もう何年前だったか?
地元の出会いで、知り合った「さおり」
初めて声を掛けたのは、僕だった。
その日は、八月の花火の日、桟敷席に座った僕の隣にいた。
もともと、企業として花火の寄付を長年行っていたが、直接関わることも無く見ることさえなかった。
事務員の聡子に言われ、特に予定も無く、初めて地元花火を見に行っていた。
テントのあるお店で、ビールと枝豆を購入し、花火の打ち上がるのを待っていた。
僕が行くのが早かったのか?
わりとまだ閑散とし、始まりを待っていた。
「お隣失礼します」
と、背後から明るい声が聞こえ、僕は振り返った。
「あ。どうぞ。」と小さい声で、気を遣ったのだが、あまり聞こえてない様子。
年齢は、30代前半、桟敷席に現れた、「さおり」は明るい顔で、花火の方へ顔を向けていた。
「お一人ですか?」
と聞いてみると、「私協賛してます。」と彼女
「そうなんですね。若いのに?」と僕
「私、花火大好きなんです。エステの会社しています。」
若いのに、花火に協賛をして、それを見に来る器量に感心をした。
「社長さんですか?」と彼女
「あまり見に来たことは無かったんだけどね~」と言うと、
「お忙しいでしょうね。」と彼女
「仕事はそこそこだけど、あなたみたいに若い方がここに居るの素晴らしいね。」
「あなたに会いに来ました。」と「さおり」
打ちのめされた。
でも、その振る舞いや自然な感じに、好印象を持った。
年齢30代前半、笑みの中に何かを隠し持った感のある、でも素敵な女性だった。
つづく
