2012・74.「長い廊下がある家」有栖川有栖 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

2012年

74冊目

「長い廊下がある家」

有栖川有栖



長い廊下がある家/光文社
¥1,620
Amazon.co.jp


廃村に踏み迷った大学生の青年は、夜も更けて、ようやく明かりのついた家に辿り着く。


そこもやはり廃屋だったが、三人の雑誌取材チームが訪れていた。この家には幽霊が出るというのだ―。


思い違い、錯誤、言い逃れに悪巧み。


それぞれに歪んだ手掛かりから、臨床犯罪学者・火村英生が導き出す真相とは!?


悪意ある者の奸計に、火村英生の怜悧な頭脳が挑む。


切れ味抜群の本格ミステリ傑作集。





さて、久しぶりの読書レビューなので張り切って書かなくてはならないのですが、



正直、二年近く前に読んだ本の内容とか忘却の彼方だよね・・・


じゃあ再読すりゃいいじゃんなんて思われるかもしれないけど、3桁の積読がそれを許す余裕を与えてくれないんだよね・・・


しかも、引っ越ししてからあんまり片付けしてないせいで、いまだに蔵書の大半は段ボールの中。発掘してパラパラとページを繰ることすら困難なんだよね・・・



なんて三重苦を嘆いていても仕方ないので、頑張って思い出して書くことにします。



収録作品は、


「長い廊下がある家」

「雪の金婚式」

「天空の眼」

「ロジカル・デスゲーム」


の4作で、あらすじにもありましたが火村シリーズです。



そういや昔は「学生アリス」「作家アリス」という分類法が一般的だったような記憶があるんですが、最近は違うんですかね・・・



閑話休題。



メインの国名シリーズをはじめ他の長編も結構あり、短編に至ってはどれくらいあるのか見当もつかないほど発表されてて、全部読んでるのかどうか定かではない火村シリーズなんですけど、



この4編はこれまでにない(あくまで私の記憶の範囲内での話ですが)趣向が凝らされてて、なかなかに興味深かったです。



大阪府警や京都府警にいる馴染みの捜査員から依頼を受ける形で事件にかかわることの多い火村が、あらすじにもあるように、ひょんなことから現場にたどり着き、いつのまにやら嫌疑の輪に入れられてしまった学生(火村の授業の受講経験あり)からのSOSを受け捜査に乗り出す「長い廊下がある家」。



犯人や犯行方法そのものではなく、事件後「犯人に心当たりがある」という言葉を残して記憶喪失になった男が、何を聞き、何を考え、どのような経緯で犯人を絞るに至ったかを推理する「雪の金婚式」。



まさかの火村不在。アリスが推理をめぐらせ解決に導く「天空の眼」。



巷を賑わす連続毒殺犯が火村を拉致。犯罪心理学者なら、犯罪者である俺の考えていることくらいわかるだろう、とお互いの命を懸けたゲームを提案する「ロジカル・デスゲーム」。



本格テイストという意味では「長い廊下がある家」や「天空の眼」が王道路線で良いのですが、普段あまりないサスペンス風の「ロジカル・デスゲーム」が面白かったです。



ストーリーの進行とともに、(私は聞いたことがある程度の知識でしたけど)有名な確率論のテーマなども絡め、スリリングな展開に魅了されました。



まあ正直、オチはある程度読めてしまったのですけど、そんな危険な橋をしれっと渡る火村のクールさが良かったです。



いや、やっぱり有栖川有栖は面白いですなぁ。