41冊目
「QED 鏡家の薬屋探偵 ―メフィスト賞トリビュート」
講談社ノベルズ
「鏡家サーガシリーズ」(佐藤友哉)
「QEDシリーズ」(高田崇史)
「薬屋探偵妖綺談シリーズ」(高里椎奈)
この3シリーズに共通するものはなんでしょう?
答えは、「メフィスト賞を受賞したデビュー作から始まったシリーズ」だということです。
そんな、メフィスト賞があったからこそ世に出た、とも言える3つのシリーズ作品のトリビュート短編集が本書です。
幸いにして3シリーズともに、購入したものの積読として順番待ちしているものを除けばすべて読んでいるので、迷うことなく購入することができました。
そういう意味では若干敷居が高くて、手を出すのをためらってしまう人もいるかもしれないですねー。
本自体がそんな感じなので、あらすじと感想もシリーズ既読という前提でさらっと書きたいと思います。
まあそんなにネタバレにもなってないとは思いますが。
【鏡家サーガトリビュート】
「漂流カーペット」竹本健治
ふと気付くと、僕は森の中でカーペットの上に寝転がっていた。
しかも記憶喪失になってしまっている。
同じくカーペットに寝転がっていた他の2人も、状況は同じだという。
3人は集落を探して行動し始めるのだが・・・という話。
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1作目から特殊だなぁ。
予告されてないと最後のシーンになるまで「鏡家サーガトリビュート」だと分からないし。
ひょっとしたらシリーズ既読だったとしても、気付かないかもしれない。
そういう意味では「トリビュート」を冠した作品でしかできない趣向なのかもしれないな、とは思いますけどね。
【QEDトリビュート】
「外嶋一郎主義」西澤保彦
コンビニたてこもり事件に居合わせてしまった2人の従業員と3人の客。
興奮状態の犯人に対し、狼狽し怯えるだけの人質たち。
しかし、客のひとりが喋り始めた途端、事態は思わぬ方向に進んでいく。
その客の名は、外嶋一郎。
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桑原ではなく外嶋を使うところが上手い。
外嶋なら本編でも言いそうだしなぁ、この程度の暴論なら。
しかも、西澤作品の登場人物としてもものすごくしっくりくる。
ある意味完璧でした。
【QEDトリビュート】
「薬剤師とヤクザ医師の長い夜」椹野道流
古いビルにあるバーで閉店まで飲んでいた3人の男が乗ったエレベーターが、故障し停止してしまった。
そのうちひとりが突然倒れて心肺停止状態に。
残りのふたり。桑原崇と伊月崇は救命措置をするのだが・・・という話。
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椹野道流・著の「鬼籍通覧」シリーズから伊月崇が飛び入り出演。って読んでないんですがね、「鬼籍通覧」は。
なので伊月のキャラクター性は分からないのですが、桑原は「らしい」感じで良かったです。
ちょっと「鬼籍通覧」が気になってきたなぁ。読もうかなぁ。
【薬屋探偵妖綺談トリビュート】
「リベザル童話『メフィストくん』」令丈ヒロ子
大人びた少年・あっくんの部屋に突如現れたのは、黒いマントを纏った赤い髪の少年だった。
「メフィスト」と名乗る赤髪の少年は、「ユーレイや小鬼と仲良くなりたい」というあっくんの望みを叶えてくれるというのだが・・・という話。
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リベザルと人間の少年との友情譚。
新シリーズになってからリベザルはちょっとしっかりしてきたので、初々しさが懐かしいですね。
いや、でも、そんなに変わってもないかもしれないなぁ、リベザルは。
成長はしてるんだろうけど、対人スキルはさほど上がってないし。
まあ、何にせよほっこりする一編でした。
【薬屋探偵妖綺談トリビュート】
「一杯のカレーライス」時村尚
仕事も蓄えもないフリーのシナリオライターが主人公。
最後の挑戦と意気込んでシナリオコンテストに応募するシナリオに取り組むが、いいアイデアは浮かばない。
締切間際。空腹に耐え、眠気覚ましに散歩をしていると、カレーの美味しそうな臭いが。
「深山木薬店」と書かれた看板の薬屋に入るとそこには・・・
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こちらの作品は秋と座木のキャラクターがいい感じに出てました。
著者の時村さんは著名なアニメ脚本家らしく、物語の中にも自分が手掛けた「スーパーヅガン」や「逮捕しちゃうぞ」等のパロディーがちりばめられていて面白かったです。
って言っても私はあんまりアニメが分からないので、見落としてるのが多いと思いますが。
次から次へと場面転換するスピーディーさにぐいぐいと引き込まれました。
【まとめ】
いやー、面白かった。
他にもどんどんやってもらって、また本にして欲しいですね。
ただやっぱり、元ネタを知らないとあんまり楽しめないな、とは思いました。