11冊目
「ゴールデンスランバー」
伊坂幸太郎
地元に凱旋した新首相のパレードには多くの人が集まり、テレビで生中継も行われていた。その最中、首相の乗るオープンカーの上にラジコンヘリがふらふらと降りてくる。何だ、と思う暇もなく破裂音がし、中継中のリポーターの姿が画面より消える。すぐに姿を表したリポーターは焦りを堪えて叫ぶ。「爆弾です!」
という「第一章」で物語は始まる。
二章ではテレビの前の視聴者目線。ワイドショーが逃走中の首相暗殺犯・青柳雅春の情報を伝える。警察の会見や対応。目撃者の証言。取材の際、逃亡を薦めるような言動をとる犯人の父親。
視聴者誰もが、逃亡中の男が犯人だと確信し、その異常性を恐れている。そして犯人が人質を連れて投降する様子が生中継されはじめる…。
うってかわって三章は事件の二十年後。真相がうやむやのまま終息したことをライターが語る。首相に就任した副首相が真相の百年封印を指示したこと。パレードの側にいたリポーターが、犯人がヘリを購入した店の店主が、陣頭指揮をとっていた刑事が、店内で暴れる犯人の様子をテレビで語ったファミレス店員が、その他大勢の事件関係者が病気・事故・自殺等理由は様々ながら、既に死亡していることを告げる。
謎ばかりが残り、真相は闇に包まれている状態の中、ライターは最後に一言述べる。「少なくとも青柳雅春が犯人だと思っている人は誰もいないだろう」と。
ここまでで全体の一割強。
ここから、「事件」の真相が語られる…。
もう、ここまでが意味深すぎて続きが気になって気になってしようがない。
特に三章の意味深さったらもう…。
時間はかかりましたが、じっくり堪能させて頂きました。
前評判が高かったので期待外れだったらどうしよう、とドキドキもんでしたが、そんなことは全くありませんでした。
「これまでの伊坂幸太郎の集大成」という看板に偽りなし!
ただ、個人的には、「集大成」だとは思えど「最高傑作」ではありませんでしたが。
全部読んだ後に、一~三章を読み返すとまた色々発見があり二度おいしい。
特に三章のライターは、ひょっとしたらあの人なんじゃないか?
でないと「○の声」(←一応伏せ字)とか言わんだろ。
とかいろんな余韻があって素晴らしい。
大変堪能させて頂きました。
書籍化されてる伊坂作品で未読なのはもう「モダンタイムズ」のみ。もったいないからちょっと間を開けて読むことにしよう。