高梁市・総社市の水害はまた起きる
令和6年6月24日
大塚 祐治
平成30年7月豪雨から今年で7年を迎えます。最も被害の大きかった倉敷市真備町は小田川の合流点切り替え工事により今後の水害が解消されると思います。しかし、高梁川本川沿い(小田川との合流地点より上流)にある高梁市と総社市の浸水は再度発生する可能性が残されたままです。これは真備町の水害だけに注目し、高梁市や総社市の水害に目を向けていないこと(水害原因の根本に目を向けていないこと)にあります。
水害原因の根本に目を向けると新成羽川ダムに辿りつくことになります。検証を行っている学者や先生及び国交省の関係者が新成羽川ダムに辿りつくことを避けているように思えてなりません。
上記のような状況では高梁川本川沿いに住まわれている住民は安心して生活を送ることが出来ません。水害の原因を追究した上での解消案が求められます。
本書で高梁市と総社市の水害原因を想定し、解消案を考案してみたものです。災害解消の参考にして頂くことを希望しています。
1)平成30年7月豪雨は豪雨と呼べない
平成30年7月豪雨の新成羽川ダムが示している雨量データを見ると豪雨と呼べるような雨量ではありません。
――インターネットに示されている豪雨基準――
気象庁によると、豪雨とは「著しい災害が発生した謙虚な大雨現象」とされています。この基準では災害状況により判断す ることになります。以前の定義では「西日本地方では時間雨量30mm以上かつ日雨量で200mm以上」としてあるのを見たこ とがあります。平成30年7月豪雨の真備町の災害(時間雨量30mm以上日雨量200mm以上になっていないにも関わらず甚大
な災害が発生したこと)で「豪雨の定義」が変更されたように思われます。
――新成羽川ダムの記録――
・7月5日 時間雨量29.0mmで5時間累計99.0mm(時間雨量10mm以上の累計)
・7月6日 時間雨量25.0mmで6時間累計115.0mm(時間雨量10mm以上の累計)
・5日が10mm以下になった時刻から10mm以上になる時刻までに21時間を要しています。5日と6日の雨量は連続性のな
い降雨(独立した2つの降雨)と言えます。
・5日と6日の雨量は時間雨量30mm以下かつ累計雨量200mm以下なので豪雨と呼ばれるような降雨ではありません。参考
までに北部九州豪雨は時間雨量106mmで4時間雨量308mmです。高梁川流域の雨量は、北部九州豪雨と比べるとはるか
に少ない量です。この観点から高梁川流域で発生した洪水は、降雨以外の要素で発生した災害と考えられます。
2)真備町の水害
真備町の災害をインターネットで調べると「高梁川の合流点からのバックウォーターが原因」とされています。ところが、
バックウォーターがなぜ発生したかについては突き詰められていません。私は、次のような現象により発生したと考えまし
た。
①小田川と高梁川の合流点より下流に笠井堰があります。合流点から笠井堰までの河川勾配は緩くなっています。また、
笠井堰により洪水流下が阻害され水位が上昇することになります。
②笠井堰には転倒セキが設置されています。この転倒セキは水位が上昇した場合に転倒して水位を上げないようにするも
のですが、可動した形跡がみられません(水草やコケ類が付着したままです)。これも水位を上昇させた要因の1つにな
ります。
③合流地点の水位が上昇したことにより河川勾配の緩い小田川に流れ込むような流れが発生します。これがバックウォー
タ ーです。
④バックウォーターは河川水量が多くないと発生しません。通常は雨量が多いことで河川水量が多くなりますが、高梁川
については雨量だけではない要素が含まれています。それは「新成羽川ダムから放流」です。これが真備町の水害を大き
くした根本的な原因です。このように考えると、真備町災害の根本的な原因が新成羽川ダムに結び付くことになります。
しかし、学者や先生と呼ばれる人は、新成羽川ダムに結び付くことを避けています。
3)高梁市と総社市の水害
高梁市の水害は新成羽川ダムからの異常放流によるものですが、この下流の総社市は、これ以外にも要素があります。国
道180号線やJR伯備線が浸水したことや住宅の2階まで水位が達するには新成羽川ダムから放流だけでは起こり得ない現象
で 。笠井堰と同じように水位を上昇さる施設があると考えるのが妥当です。この観点から高梁川を見ると流れを阻害するよ
うな施設として湛井堰が浮かび上がってきます。
4)新成羽川ダムの異常放流
平成30年7月豪雨を豪雨と呼ばせるようにしたのは新成羽川ダムからの放流が異常に多かったことによります(200年確率
の放流)。中国電力や岡山県の説明では流入量が多くて「やむを得ない操作(緊急放流)」と言っているようですが、新成羽
川ダムは利水ダムであり洪水に関与してはいけないダム(流入した洪水を素通りさせるダム)なのに、洪水に関与したこと自
体に問題があります。
――新成羽川ダムの問題点――
①操作規程が操作規定例規集の趣旨を満足していない(洪水吐ゲートの操作順序が妥当ではない)。
②流入量の算定が妥当ではない(流入量は実測ではなく、放流量と貯水変動量を加えた値(想定値)としている)。
③貯水位の把握をダム本体に設置された水位計だけに頼っている(貯水池全体が水平に貯留していることは限らない)。
真備町の災害は高梁川との合流点を切り替える工事により解消されますが、高梁市と総社市の水害解消には工事は必要では
ありません。新成羽川ダムの操作方法と湛井堰の操作方法を見直すことにより解消されるのです。これには費用を要しません
ので、すぐにでも取り組んでもらいたいものです。
1)新成羽川ダムの操作
新成羽川ダムの操作は次の2つのどちらかを選ぶべきです。
①本来の利水ダムとしての運用
洪水期においては水位をWL22.5m以下に保ち、洪水吐ゲートを全開にして流入する洪水を素通りさせる方法
②洪水調節機能を持たせた運用(多目的ダムとしての運用)
貯水位に応じた操作とすることで、次のような操作とします。ただし、貯水位はダム本体に設置されたもので計測する
のではなく貯水池内の平均ないしは最低値とします。
・1号と6号ゲートは常に全開とする。
・貯水位がWL23.25m以上に達した時点で2号ゲートの開度を0.5mとする。
・10分以上経過した後に貯水位がWL23.25m以上にある場合は5号ゲート開度を0.5mとする。
・上記の要領で3号と4号の開度を0.5mとする。
・すべてのゲート開度が0.5mとなり貯水位がWL24.0m以上になる場合は、2号ゲート開度を1.0mとする。
・開度を0.5mにした要領ですべてのゲート開度を1.0mとする。
・ゲート開度aと堰頂WL22.5mからの水深hの関係がh>1.5×aになるような操作を行い、ゲート開度を大きくし
ていく。
・放流量は1,171m3/s(無害放流量)を上回る恐れがある場合はゲート開度を絞る。
2)湛井堰の操作
湛井堰は操作規則の見直しを行い、本来の頭首工としての操作を全うさせる。具体的には堰の上流水位に応じた操作であ
るので、「新成羽川ダムの洪水調節機能を持たせた操作」に似た操作となります。他の頭首工の操作事例を参考にされると
良いでしょう。場合によっては、可動部をもっと多くしたセキに改修することも考えるべきです。