ー第1章ー
俺、鈴原誠!
都内に住む25歳の会社員。
彼女はいないがモテ期がなかった人生でもなかった。
基本的に楽観主義だから頭抱えて悩む事なんて早々ない。
ニュースで良く仕事で病んで自殺とかSNSでも死にたい、一緒に死にませんか?とか自分で命を絶つなんて事はまるで考えた事がないし、そんな人の気持ちさえわからない(笑)
けどある日出会ったんだ。
まさかこの出会いが俺の人生に暗雲をもたらすとは…この時、思いもしなかったんだ…。
俺は長男で従兄弟の中でも一番年上だからか昔から面倒見はいい方で少しお節介な所がある…と言うのは認める!
実家から離れ、都内のマンションに一人暮らしをしている。
自慢じゃないがそれなりに大きい…が、少し古めでエレベーターがねぇ(泣)
10階建ての1F10室のそれなりのマンションだ。今日も仕事を終え帰宅する。
夏が近いせいか18時過ぎても夕焼けが広がってる。
住宅街の為、歩いているとそこら中から夕飯を作っている匂いがする。
ここん家は今日はカレーか!ここん家は魚焼いてるな?今日夕飯何にすっかなぁ…
なんて考えながら歩いているとうちのマンションに着いた。
俺は6階の1号室だから少し階段が辛い(泣)毎度毎度の事だが部屋に着くと腿がパンパンだ。
ダル〜と思いながら階段を登る。
3階に着いた時、何処からか声が聞こえる。
死にたい…死にたい…
とブツブツと呟く男性の声が聞こえる。
声は上の階から聞こえた。
もう1階上がると声の主がそこにいる事は容易に想像出来た。
どんな奴だ?と正直興味があった。
俺は止めた足を進め始めた。
声の主に逃げられないように少し足音に気をつけながら階段を登った。
そこには階段から夕日を見ながら死にたい…と呟く男がいた。
後ろ姿の為、若い男の子かな…と言う印象だった。
白いワイシャツに学生ズボン。
髪はミディアムヘアーで黒い。
体は細く白い。
何となくだが女の子のようなジャニーズ系の男の子をイメージさせた。
俺は正直イケメンが好きだ!
正直自分はブスだとは思うが俺よりブスは腐る程いるしそれなりにモテて来た為、あり寄りのありだとは思っている!
その為友達も自分と同じ位の容姿か自分よりも整った容姿の友達しかいない。
と言うか自分よりも容姿が整っていない友達は作りたくないし興味も湧かないのだ。
それに加え人見知りもしないし少しお節介だ。
関係があるかはわからないが正義の味方に憧れがちだ。
だからかわからないが、死にたい…と呟く、同じマンションに住んでいると思われる男の子らしい人物に興味がわいた。
だからその生気のない背中に声をかけた。
人生楽しい事もあるぞ!俺は少し口角を上げ、柔らかい顔で言った。
死にたいと呟くその男は俺が階段を上がって来てるのがわかっていたようだ。
ゆっくりと顔を振り向き俺を見た。
想像通りの可愛らしい顔の男の子だった。
年齢は17,8歳位か…
想像をしていなかったのは顔に傷があり、青タンがあった。
イジメ…かと簡単に想像が出来た。
男の子は俺の顔を見ると何も言葉を発さず外に顔を戻した。
大学生か?と俺は聞いた。
少し間が空き、うん…と男の子は答えた。
「ここに住んでんの?」と質問をすると男の子は廊下を指差し「そこ」と答えた。
「ふ〜ん」と答え、そいつの横に移動した。
俺「名前は?」
青年「…ゆうと」
俺「何で死にてぇの?楽しい事なんて生きてたらいくらでもあるぜ!」
青年「もう生きてたくないんだ。屋上から飛び降りようとしたし首を吊ろうともしたけど…怖いんだ。死にたいのに…」
何でそんなに死にたいんだ?と聞こうとして辞めた。
答えはなんとなくわかったからだ。
俺「今はさ、何十年も続く人生の中の短い辛い期間なんだよ。この辛い期間が過ぎたらきっといい事あるって!な!」
と言い、彼の肩をポンポンと叩いた。
男の子は虚ろな目で、うん…とだけ答えた。