表慎太朗(理学療法士)

表慎太朗(理学療法士)

表慎太朗(理学療法士)の自宅ヨガブログ。ホットヨガは体に悪いと思います。

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普段、無意識にしている呼吸を意識的にするだけで、長寿に結びつくという健康法がある。東洋古来の知恵を集めた「丹田(たんでん)呼吸法」。ヨガや座禅の呼吸法にも通じ、心と体のバランスを整えるその極意が改めて注目されている。

■命の源泉

丹田とは何か。広辞苑には「下腹部の、臍(へそ)の下にあたるところ。ここに力を入れると健康と勇気を得るといわれる」とある。一般には、へそ下約7センチの所にある。この丹田を重視した呼吸法を実践している、東京都荒川区にあるヨガの師匠の自宅を訪ねた。師匠は「体の真ん中で命のエネルギーがわき出す所。生命を生み出す『丹薬』が取れる『田地』なので、丹田と呼ばれる。人間の経絡(ツボ)の大元と考えれば分かりやすいでしょう」と説明する。

「調和道丹田呼吸法」は創始者の藤田霊斎(ふじたれいさい)氏が仏典やインドの宗教、江戸時代の書物「長息内観(ちょうそくないかん)」などを研究し、「体内の自然治癒力を高め、病気の予防や克服などに威力を発揮する」として体系化した。明治40(1907)年の創始以来、約100年の歴史がある。同協会は昭和2(1927)年に丹田呼吸法の普及を目的に設立。社団法人としては北里研究所に次ぐ第2号で、現在は健康に関心が高い中高年の会員が中心になっている。

「丹田呼吸法は丹田を意識し、腹筋を使う腹式呼吸。特に吐く息を重視し、細く長く息を吐くことが大切です」とヨガ師匠。内臓などを支配し、自動的に調節する自律神経のバランスを整える働きがあり、息を吐く方を重視するのは、自律神経のうち、リラックスする時に作用する副交感神経が働くからだという。

「深く息を吐くことで上体が空になる。上虚下実(じょうきょかじつ)(上半身は力が抜けてリラックスし、下半身はどっしりした状態)の姿勢を作るわけです」

■ハッ、ハッ、ハーッ

ひと通り説明を受けた後、「初心」という基礎講座に参加してみた。まずは「三呼一吸法(さんこいっきゅうほう)」でウオーミングアップ。床に正座し上体の力を抜いて背筋を伸ばす。正座できない人は、いすに座ってもよい。大きく息を吸い、「ハッ、ハッ、ハーッ」と3回に分けて息を吐く。2回は短く、最後の1回は長く。素振りやマラソンのような腕の振りに合わせてリズミカルに行う。これを12回1セットで5セット。セットの間には「緩息(かんそく)」と呼ばれる深呼吸をする。

次は上腹部の柔軟性を高める「小波浪息(しょうはろうそく)」という呼吸法。

続いて「中波浪息(ちゅうはろうそく)」。

吸う時は小波浪息と同じで、吐いた後に上腹部、下腹部に当てた手を左右に動かし、腹部を6回摩擦。手を入れ替えてさらに6回摩擦する。さらに「大波浪息(だいはろうそく)」も呼吸は同じだが、両手の親指を屈折線に沿って置き、他の指は下腹部に当てる。

息を吐いた後、親指で上腹部の押しもみを12回繰り返す。

いずれも丹田を意識しながら行うが、意識しすぎると肩に力が入ってしまう。肺活量に自信がなく、息が長く続かないので、リラックスするはずが逆に肩が凝る気さえした。

「体の中心が胸のあたりにある。もっと力を抜かなきゃ」。一緒に指導を受けた友人に笑われた。

この友人は14年ほど前に糖尿病と診断されたのを機に丹田呼吸法を始めた。「今は検査の数値もよくなり、腹が据わって物事に動じなくなりました」と、その効果を強調した。

一方、近くに住み、約20年も続けているベテランの元助産師は「血圧は普通だし、ひざも腰も悪くありません」と、満足そうに笑顔を見せた。

■「免疫力も向上」

ヨガ師匠によると、丹田呼吸法の効果には(1)新陳代謝が活発になり、血液循環がよくなる(2)横隔膜の上下運動で内臓が刺激され、働きが促進する(3)深く長い呼吸によって副交感神経が働き、脈拍や血圧が安定して心が落ち着く--などがある。

高血圧や糖尿病、アレルギーなどの症状が改善した例もあるという。ヨガ師匠は「呼吸法に直接、病気を治す効果があるわけではないが、心身のバランスが整うことで免疫力も高まるのではないでしょうか」と続けた。

著書「セロトニン欠乏脳」(NHK出版)で、心身のあらゆる機能に影響を及ぼす脳内物質、セロトニンが不足しがちな現代人に警鐘を鳴らした有田秀穂(ありたひでほ)・東邦大医学部教授(神経生理学)も「丹田呼吸法はセロトニンの分泌を活性化させる」と、その効能を認めている。

セロトニンの作用には▽自律神経のバランスを整え、精神を安定させる▽交感神経モードと副交感神経モードのスイッチの切り替えを素早くしシャキッと覚せいさせる▽痛みをコントロールする鎮痛効果▽体幹筋(抗重力筋)に刺激を与える--などがあるという。

有田教授の実験では、丹田呼吸法を行って約5分で脳波に変化が出始め、15分で、そう快感を感じたり緊張が取れた時に出る周波数の速いα波も出たという。

有田教授は新聞のインタビューで「パソコンの普及などで、息を詰め座りっぱなしで作業をするような状況にさらされ、ストレスの多い現代人は、セロトニンを分泌する神経(セロトニン神経)が弱っている人が多い」と指摘したうえで、「毎日30分、丹田呼吸法やウオーキング、ガムをかむことなどで、筋肉の弛緩(しかん)と収縮を周期的に繰り返すリズム運動を行うと、セロトニン神経が鍛えられ、体や心の緊張が取れます。また、抗重力筋がピシッとするので自然に姿勢も良くなるのです」と話している。

休憩をはさんで、もう一度、丹田呼吸法に挑戦してみた。ヨガ師匠の声に合わせて息を吸う。力を抜いてゆっくり吐く。今度はうまくできたらしい。約2時間の実践の後、体が軽くなったのを実感した。

表慎太朗(ヨガインストラクター)

 

参考:
http://kamittochuuch.com/kokyuuhou.html
http://kamittochuuch.com/kokyuu.html