映画「マリア」2007年
2007年に公開されたこの映画。ずっと観たいと思いながら、このクリスマスシーズンにやっと観れました。
聖書の中では、イエスさまが生まれた時の出来事を、イエスさまの弟子だったマタイと、使徒パウロの弟子だったルカがそれぞれ書いています。
マタイは、赤ちゃんイエスのところに東方の博士らが来訪したことを書いており、ルカは、天使がマリアに神の子を身ごもっていることを告げる受胎告知から、イエスさまの誕生、羊飼いらの来訪まで詳しく書いています。
詳しくと言っても、聖書は2000ページにも及ぶ長い長い書物ですが、その中でキリスト生誕の記事が書かれているのはこの2箇所だけ。ほんの3,4ページです。
その短い文章の中から様々に想像を膨らませて、世界中でクリスマス物語が制作されたり、聖誕劇が上演されたりしているわけです。
キリスト教系の幼稚園や保育園などでも、この時期に聖誕劇をするところが多いと思います。聖誕劇だと、マリヤのところに天使のお告げがあり、ヨセフと二人でベツレヘムまで旅をして、宿が見つからず、馬小屋でイエスさまが生まれて、そこへ羊飼いや博士たちが現れて、みんなでご降誕をお祝いしてめでたしめでたしで終わるというのが大筋です。
でも、実際に当時の時代背景を考えると、めでたしめでたしどころではなかったはず。当時のユダヤ社会の中では、たくさんのしきたりや掟があって、その中に石打ちの刑という、死に値する罪を犯した人がいた場合、みんなで取り囲んで石をぶつけて、そのまま埋めるというなんとも酷な刑がありました。
聖書の記事の中でも、姦淫の罪に問われて石打ちで殺されそうになる女性が登場したり、ステパノという人は神を冒瀆したという罪で、石打ちで死んでしまうという出来事が書かれています。
結婚前に妊娠するという行為は、石打ちの刑に相当する罪でした。
天使に身ごもっていると告げられた時、マリヤは相当な戸惑いと困惑と、それから恐怖があったはず。でも聖書には、その時のマリヤの心情については何も書かれていません。
この映画「マリア」では、マリアの心理描写がとても丁寧に描かれていきます。
マリヤというと絵画の中の聖母のイメージが強くて、人間離れしているというか、神格化されてしまって、どうしても神々しいイメージになってしまうんだけど、この映画の中のマリアは、悩みもするし、戸惑いもする純朴な普通の女の子として登場します。お告げを受けたものの、「どうせ誰にも信じてもらえない」と、どうしていいか分からずにいたマリアは、エリザベトという理解者を得て勇気をもらいます。ヨセフも、天使から夢でお告げを受けてマリアを信じることを決心します。映画の中のマリアにとってヨセフは、ほとんど知らない人、親が決めた結婚相手でしたが、ストーリーを追うごとに、ナザレからベツレヘムまでの200kmもの旅路の中で、この人は信頼できる、共に困難を乗り越えて行ける、神に授かった子を一緒に育てて行ける人だということにマリアは気がついていきます。
聖書にはヨセフについての記述はほとんどありません。「ヨセフは正しい人で…」くらいのものです。でもきっと、イエスさまを守り育てるために選ばれた人なんだから、この映画に出てくるような、誠実で素晴らしい人だったんだろうなと思います。
クライマックスはおなじみの馬小屋シーンがあるのですが、ここまでの道のりが丁寧に書かれているので、感動もひとしおです。
当時の文化や、服装、食べ物、道具一つに至るまでリサーチして細部まで再現することにもこだわったこの映画。
クリスマスシーズンに一見の価値ありでした。


