボーカロイド」での発表を決めました。
むろん、BEBEさんのバージョンも発表します。
BEBEさんは、「歌」にしなくてはならないことが、まだまだ数多、この国にはありますと言われています。
そして、ビジュアルです。
BEBEさんから、私が懇意にしている画家の西さんの絵でいきたいと話がありました。
西さんに「ひとでなし」のデモを送りました。
西さんからは、「この曲の心情は、私自身です」と連絡がきました。
サウンドプロデュースは、私の10年来の盟友の 紅維流星さんにお願いしました。
流星さんは、すぐに趣旨を理解して「やりましょう」となりました。
流星さんは、正義感溢れる論客です。音楽にまっすぐな方です。
数ヶ月で、「四畳半リアリズム」は、芸術家のフラットな集まりになりました。
実感、共感、反感、嫌悪感、何かしら人の心を動かすことができればと考えています。
何が本当のことなのかわからない日本。四畳半リアリズムは、本当に起きた事実を歌にして表現します。
この文章の最後に、尊敬する泉谷しげる氏が募金活動をしていた時の言葉を綴ります。
「売名行為? でも、やらないよりいいだろ。」