『 酒・肴 赤津庄兵衛』の魅力は、何と言っても、その厳選された食材と繊細な技術にある。ここでは旬の食材を使った独創的な和食が提供され、全国各地から取り寄せる新鮮な魚介類や季節の野菜を駆使した、実にバラエティに富んだ品々が楽しめる。
料理の盛り付けも美しく、目でも楽しむことができると若い女性にも人気が高い。
場所は、荻窪・杉並公会堂の目の前にある中華料理店とフィットネスジムの間を入って、すぐ左手にある雑居ビルの一階。うっかりすると見過ごしてしまうような住宅街の路地なので、ご用心あれ。営業中であれば白地の提灯が掲げられているので、これを目印にして探してもらいたい。
店主の赤津敬佳さんは、4年ほど前に惜しまれつつも閉店した西荻窪の無国籍居酒屋『風神亭(ふうじんてい)』での修業を経て、2017年にこの店をオープン。私も『風神亭』が縁で、あれよあれよと言う間に店の魅力に取り憑かれた内の一人だ。
近頃では、なかなか予約が取れない店としても有名になった。荻窪近辺に住む常連客はもとより、評判を聞きつけて、わざわざ遠方から訪ねて来る客も増えているそうだ。
店内は、木の温もりが感じられる落ち着いた雰囲気でありながら、モダンなデザインが取り入れられている。テーブル席が2つとカウンター7席のみという瀟酒な空間。
独り客で座っていても隣りの席が気にならない、絶妙なバランスの間取りだ。
まずは、いつものように”とりあえず”のビールを注文し、達筆で認められた本日のメニューにじっくりと目を通すことにしよう。もし、メニューの豊富さにあれこれ迷ってしまうようならば、好みの品や量、苦手な食材などを告げ、前菜の八寸から店主にお任せにしてしまうのがおすすめだ。
「おつまみ盛り」(1人前)は、希望によって何種類でも盛り付け可能。手間暇をかけて仕込まれた和え物や珍味などが、見目麗しく小皿や豆皿に盛り付けられて登場する。「今日の予算はこれくらいで宜しく!」という懐具合のリクエストにも、快く応じてもらえるのが嬉しい。
この店に来たら外せないのが、やはり「刺身の盛り合わせ」だろう。「盛り合わせ」と言っても、八寸と同様に小皿や豆皿に盛り付けられたり、小分けにして提供されたりすることが多い。白身やイカには沖縄の藻塩を、赤身には福岡の醤(ひしお)などと、店主の調味料選びへのこだわりも強く感じられる。
「生牡蠣」(時価)も、仕入れのタイミングによっては北海道・仙鳳趾と長崎・五島列島などと、産地による食べ比べを演出してもらえる。それぞれ口の中いっぱいに濃縮された旨みが広がり、牡蠣好きとしてはたまらない愉悦の瞬間だ。
もちろん、厳選された「地酒」や「ワイン」、「サワー類」など酒の種類も豊富にラインアップ。これまた注文した料理ごとのマッチングもお任せにしてしまうのがいい。
店主が「日本酒は燗が推し!」と力を入れているとあって、同じ銘柄での冷やと燗の飲み比べも一興だ。
定番メニューを眺めてみると、自家製の「シュウマイ」や「餃子」、モロッコ料理の「ケフタ」など、和食以外の品々があるのを発見できるはず。和食の店でありながら、どことなくシルクロードの匂いも感じさせるのは、『風神亭』の名残りかもしれない。
さらに、運が良ければ本日のメニューに加わるというジビエ料理。聞けば、店主の知り合いの腕の立つ猟師から入手するのだそう。普段は鹿肉の入荷が多いとのことだが、この日は「イノシシ肉のカツレツ」(時価)をいただいた。肉の甘味と弾力が口の中でいつまでも余韻を残して、たまらなく旨い!
『酒・肴 赤津庄兵衛』は、和食の真髄にプラスαを味わいたい人にとって理想的な日本料理店である。
店主をはじめ若いスタッフの接客も温かく、フレンドリーで細やかな気配りが感じられるのはもちろんなのだが、開店当時から客から他の客やグループへの声掛けは、極力、遠慮を申し出ていると謳う。
その訳を聞いてみると、店の風紀を重んじるというよりも「酒と肴に静かに向かい合って、限られた時間を仲間や独りで心ゆくまで楽しんでいただけたらいい」という、店主の切なる願いからなのであった。
さてさて、今宵も大満足。ご馳走様~!
酒・肴 赤津庄兵衛
住所:東京都杉並区天沼3−11−3 モアビル1階
電話番号:03-6383-6544
アクセス: JR中央線・東京メトロ丸の内線「荻窪駅」北口より徒歩5~6分
営業時間: 平日:16:30~24:00(L.O 23:00)
土曜:16:00~24:00(L.O 23:00)
日祝:13:00~23:00(L.O 21:30)
定休日:水曜日 毎月第3・第5火曜日
注)この記事は2023年1月時点の取材を基にしています。









