45冊目
「Story Seller 3」
『面白いお話、売ります。』という印象的な惹句で話題となった短編集の第三弾です。
オムニバス短編なのでそれぞれ感想を書いてみます。
「男派と女派 ポーカー・フェイス」
沢木耕太郎
人生のなかで大事なことは男性女性どちらに教わったことが多いか、という話を中心したショートエッセイ。作家と女性の関わりを論じた部分が面白かった。
「ゴールよりももっと遠く」
近藤史恵
「1」「2」と同じく、「サクリファイス」のサイドストーリー。
周囲に流れる石尾移籍の噂。衰えを感じ現役引退を意識する赤城。
そして全編通じて漂う、マイナースポーツの悲哀。
愚直な石尾は相変わらずかっこいい。
「楽園」
湊かなえ
何とも形容し難い読後感。
心の傷を癒すため、プラス自分探し的な意味も含む若者の旅、と解釈するにはちょっと抵抗があるかな。
少なくとも「アレ」はそんな軽々しく持ち運んじゃいかんだろ。
好き嫌いがざっくり別れそうな話だな。
「作家的一週間」
有川浩
「1」「2」とはうってかわってコミカル路線。小説でありエッセイでもあるような不思議な話。
最初の伏せ字論議が面白かった。意味深に語られたもうひとつの「変換できない言葉」が気になって仕方ない。
作中に出てくる「小説サバンナ」は明らかに「野性時代」だな、と分かって結構ウケた。
「満願」
米澤穂信
鋭い。そしてえげつない。
途中でオチが読めただけに、余計にゾッとした。
米澤さんはちょっと時代掛かった設定の方が文章が冴える印象があるな。
この本では一番良い。
「555のコッペン」
佐藤友哉
「1」「2」と続いた土江田さんと赤井さんのシリーズこれにて完結。
もっと土江田さんの過去とか描かれるのかなと思ったけど、よく考えたらそれも無粋なのかも。
赤井さん今回熱血でいい感じだった。
「片恋」
さだまさし
一見いい話だけど、よくよく考えたら(いや、よく考えなくても)ただの犯罪なんだよなぁ。こんな理由で中断でもしない限りずっと続いてただろうし。
少なくとも、「こんな事があったんだよ」って友人に話されたらひっぱたいてでも目を覚まさせるわ。
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編集後記によると、「Story Seller」はこれにて終了だそうです。
別の形で続けたい、とあったので期待して待ちたいと思います。
ただ、伊坂さんと本多さんは復活させてほしいな。