50.「外科医 須磨久善」海堂尊 | 町に出ず、書を読もう。

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50冊目
「外科医 須磨久善」
海堂尊




白鳥&田口シリーズをはじめとする医療ミステリーの著者として有名な海堂さんですが、この本は小説ではありません。



タイトルにもある須磨久善さんは実在の人物で、タイトルの通り外科医。しかも、世界有数の心臓外科医です。



その須磨氏に著者がインタビューをして、その内容を物語風に書いているのが本書です。



須磨氏の来歴、そしてこれまでの人生で成し遂げたことが書かれているわけですが、多分この内容がプロフィール等にまとめられていたならば、素人にはさっぱり分からないだろうと思います。



それを、医師である著者が、噛み砕いて順序だてて書いてくれているのがとても分かりやすかったです。



そのあたりが、著者の「小説家ではなく医師として書いた」という言葉の意味であり理由なんだと思います。



著者は、須磨氏に相応しい呼び名として「破境者」という言葉を使っています。



「天才」という言葉ではまだ足りない。



世界へ飛び出した日本人によくつけられる「越境者」という言葉は、間違ってはいないが正しくない。



越えたのではなく破ったからこそ、須磨氏の現在が、そして心臓外科医療の現在がある。



そのことがよく分かりました。



実在する人物の半生を見てこのような感想を持つのはちょっとおかしいな、とは思いますが、とても面白かったです。