さて、今年の本屋大賞と吉川英治文学賞をW受賞した
沖方丁「天地明察」読了です。


天地明察/冲方 丁

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すっごいざっくり言って、江戸時代の元禄年間に、それまで
800年に渡って使われてきたカレンダーのずれを指摘して
新しいカレンダーのルールを作った男、
囲碁の名家の御曹司にして算術・歴術・測量術のスペシャリスト、
安井算哲(後に名を変えて渋川春海)の70年を描く大河ロマン。

登場する有名人は、水戸光圀(黄門様ね)、保科正之(徳川家光の腹違いの弟ね)、
徳川家綱(徳川4代将軍ね)、酒井忠清(家綱時代の大老ね)とか。

いやー、多分一次資料も相当当たったんでしょうね、
春海から保科正之宛ての手紙にこんなことが書いてあったよ、みたいなことも
まるで見てきたかのように書いてあります。
あと、文中に数学の問題が出てきますから。
図入りで。
なんていうか、小説だけでは飽き足らず、アニメとかマンガとかの シリーズ構成とか
シナリオ原案までやって、ラノベデビューのくせに 日本SF大賞を取ったりしている
鬼才ならではの、自由な書面。
そしてがっつり歴史考証したであろう、一武家から 一国のトップとして生まれ変わろうとするタイミングの
徳川幕府内外の権力闘争、政治工作、そこに関わる老若の才能がぶつかって生まれた
数々の政策や事件が絡み合う、重厚なドラマ。
徳川幕府とカレンダーの意外な関係は、ぜひ読んで確かめてほしい。

それにしても、重い素材を主人公春海の
ぼんやりしたキャラクターで読ませるあたりも、
メディアミックスの中で身につけたテクニックなのだろうか・・・

天体運行から日本の緯度を割り出して、時間というものを
目に見えるカレンダーという形に整えてみせるという、
その過程で、地球の公転軌道を楕円形と割り出してみせるという、
えー、それってまるっきり理科ですよね!?みたいな、
しかも宇宙に行ったことないのにわかるんだ!?みたいな発見をした
天才研究者が、こんなにぼーっとしてていいのか、みたいな天然キャラ。
でも数学大好きで、数字を見ると人が変わるっていう。

数学って、天文学と不可分のものだったんですね。
そして哲学とか、宗教とか、政治とも不可分なんですね。
数学、もうちょっと勉強しようかしら。

小川洋子「博士の愛した数式」以上に、数学が気になってしまうこと
請け合いの小説です。

え?そんなオチ?
いやいや、とにかく、素材は重いけど
軸ブレなし、スペクタクル満載のマスターピースです。
えーとそうね、司馬遼太郎が好きな人には文句なくおすすめです。
あ、マンガも読みます。
むしろ気力次第ではマンガしか読みません。

「きみはペット」の小川彌生の、現在連載中の作品がこれ。

テーマはアイスダンスです。


キス&ネバークライ(1) (KC KISS)/小川 彌生
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いやー、小川彌生は本当に上手いんですよ。

絵も上手いんですが、それ以上に話が上手い。


ヒロインは元アイスダンサーを両親に持つスポーツエリートなんだけど、

幼いときに受けた虐待の記憶を背負っているという

複雑なキャラクター。

ここに、美形だけど女にだらしないダンスのパートナーと

モダンバレエのダンサーを目指す幼なじみの美少年がからんでくるという。


もうちょっと若い子向けの雑誌だと

それこそ三角関係モノとして終わってしまいそうなんだけど、

掲載誌は講談社のお姉さん雑誌「Kiss」ということもあり、

ヒロインの幼年時代の事件の謎解きというサスペンス要素と

アイスダンスで世界の舞台を目指すヒロインとそのパートナーという

二人のアスリートのスポ根要素が交錯しながら進んでいく、

ものすごい密度の濃い話になっています。


その二軸の、双方のエピソードが上手く絡み合いながら話が進むし、

一方は真実が気になる、一方は厳しい練習→華やかなダンスシーンの

ガラスの仮面的王道コンビネーションに釘付けで、

次が気になってしょうがない。

取材も相当されていると思いますが、その情報を

どう読者に見せていくかという、構成力があるんでしょうね。


編集者がいいのかもと思っていたが、途中で担当が変わっても

作品のクオリティは変わらなかったので、やっぱり才能。


フィギュア人気が出てくる前からやっていて

高橋大輔選手がモデルだな、というキャラクターもいるし、

前作「きみはペット」の登場人物もちょいちょい出てくるのも嬉しい。


2010年2月に最新刊7巻が出ていますが、ストーリーとしては

まだ半分くらい?

本当に次が気になってしょうがなくなるので

オチがないとマンガ読めない人は、完結まで待った方がよいかも。

20巻くらいまで行きそうな感じですが。

「チーム・バチスタの栄光」で注目していた海堂さん、
その次の「ナイチンゲールの沈黙」で??となったものの
一応読んでみた
「ジェネラル・ルージュの凱旋」はやっぱり面白かったので
パラレル作品も手を出してみた。

現代医療の金と倫理の問題を

終末期医療と医療保険と自殺サークルが絡み合う

「死のコントロール」というテーマで

ドラスティックに表現しています。

主人公がへたれの巻き込まれ上手な点は

バチスタシリーズと同様。

文体はいつも通りハードボイルド風。

そしてやっぱり、美人キャラの書き込みは過剰だと思う。


白鳥は出てきますが、ホスピスが舞台だけに

バチスタシリーズのような最先端医療現場の

臨場感みたいなものを期待すると、ややはずれ。

重いテーマですが、現実にいなそうなキャラが多いので

ファンタジーとして読めます。


そうそう、この人の小説って、医療ファンタジーなんだよな。

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