この日、朝霧高原は快晴。
風は南、やや東寄り。
まずスクール時代の先輩がテイクオフ
続いて私もテイクオフし、今日も真っ直ぐ毛無山へ向かいます。
アクティブなこの季節の上昇気流のおかげで
本日もあっさり毛無山山頂上空へ。
しばらく山頂の景色を楽しんでいるうち、今日も挑戦してみたい気持ちが頭をもたげ、抑えきれなくなってきます。例の挑戦を…
8キロメートル彼方、朝霧高原最南端に聳える天子ヶ岳への往復です。
高度は約2200m、いざ、スタート!
まずは、我らがさんじゅうエリアの南の端、金山(養毛山)への谷越えです。
前回同様、早速高度を落とし、早くも1900mを切ってしまいましたが
やがて近づいて来る「西富士」
前回大きく高度を落としてしまい、無念のリタイア、引き返したポイントです。
そのとき、天子初往復を達成したパラグライダースクール同窓生のH君。彼から聞いた体験談を思い出し、今日はやや西の富士川沿いを探ってみます。
するとそれまで沈黙していたバリオメーターが鳴り始めたではありませんか。見事上昇気流にヒット!高度はぐんぐん回復、何と、スタートした2200mを超えたのです。
少々心細くなってきていた不安な気持ちも一気に吹き飛び、高度とともに天子への思いも回復。次のポイント、「鉄塔」へと向かいました。
「鉄塔」
ここはその名のとおり、尾根を横切って鉄塔が建ち並び、高圧線がグライダーの行く手を遮る難所。安全な通過のためには十分な高度が必要です。
ところが「鉄塔」へ向かい始めてすぐ、またしてもバリオメーターは沈黙。
さらに「鉄塔」が近づくにつれ、低いブザーが繰り返し鳴り響くようになります。
強い下降気流でした。
その後、次々と下降気流に捕まり、ついに高度は2000mを切ってしまいます。
やがて近づいてくる高圧線。高度を落としたままの通過は極めて危険です。たとえある程度の余裕を持って越えたとしても、その後高度を落としてしまえば、再び高圧線を越えて帰ってくることができません。すぐに上昇気流を探さねばなりません。
しかし、雲1つないため、一体どこに上昇気流があるのか、なかなかヒントが掴めませんでした。高圧線を越えるか、引き返すか。左斜め後ろの猪之頭エリアをちらりと一瞥。そこに広がるランディングへのアウトサイドが頭をよぎります。
そのとき、正面から1機のパラグライダーがこちらへ飛んでくるのが見えました。目を凝らして観察します。どうやら私より西の富士川寄りのコースを飛んでいるようです。
あのコースには上昇気流があるのかもしれない!
すがるような気持ちで西の富士川方向へ飛び、コース修正を試みます。するとバリオメーターが反応、弱い音ですが上昇音が鳴り始めたではありませんか。わずかなサーマルをかき集めるように左右に機首を振り、もがきます。そしてついにグッと力強いGがかかり、追っかけて甲高い上昇音!待ちに待った強力な上昇気流です。思いっきり右のブレークハンドルを引き、360°旋回しながら翼いっぱいに上昇気流を受けます。助かった!
グライダーは旋回しながらグングン高度を回復し、高度2150mを超えたところで再び機首を天子へ向けて旋回終了、南下を再開しました。
そしてここで嬉しい誤算。この上昇気流は天子のある南へ向かって帯状に伸びていたのです。天子へ向かってまっすぐ進みながら、なおもグライダーはグイグイと吹き上げられます。そして何と、高度はスタート時高度を大きく超える2300mへ。
「鉄塔」の高圧線を遥か下に見ながら、自信満々でこれを越えることができました。すれ違ったパラグライダーに感謝!
いよいよ猪之頭エリアを出てさらに南の長者ヶ岳へ。未知の世界へと踏み込みます。
しかしここでまたしても沈黙するバリオメーター。
山脈の高度が下がってくるので地面は近づきませんが、高度はどんどん下がり、あれよあれよという間に2000mを切ってしまいました。
左右に進路を変えながら必死にサーマルを探しますが、バリオメーターは沈黙したまま。やがて長者ヶ岳を通過する頃には1900mを切り、さらに1800mへ。
猪之頭エリアのランディングはすでにはるか後方。心細さに、ふと、カヤックで海を漕ぎ回っていた頃、伊豆半島から大島を目指し、黒潮に流されたときのことが頭をよぎります。
しかし夢にまで見た天子ヶ岳はもう、すぐ目の前なのです。
そのとき、2、3機のグライダーが天子ヶ岳上空を舞っているのが見えました。どれも私より低い高度を飛んでいます。そして真横には白糸地区のランディングらしき草原が見えるではありませんか。
少しだけ元気が戻ってきました。いざとなったら白糸に降りればいい。もうここまで来た以上、なんとしてでも天子ヶ岳へ!
この頃になると次第に向かい風が強くなってきたのか、高度とともに速度も次第に落ち、時速20kmを切るようになってきました。しかし、天子到達を決意していた私はアクセルを踏んで翼の迎え角を減らし、加速。速度は次第に25km前後まで回復しました。
やがて台形型の天子ヶ岳が足元に近づき、そして我が翼の下へ!
ああ、我が翼はついに憧れの空へ。
夢にまで見た天子の空!
パラグライダーを始めて4年。
ついに私は憧れの空に舞ったのです。
しかしその感動もつかの間。
天子ヶ岳山頂が真下を通過するやいなや、ソレッとばかりに旋回、Uターンすれば
ああ、ああ、なんと遠いのか。
その小さな姿に愕然。
心細さマックスへ。。。
(後編へ続く)








































