89冊目
「能天気にもホドがある 燃えドラ夫婦のリハビリ日記」
大矢博子
脳出血で倒れ、右半身麻痺・失語症のリハビリと闘う夫との日常を、愛情たっぷりに描く痛快エッセイ。
自分が倒れないための本音の介護情報が満載。
笑えるエピソードもてんこもりで、リハビリしている人も、してない人も、読めばみんな元気になる!
「リハビリより鉄道、介護よりドラゴンズ」という能天気な夫婦の、発病から1年間のお笑いリハビリ日記。
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著者の大矢さんは、書評サイト「なまもの!」の管理人さんで、私もかれこれ10年以上閲覧させて頂いていました。
そのサイトの更新がある日を境にぱったりと止まったのです。
「何か大変なことがあったのではないか」そう思ってはいたものの、一読者の身では何をどうすることもできず、たまにサイトを覗いては「更新されてないなぁ」とつぶやくくらいしかできない状況。
そして、更新が止まってから約半年後。
サイトの日記で事情が語られ始めたのです。
ある程度容態が落ち着いてからの再開というのもあるのでしょうが、それからの近況報告がまあおもしろいことおもしろいこと。
読みながら声をあげて笑ったのも一度や二度ではありません。
そんな一連の出来事が本になると聞いて、読まないわけにはいけない、ということで購入したわけです。
本文の一~三章でサイトの日記を再構成したのは三章にあたるので、一章二章はそれ以前の話です。
倒れた直後からの話となるので、サイトで能天気に笑わせてもらっていたものと比べると重い話が多いのは事実。
けれど、その中にも笑ってしまう話があったり、感動的な話があったり、感心させられる話があったりと盛りだくさんでした。
その中でも何がすごいかと言えば、やっぱり著者の心構え。
素人の自分に出来ることと出来ないこと、起こったら奇跡だと思うことと努力でなんとかなること、それを明確に分けて、しなくてもいい心配やジタバタをしない。
かといって決して丸投げにしているのではなく、脳出血や失語症について自分で調べ、医師の言葉を出来る限り理解できるように努めている。
またその知識によって、新たに起こる問題に対しても冷静に対応することができる。
もし家族がこのような事態になったとしたら、同じ行動が出来る自信がまったくありません。
普段はほとんどフィクションしか読まないし、昨今の『読書はためになる。というかむしろためになる本を読まないと読書の意味がない』なんていう風潮には否定的なワタクシですが、それでもこの本はためになったし、読んでよかったなと思いました。